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678話 もぐらのたたき24

 さて、【ヒスイ】は片付けられたが【軍刀歩兵】の方はどうなってるか……?


 ちらりと確認してみると、【軍刀歩兵】の相手をしていたピッケル次元のプレイヤー【ガーネット】の胸から軍刀が生えておりそこから光の粒子が漏洩している最中だった。

 このまま放置していても【ガーネット】は死に戻りするな。


 そして、【軍刀歩兵】だが……


 「ん、あ……

 すまない狂巫女様、あいつを倒すことは出来たが俺もこのザマだ」


 そう息絶え絶えに言う【軍刀歩兵】の身体からは紅色の鉱石が生えており、そこから身体が鉱石に侵食されていっている最中だった。

 

 「この鉱石になった部分はもう全く動かない。

 じきに全身動かなくなってしまうのは間違いない。

 どうやら、俺はここまでのようだな」


 項垂れたように壁に背もたれながらそう呟く【軍刀歩兵】。

 遅延型の状態異常攻撃をくらってしまったということだな?

 ピッケル次元も中々厄介な攻撃を持ってやがる……


 「んあ……

 俺のことはいい、今のうちに【神殿】完成の妨害を……」


 言葉の途中で鉱石に顔を侵食された【軍刀歩兵】を労るようにゆっくり地面に寝かせると、俺は【軍刀歩兵】の想いを無駄にしないように【神殿】の奥へと歩みを進めていった。








 鉱石で作られた【神殿】なので足場が悪くて歩きにくいが、それでも洞窟探索をするかのように進んでいく。

 デコボコした道を進んだ先の奥にはどうやら開けた場所があるようだ。

 俺は道中に出てきたピッケル次元のモブプレイヤーたちを片手で蹴散らしながらも、洞窟の奥と思われる広場へと到着した。


 

 そこには漆黒の原石をそのまま活かした祭壇のようなものが作られており、祭壇には裏側までくっきり見えるほどの透明感を持った宝石が飾られていた。


 その宝石は俺の可憐な小顔と同じくらいのサイズで、宝石にしては規格外のサイズだ。

 現実に存在していたらこれだけで一財産を築くことが出来るに違いない。


 この漆黒の祭壇と透明宝石のどちらかが【シンボル】か【供物】なのだろう。

 あるいは両方とも該当するのかもな。

 周囲の景色から浮いている感じがするし。




 さっさとこいつらを破壊しておくか……

 そう思い近づいていくと、足の裏から地響きが伝わってきた。

 地震か!?

 ……そう思ったがどうも違うらしい。

 何故そんなことが分かるのかというと、俺がプレイヤーキラーだからな。


 この地響きの震源地が自然現象ではなく、プレイヤーの気配がこれでもかという主張をしているから分かった。

 そして、その震源地たるプレイヤーは今まさに俺の足元の地面を突き破って現れたのだった。



 そいつは頑丈そうな灰色の鎧を身につけているヘルメットを被った騎士のような格好の女……


 「セーフだったね。

 まさかコッチが蛇腹剣次元と戦っている間に拠点を包丁次元に攻められているなんて思わなかったよ。

 強行突破して戻ってきて正解だったね」


 そう、ピッケル次元のMVPプレイヤー【石動故智(いするぎこち)】だ!

 まさかモグラみたいに地面から出てくるとは、流石に俺も驚いたぞ……

 そんなに速く地中を動けるものなのか……?



 【石動故智】は身体についた鉱石の屑を手で払いながら、俺の質問に答えるべく口を開いた。


 「ドワーフ種族……正式名称【鉱人】は基本スペックだと防御力が上がるんだけど、もちろん他にも特徴があるんだよね。

 それはコッチが何度も言っているように採掘に関係があったりするよ。

 岩や石や砂を……掘る、削る、砕く、磨く行動にボーナスがつくんだよね。

 つまり、地中でも地上を歩くのとほとんど同じスピードで掘り進めることが出来るんだよ」


 【石動故智】はその鍛え上げられた胸を張りながら誇らしげにそう教えてくれた。

 

 

 その性能、まるで息をするように採掘するためのものじゃないか……

 それに、地形を活かした戦い方をするのならこれ以上無いほどの使い方も出来そうで応用方法を考えるのが楽しそうだ。


 ……そういえば【深淵天子】の詳しい性能について踏み入ったことは無かったな、今度調べてみるか。


 

 「なんだかコッチのこととは別のことを考えているかな。

 【包丁戦士】には悪いけど、そのまま死に戻りしてくれると嬉しいよ」


 そう言いながら【石動故智】はピッケルを上段で構えてから振り上げると、そのまま俺に突っ込んできた。

 勇み足なのはいいが、俺は片手しかない手負いのプレイヤーだぞ?

 そんなに警戒しなくてもいいじゃないか。


 「【包丁戦士】の力を侮るほどコッチは愚かじゃないよ。

 次元を一位に導いたMVPプレイヤーがその程度で戦えなくなるなんて到底思えないからね」


 ひゅー怖い怖い……

 上から下へと振り下ろされたピッケルを間一髪だかわしたが、ピッケルが突き刺さった地面が砕かれていく。

 これが続くとただでさえ足場の悪いピッケル次元の【神殿】がより劣悪な戦場と化してしまうのは目に見えている。


 とにかくいち早く【石動故智】を出し抜いて【シンボル】か【供物】をなんとかしておきたいが……








 連戦で苦戦しておるようだのぅ……


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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