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679話 手の込んだ自殺20

 「いくよ。

 スキル発動、【スマッシュ】」


 【石動故智】はピッケルから光を発し、そのピッケルで俺に打撃を加えようとしてきた。

 だが、このスキル【スマッシュ】と攻撃のモーションはくどいほど見せられたからなんとなく回避方法が掴めてきたのか、大袈裟にバックステップを取ることによってかわしていく。


 そして、ぶつかる相手を失ったピッケルがその勢いのまま地面に衝突すると、ピッケルに触れた部分から強い衝撃が走り地面にクレーターを作り上げることとなった。

 俺が大袈裟にかわしていなかっから直撃はしなかったにしても、衝撃に巻き込まれていたかもしれなかったほどだ。


 

 やっぱり物騒だなお前は!


 「【包丁戦士】には言われたくないけどね。

 この【スマッシュ】も、コッチや【夢魔たこす】にとっては使い勝手がいいけど、他のプレイヤーが使ったらかなり使いにくいスキルなんだよ。

 それだけコッチのビルドに筋が通っているってことだよね」


 うっ、胸が痛い……

 俺のビルドなんか無茶苦茶だからな……

 深淵にかなり迎合してはいるものの、天子の力を使ったり竜人の手前の力を使ったり、カタカナスキルの【フィレオ】もデメリットを克服できる方法を見つけられていない。

 良くも悪くも手を広げすぎているというわけだ。


 

 そんな想いを誤魔化すかのように俺は包丁を手に取り、サイドステップを交えながら【石動故智】へと横凪ぎに斬撃を放っていった。

 鬱憤ばらしのように放たれた斬撃ではあったが、きちんと決まればそれなりのダメージになるはずだったものだ。


 だが、今対峙しているのはそこらのモブプレイヤーとは格が違うMVPプレイヤーだ。

 【石動故智】は手に持っていたピッケルをクルリと回しながら、俺の包丁を手繰り寄せながら軌道を無理やり変えさせてきた。


 俺の包丁による受け流しとはまた違った、少しだけ力押しの要素がある柔の技巧だ。

 首を獲りにいったつもりが、危うく獲られそうになってしまったぞ……



 「容赦ないね【包丁戦士】は。

 あの次元戦争の時も思っていたけど、相当に血の気が強いよ。

 鉱山を襲ってきた他の包丁次元のプレイヤーも見てきたけど、包丁次元って基本的にみんなそんな傾向だよね」


 【石動故智】は若干呆れたような表情を浮かべつつも、ピッケルを構えて警戒しながらそう呟いた。

 俺が話の途中に急に攻撃してくるのに備えているわけだ。

 実際、それは正解だ!



 俺は【石動故智】がピッケルを構えるのとほとんど同じタイミングで包丁を逆手に持ち、下段に構えて駆け出していたからな。

 屈んだまま走り体勢を低くして狙うのは【石動故智】の駆動力……つまり足だ!


 だが、足といってもどこを狙うのかで状況が変わってくるんだが……

 

 「そっちだったんだね……

 膝狙いかと思ったらアキレス腱狙いだったなんて、完全に狙いを読み違えていたね」


 【石動故智】は俺の刃を受けて痛そうにしつつも、冷静にピッケルを使って俺に対して反撃してきた。


 うへっ、硬ったいな~

 完全に足を刈り取れたはずだったのに、足の肉を半分ほど切り裂き骨に皹を入れるまでで包丁が止まってしまったのだ。


 【石動故智】による反撃を回避するためにも、俺は追撃を諦めて地面を転がりながら身体をひねり【石動故智】から離れていく。


 

 「ここでかわすんだね、やっぱり厄介過ぎるよ【包丁戦士】は。

 だからこそ、ここで仕留めさせてもらうよ。

 これは他に比べると鉱石の消費が大きいから使いたくなったけど……

 これは取っておきだよ。

 スキル発動、【砲刃矢石】」


 【石動故智】が新たにスキルを発動してきたようだ。

 スキルを発動してきたのだが、【石動故智】そのものには変化がない。

 なんなら動いてすらいない……だと!?

 それなら今発動したスキルは何なんだ……?


 

 とか思っていたが、何処からともなく砲弾のようなものが俺に向かって飛んできた。

 ……伏兵か?

 そう思った俺は周囲の気配を探るが、俺と【石動故智】以外の気配は存在しなかった。




 ということは……

 

 「まだまだこんなものじゃないよ。

 ……ここからが本番」


 この【神殿】のいたるところから殺気だと!?

 そんなにプレイヤーがいるはずがないのに、この殺気は……

 全て【石動故智】のものだな?



 そのように考えた次の瞬間、俺の視界の端で【神殿】を形成している鉱石が矢や砲弾、刀剣へと姿を変えて次々と俺に向かって飛翔してきていたのだ。


 「気づいたみたいだね。

 そう、つまりこの【神殿】の原材料の鉱石を武器の姿に変えて飛ばしているよ。

 さあ、コッチの愛すべき鉱石たちのパーティーを楽しんでいってね」



 【石動故智】がそう言うと、俺を撃ち落とそうとしてくる鉱石武器たちが雨のように降り始めてきた。

 【石動故智】の拠点である【神殿】は自らを形成する材料が消費されていくためボロボロと崩れ落ちていっているが、それよりも先に俺が死にそうだ。

 ……こんなのやってられるかよ!

 撤退だ撤退!!


 スキル発動!【花上楼閣】!




 【スキルチェイン【天元顕現権限】【花上楼閣】】



 【追加効果が付与されました】



 【スキルクールタイムが増加しました】




 俺は残されていた聖獣スキルである【花上楼閣】という手札をここで切ることにした。

 物量には物量をぶつけるんだよぉ!


 俺はスキルチェイン【花上楼閣】で生み出した岩の花弁の弾丸を鉱石武器にぶつけて進路をねじ曲げながら【神殿】の出口へと急いでいく。

 

 くそっ、手の込んだ自殺に俺を巻き込むなぁぁぁぁ!!!!



 

 俺の悲痛な叫び声が【神殿】に鳴り響くがその声を聞くものは誰一人として居なかったと思う。






 居たり、居なかったりする……


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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