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674話 拠点交流32

 そんな感じでしばらく生産アイテムを製造したり、加工したりして【想起砂漠の現像鮫(廻)】に備えていた包丁次元のプレイヤーたちだが、しばらく待ってみても戻ってきていない連中が結構いるのに気がついた。


 これ、もう20人近く死んでないか?

 偶々戻ってきていないだけのやつもいるだろうが、思った以上にこの次元戦争ではあらゆるところで戦闘が行われているようだな。


 【想起砂漠の現像鮫(廻)】なのか、他の次元のプレイヤー相手なのかは分からないがあまり数を減らしすぎるのも考えものだぞ。


 「そうですよね~!

 いや~、私も【包丁戦士】さんと一緒じゃなかったら軽く三回くらい死んでそうなので強くは言えないですけど!」

 

 ボマードちゃんは、まあ……拠点に引きこもってなかったら死んでただろうな……




 俺はそんなことを考えながらも生産プレイヤーたちが籠りっきりで作っている【神殿】を眺めている。

 石材系統の素材は鉱山近くでしかレア度の高いものが手に入らなかったので、基本的には木材で組み上げられている。


 まるで櫓を組むかのように作られているが、その中央はあの虫眼鏡を核にしているようだ。

 

 「えっと、その、エネルギーの効率が、あれ、なので……」


 要領を得ない発言で補足してきた【ドライバー修理人】だったが、おそらく虫眼鏡そのものを【神殿】に使うことでいくつかの必須素材の代用にしたのだろう。


 代わりにもう素材の情報を見ることが出来なくなってしまったが、絶好の素材スポットである鉱山を押さえられてしまった以上、その分何かを犠牲にしないと追い付けないだろうからな。

 やむを得ないだろう。


 エネルギー効率とか言っていたから、【神殿】には素材のエネルギーを使うギミックがあるんだろうが完成したらこの次元戦争って終了のはずだよな?

 なんでそんなもの仕込んでいるだか……

 【神殿】作りそのものに関わっていない俺がこれ以上考えても埒が明かないな!

 もう任せたぞ【ドライバー修理人】、この戦いはお前の腕にかかっている!


 「はっ、えっ、どうも……」


 俺が急に誉め出したので困惑する【ドライバー修理人】。

 だが、困惑しているだけじゃなくて照れているな?

 顔が赤く上気しているのが目に見えて分かるからな。


 俺のような可憐な乙女に詰め寄られたらこいつみたいなプレイヤーはイチコロだからな。

 そう、俺はプレイヤーキラー……心さえもキルするってことだ!







 「【包丁戦士】さん……何変なことを言っているんですか。

 相変わらずよく分からないことを唐突に言い始めますよね?」


 おっ、【釣竿剣士】か。

 変なことを言うという点ではお前にだけは言われたくないけどな……

 生産プレイヤーなら何でも出来るってわけじゃないんだぞ。

 

 「そんなことありませんよ!

 生産プレイヤーの可能性は無限大ですからね!

 限界を自分で決め込んでしまうからダメなんですよ」


 【釣竿剣士】はまるで自分に言い聞かせるかのように強い口調で言い放った。

 そして、目線は俺の方を向いているが見ているのは俺ではないだろう。

 これはおそらく、かつて次元戦争で戦った【釣竿剣士】の【師匠】のことを考えているな?

 最近【師匠】の力を振るっていた【大罪魔】と戦い自分の未熟さを改めて自覚した……そんなところだろう。

 あの時は次元戦争で勝利はしたものの、俺と【釣竿剣士】の二人がかりで【師匠】に挑んであの結果だったからな。

 いつかは自分一人の力で勝ちたいと思うのも無理はない話だ。

 


 だが、焦ることはないぞ?

 【釣竿剣士】には【釣竿剣士】のペースがあるはずだからな。

 お前みたいな超人にとやかく言うつもりはないが、自分の出来ることからやっていけばいいはずだ。



 俺はそんなお節介みたいなことを【釣竿剣士】に語りかけると、【釣竿剣士】はギョッとした顔をして俺の方をガン見してきた。


 ……なんだよ?


 「いえ、まさか【包丁戦士】さんに元気づけられるとは思っていなかったので驚いただけです。

 【包丁戦士】さんも真っ当な思考をしているんですね?」


 俺をいったいなんだと思ってるんだ……










 「んあ……

 狂巫女様、そろそろいいか?」


 【釣竿剣士】との会話を終えた頃に後ろから声をかけてきたのは【軍刀歩兵】だ。

 俺が色々なやつに声をかけている間にもずっとこっちを見ていたから、いつ声をかけようかと様子を窺っていたのだろう。


 俺はプレイヤーキラーだからな、そんな視線にもすぐに気がついた。

 ……気がついててあえて無視してたけど。

 こいつの気配からすると、すぐに次の作戦に移行させようとしている気がしたからな。


 「んあっ!?

 ご明察、流石は狂巫女様……

 やはり俺と【黒杖魔導師】さんの目に狂いは無かったようだ。

 貴女こそ、俺たちが信奉するに相応しい存在だ!

 その慧眼、洞察力……そしてそれらを兼ね備えた狂気っ!

 プレイヤーキラーとしての真髄をどんなところでも感じさせてくれる、張り詰めた空気を纏う貴女だからこそ皆が付き従うんだっ」


 おいおい、急に怖いこと言うなよ……

 クラン【包丁戦士狂教団】とはよく言ったものだ、カルトチックな思考回路をしてやがる!


 「……というのは今回は置いておくとして」


 うわっ、急に冷静になるなよ……

 一見すると堅実なやつに見えるが、ふとした瞬間に狂気が感じられるのはプレイヤーキラーとしての才覚だろうか。


 「【想起砂漠の現像鮫(廻)】と積極的に戦わないと決めた今、他の陣営に攻撃をしかけるべきだと俺は思う」


 奇遇だな、俺も同意見だ。

 ちなみに、俺は蛇腹剣次元の拠点のある方向をある程度把握できている。

 【想起砂漠の現像鮫(廻)】から逃げる時に、パジャマロリたちが逃げる様子を観察させてもらったからな。


 「んあ……

 蛇腹剣次元でもいいが、俺としてはピッケル次元のリソースを削いでおきたいと思っている。

 狂巫女様が蛇腹剣次元の拠点に目処をつけたように、俺もピッケル次元の拠点に目処をつけてきた」


 おっ、いいね~!

 俺は仕事が出来るやつは好きだぞ?


 「お褒めに預かり光栄だ……

 それでどうする」


 【軍刀歩兵】は若干照れながらも、俺に判断を仰いできた。

 どうやら【軍刀歩兵】はここからも俺に従って行動してくれるようだ。


 それなら俺が選ぶのは……










 蛇腹剣だったり、ピッケルだったりする……


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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