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664話 逃走と爆弾魔48

 「コッチの得意技いくよ。

 スキル発動【スマッシュ】」


 【石動故智】は手に持つピッケルに光を宿らせながら俺に向かってそれを振り下ろしてきた。

 俺は回避行動を取ることができず、それを包丁で受け流そうとしたが……




 っっっ!!!!

 俺は包丁から伝わってきた膨大な衝撃力によって背後にあった木に叩きつけられることとなった。

 やっぱりそのカタカナスキル厄介すぎるな?

 

 【ピッケル次元】のMVPプレイヤーである【石動故智】が多用する【スマッシュ】というスキルだが、これはスキルによるダメージそのものを無くす代わりにそれを衝撃力として打ち出すスキルだ。

 

 当たったところでその時点ではそんなにダメージを受けないが、余程の対策をしないとピッケルに触れた瞬間に弾き飛ばされ地面だったり木だったりにぶつかって結局ダメージを受けることになってしまう。

 厄介なところは、例え包丁で攻撃を受け止めたとしても問答無用で衝撃が伝わってくるってことだな。

 つまり、ガード不能と考えておいた方がいい。


 そして、カタカナスキルは基本的にクールタイムが短いという特徴があるから連発することが可能だ。

 だが、俺の【フィレオ】が自分の四肢を差し出す必要があるのと同様に、何かデメリットがあるはずなんだが……


 「まだまだいくよ。

 スキル発動【スマッシュ】」


 そんなことを気にしていないかのように【石動故智】は【スマッシュ】を連発してきた。

 クールタイムが短いからって連発してくるなよ!


 俺はぶつけられた木から急いで飛び退いて【石動故智】の攻撃を慌てて回避した。

 俺に当たらず地面に突き刺さったピッケルからは衝撃が発生し、地面が一気に砂ぼこりとして吹き飛んでいき小さいクレーターのようになっていた。


 「コッチの【スマッシュ】は対人戦とか採掘には役立つけど、レイドボス相手だと全く活躍させられないのが残念だよね。

 レイドボスに当てても吹き飛んでいる最中に体勢を立て直されちゃうし、そもそも吹き飛んでくれないレイドボスもいたよ」


 俺が理不尽だなんだのを【石動故智】に向かって言っていたからか、わざわざ俺に【スマッシュ】について解説してくれた。

 手の中にあるピッケルをクルクルと回しながら説明するのは、ある意味曲芸のようにもおもえたがそれよりも【スマッシュ】の情報の方が気になった。


 つまりだ、飛ばされている最中になんとか体勢を整えてうまく着地さえ出来れば問題ないってことだろ?

 俺には衝撃で吹き飛ばされないような重量はないから、結果として飛ばされた後の事を考えることになる。

 

 それにしても、この女騎士の情報リテラシーの無さには驚いたな。

 わざわざ自らの攻撃の対応策まで教えてくれるとは親切なものだ。



 そんな情報を暴露してくれた【石動故智】に対して俺は包丁でもう何度目になるか分からない斬撃を繰り出していく。


 横凪ぎ、唐竹割り、逆風と斬撃を繋げていき包丁という手回しのよさを発揮して【石動故智】が攻撃に移る隙を与えさせないようにしていく。

 

 「これだとピッケルを振り回せないね。

 ピッケルを防御だけに使うと【スマッシュ】も使えないよ」


 そうして攻撃を連続させていくと、【石動故智】はどんどんと後退しながら守りに専念し始めていった。

 俺も消耗無しでこれ以上攻めるのは難しい。


 ここで【石動故智】を倒すならスキルを解放するかっ!

 そう思い口を開こうとした瞬間に、【石動故智】の後ろから人の気配が迫ってきているのに気がついた。


 そこから出てきたのは武骨な鎧を着た中年の男だった。


 「石動さん、A班が鉱山を発見しました!

 ですが、そこを先に押えていた別の次元のプレイヤーと抗争しているとのこと。

 早急にそちらへ向かいましょう」


 ちっ、発見されたか……

 だが、まだ占領されてなかったのはラッキーだ。


 「そういうことでコッチはここから去らせてもらうよ。

 ……と言っても君は逃がしてくれないんだろうけどね」


 当たり前だっ!

 発掘系生産プレイヤーに鉱山を使わせるわけにはいかない!



 俺は逃げながら鉱山へと向かう【石動故智】と中年鎧男を追いかけながら時折攻撃を仕掛けていく。


 「はぁっはぁっはぁっ!

 いや~、皆さん速すぎですよ~!

 少しでも足をとめてもらうためにもこれ投げちゃいます!」


 ボマードちゃんも一生懸命走ってついてきているが、どんどん離されていき置いてかれそうになっている。

 そこでボマードちゃんは息があがって苦しそうな顔に閃いたという表情を浮かべて、何かを投げてきた。



 ……あれはっ!

 おいおいっ、待て待て待て!!

 

 俺は見覚えのあるものが飛んできたので慌てて横に回避していく。

 だが、その前にいた中年鎧男は飛んできたものに気づかず当たってしまった。

 

 そして次の瞬間……



 ドゴーンっ!と激しい爆音を立てて爆発したのだ。

 それもそのはず、ボマードちゃんが投げたのは拡散スイカの種を核にした爆弾だったからな。

 俺たちの次元でも広まってなかったから、他の次元では見覚えの無い生産アイテムだっただろう。

 だからこそ、こんな初見殺しが通用したってわけだ。


 たまにはやるじゃないかボマードちゃん!

 爆弾魔のお役目ご苦労!





 ……。


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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