667話 超過釣果45
「……どうやら【包丁戦士】さんたちが戻ってきたみたいですね。
鉱山の調査はどうでしたか?
生産プレイヤーとして私自身は使わないにしても素材の情報は知りたいですからね」
包丁次元の拠点に戻った俺たちを待っていたのは、釣竿を肩に掛けている花飾りの少女【釣竿剣士】だった。
鉱山の件は諦めた方がいいな……
あそこを確保されるのはかなり痛いが、それ以上に包丁次元として支払う対価がデカすぎるって判断したからな。
今あそこは蛇腹剣次元とピッケル次元で壮絶な奪い合いをしていたから、例えあそこを一時的に占有できたとしても維持コストがキツすぎる。
何せピッケル次元は鉱石の確保に全精力を注いでいるらしいからな。
そんなところを片手間で手に入れてしまったら、素材どころじゃなくて【神殿】を作る包丁次元のプレイヤーそのものが居なくなるに違いない。
やるにしてもこっそり忍び込んで採掘して抜け出してくる方がまだ合理的だ。
「なるほど、それならば仕方ないですね。
別に【神殿】に鉱石を必ず使わないといけないわけではないでしょうから、その判断は生産的だと思いますよ!
それは置いてとくとして……私たち食材調達グループは順調に食材を持ってこれましたよ!
【包丁戦士】さんから報告のあった小川を上がっていったところにいいポイントがあったんですよ。
これがその釣果です!」
【釣竿剣士】は木をくり貫いて作ったバケツのようなものを俺に見せてきた。
そこにはみっちりと敷き詰められた川魚が蠢いていた。
……ちょっとキモい絵面だが、この短時間でこれだけ釣れたのは凄いな。
素直に感心するぞ。
「当然ですよ、生産プレイヤーなら!
……ですがありがとうございます、それは生産プレイヤーに対しての最大の褒め言葉です。
せっかくなので、素材としての性能も一緒に見ませんか?
私もまだ見ていないのでついでに見るのも悪くないと思いますけど……」
おっ、いいな!
せっかく【釣竿剣士】が釣ってきてくれた魚だ、俺も気になるし是非とも見せてもらおうか。
そうして二人で拠点にある巨大な虫眼鏡に魚を一匹ずつかざして詳細を確認していく。
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レッサーレッドフィッシュ(イベント限定)
レア度:1
品質:高
耐久度:10/100
【Battle field 特異次元アネイブル】に生息する川魚。
鱗は道具作りに利用でき、肉は焼いても美味しい一匹で二度楽しめる魚である。
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汎用素材っぽいな。
便利そうだけど、耐久度が少ないのが気になるところだ。
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レッドフィッシュ(イベント限定)
レア度:3
品質:高
耐久度:50/100
【Battle field 特異次元アネイブル】に生息する川魚。
鱗は道具作りに利用でき、肉は焼いても美味しい一匹で二度楽しめる魚である。
レッサーレッドフィッシュが成長した姿のため、遭遇する機会は少ない
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上位種か。
つまり、他の素材にも上位素材とかあるかもしれないってことになる。
そこまで突き詰める必要があるかは別だけど。
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エルダーレッドフィッシュ(イベント限定)
レア度:10
品質:極高
耐久度:100/100
シンボル素材
【Battle field 特異次元アネイブル】に生息する川魚の主。
鱗は道具作りに利用でき、肉は焼いても美味しい一匹で二度楽しめる魚である。
レッドフィッシュが成長した姿であり、今回のイベントで一匹しか生息していない神秘を宿した川魚の主である。
釣りに対する一定の熟練度とエリア干渉能力が無ければ遭遇することも、釣り上げることも難しいシンボル生物。
ここから上手く解体することで【神殿】に必要な素材が手に入る可能性がある。
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!?
おいおいおい、なんかヤバそうなもの釣ってきたな!?
シンボル素材だってよ……
川魚の主って聞くとネーム的に微妙な感じだが、【神殿】に使える素材なら話は別だ!
こんな素材を釣ってくるとは流石は【釣竿剣士】だ。
生産プレイヤーとしての力量を見せつけた感じだな?
「当然ですよ、生産プレイヤーなら!
ただ、このままだと【神殿】に使えないみたいですけどね。
解体動作が必要みたいです。
私も魚の処理をすることはあるのである程度は出来ますが、都合よくもっと適任者がいますから任せたいですね」
……?
ああ、俺のことだな!
このイベントが始まってから生産活動を全くしてなかったので生産プレイヤーとしての自覚を失ってたわ……
包丁がチュートリアル武器の料理系生産プレイヤーは今回俺しかいないようだからな。
プレイヤーキラーじゃない面もここにいるモブプレイヤーたちに見せつけてやろうじゃないか!
あわよくば好感度アップだ!
打算的だったり、見栄っ張りだったりする……
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