67話 イベント情報のフラゲ
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
「来ましたか、待ってましたよ底辺種族【包丁戦士】」
マジ?
昨日のバックレを咎められるのか、このパターンは?
俺は【菜刀天子】の様子を窺いながら距離をじわじわと離していく。
いざとなったらここから全力で逃げる算段である。
「そこまで警戒する必要はないですよ。
今回は公式イベント第2弾の告知をするために待っていただけですから」
なんだよ脅かすなよ……ビビって損した気分になったじゃないか。
それにしても公式イベント第2弾とはこれまた急だな。
前の公式イベントは半分クローズドイベントのようなものだったが、今回はどのようなものなんだろうか。
「今回は次元戦争ではなく、この次元内だけで完結するイベントですね。
前回のイベントの反省を活かして、より多くの人が関われる戦闘系統のイベントとしてVRMMOゲーム定番の闘技大会を開催するようです。
参加方法はあと半日後に公式サイトなどで告知予定ですが、エリアごとに期間限定で設置される闘技場でその期間内に一番多くポイントを稼いだプレイヤーが代表として選ばれます。
そのエリア代表同士で最終的に戦うというものです。
底辺種族にも分かりやすい説明をしたつもりですが、その矮小な頭で理解できましたか?」
だーれが矮小な頭だ。
ちなみにだけど、どの闘技場でも戦える感じなのか?
俺の場合、ログイン場所が新緑都市アネイブルで、ここのトッププレイヤーって呼ばれてるけど、他のエリアの闘技場に殴り込みをかけるのは可能なのか?
「もちろん、その辺りの規制は一切ないです。
ただ、色々なエリアに移動する時間が無駄になってしまいますので得策ではないでしょう。
ポイントも闘技場ごとに貯まっていくので、1つのエリアで稼ぎ続けたプレイヤーの方が効率がいいので、代表に選ばれやすいのは間違いないですね」
ゲーム運営として禁止こそしてないが、推奨しているわけでもない……か。
他のエリアではそれぞれのトッププレイヤーがいるし、実質そいつらがそれぞれの代表を目指す可能性は高い。
【包丁戦士】は西。
【釣竿剣士】は北。
【風船飛行士】は東。
【トランポリン守兵】は南。
俺ですらそう思っているのだから、俺以外のプレイヤーもそう思っているだろう。
ちょっかいこそ出しに行くとしても、相手のエリアで代表になろうとするのは非効率的だし、リスクも大きすぎるからな。
「その通りです、しかしトッププレイヤーと呼ばれている底辺種族以外が台頭してくることもありますから精々気をつけてくださいね。
足元掬われますよ……」
まあ、その可能性は普通にあるだろうな。
トッププレイヤーと呼ばれているプレイヤーは戦闘能力がそれなりに高いのはまあ、経験上なんとなく分かってるが、トッププレイヤーと呼ばれているのは戦闘能力についてではなく、あくまでもそれぞれのエリアのレイドボスに対する意欲の強さからだからなぁ。
極論、蟻のような強さだったとしても意欲だけ強かったらそいつがトッププレイヤーと呼ばれていたかもしれない可能性はあった。
それに、表に出てきていない実力者もいるだろう。
レイドボスには興味はないが、対人戦闘には特に興味があるやつとか。
俺以外のプレイヤーキラーが来る可能性もある。
なんにしても俺はプレイヤーキラーだから、合法的にプレイヤーを切りに行けるのは面白そうではある。
野良でキルするのが一番の醍醐味だけど、たまには大衆の前でというのも悪くないからな。
「やけに乗り気だと思ったらやはりそのような理由でしたか。
流石底辺種族……思考回路が理解できませんね……」
あっ、キルさえ出来れば正直満足ではあるが、せっかくヤるならポイントも稼ぎたい……
そういえば、ポイントってどうやって貯めんの?
「基本的には対戦相手を倒せばそれでポイントが入ります。
しかし、負けるとポイントが減ります。
相手のポイントが自分より高ければ高いほど勝ったときのポイントは多くもらえて、相手のポイントが自分より低ければ低いほど負けたときのポイントが多く減る仕組みです。
簡単に既存の言葉で纏めるならばレーティング対戦といったところでしょう。
底辺種族【包丁戦士】のように弱いものばかりを倒して悦に入っているようなプレイヤーでは勝ち抜けない……ということです。
肝に命じてくださいね?」
はいはい承知しました、と。
でも、この闘技対戦って勝ち抜くとなんかあったりするのか?
俺はプレイヤーキルさえできれば満足ではあるんだが、他のプレイヤーたちの中にはそうではないやつが混ざっていることも知っている。
「いえ、混ざっているというよりはほとんどの底辺種族がプレイヤーキルするだけで満足はしませんからね?
底辺種族【包丁戦士】が異常なだけです、自覚してください。
……こほん、底辺種族がモチベーションを保つための方策はもちろんあります。
南の渓谷エリアにある冒険者ギルドを参考にしまして、ポイントによる報酬との交換が出来るようにしました。
褒美を餌にすることで底辺種族はよく動くということを学びましたので、早速活かせるように運営に頼みました。
どんな報酬があるかは公式サイトの告知が出てから確認してください……と言われています」
言われています?誰に?……普通に考えたら運営だろうけど。
「代表戦では順位による特別な報酬もありますので、這いつくばってでも勝ち残りなさい。
特に1位になったプレイヤーには次回次元戦争の他のメンバーの選出権利が与えられます。
最も底辺種族【包丁戦士】はMVPプレイヤー枠で決まっていますからね。
他のプレイヤーを決められたくなかったら自ら勝つことですね。
私の一心同体というのであれば、最低限それくらいは成し遂げてもらわなければ私の格が疑われてしまいますから」
どこか複雑そうな表情を浮かべる【菜刀天子】は俺にいったい何を求めているのだろうか……
心の底ではどう考えているのか微塵も表に出さずに辛辣で偉そうな言葉で取り繕っている、そんな気はする。
いや、取り繕っているにしても偉そうな態度には普通にムカッとくるけど……
ともかく、レイドボス攻略前にこの闘技場イベントで楽しむとするか。
「その意気で頑張ってください。
景気づけに私からもエールを贈ります。
これで頑張りなさい、【渡月伝心】!」
俺は【菜刀天子】による銀光の円環というエールに囲まれ、千切りになりながら闘技場イベントに思いを馳せていた。
精々頑張りなさい。
【Bottom Down-Online Now loading……】
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