662話 野良エンカウント50
ランドセルを背負いながら緑が生い茂るフィールドを進んでいく俺だったが、南方に進むという方針であるからひたすら真っ直ぐ進んでいっている。
何が言いたいのかと言うと、真っ直ぐ進むだけって結構飽きる!
周囲の気配を探ることはもちろんやっているが、他のプレイヤーとも遭遇しないし物珍しいものも見つかっていないのでただ漫然と直進しているだけだ。
拾ったものをテキトーにランドセルに突っ込んでいっているが、道端のものを雑に拾うのってランドセルを背負っているのも相まってまさに無邪気な小学生っぽい感じがしてくるな……
このデザインにした【ドライバー修理人】を恨むぞ……
だが、このランドセルにはアイテムを五個までしか入れられないのでこの五個の枠をとっかえひっかえしながら中身をグレードアップさせていっている。
落ちているものを拾っているだけだからそんなに凄いものがあるわけではないが、拠点に戻ったときのお土産があるのとないとでは貢献度も変わってくるだろう。
次元戦争中くらいは他のプレイヤーに貢献して好感度を一時的に上げるのも悪くないはずだ。
俺がもらったこのランドセル……正式名称は【レッサーレッドドッグの背負い皮鞄】。
つまり、このフィールドにはレッサーレッドドッグというモンスターが彷徨いているということだろうな。
じゃないと、素材無しでこのランドセルを生み出したことになってしまう。
そういうことなら、他にも今回の次元戦争を有利に進めることが出来る素材をドロップするモンスターが居てもおかしくはない。
さっきボマードちゃんと小川を下って行っていた時には遭遇しなかったが、見つけたらスルーせずに倒して行くと良さそうだ。
もっとも、本目的は【ピッケル次元】への牽制の鉱山確保だがな。
「うわっ、何だか出てきましたよっ!?
いや~、やっぱりモンスターいるんですね~!」
とか考えていたらさっそくモンスターのお出ましだな。
俺の前に現れたのは、体長二メートルほどの緑色の肌を持つトカゲのようなモンスターだった。
四本足を巧みに操り俺の周りから一定距離を保ったままこちらの動向を窺っていることから、ある程度の戦闘に関する知性はありそうだ。
「やっぱりさっき言ってたみたいに倒すんですか?
戦力温存とかは……しないんですね、はい……」
戦う気満々の俺の表情を見たボマードちゃんは逃げようとした足を止めておとなしく俺の戦いを観戦するモードに入ったようだ。
ボマードちゃんと俺の付き合いも何だかんだ長いものになってきているからか、この状況で俺が引き下がることはないと諦めたのだろう。
良い心がけだ!
俺は戦闘開始と言わんばかりに腰に提げていた包丁を引き抜き、人より少し大きめなサイズのトカゲに向かって切りつけていく。
それに対して、地を這うように移動しながら俺の後ろに回り込みながら回避するトカゲ。
そして爪による攻撃で俺の背中を切り裂こうとしてきた。
地味に小癪な真似をしてくれるじゃないか、雑魚モンスターの癖にっ!
俺は爪による攻撃を包丁で受け流すと、返す刃でトカゲの腕を切りつけていく。
このまま腕への集中攻撃で包丁による切り込みを入れていくと、腕を切り落とすことに成功したぞ!
このレベルの相手なら【フィレオ】を使うまでもなく部位切断できるな。
戦った感じだと、【オメガンド】が管理している冒険者ギルド用のダンジョンに生息するモンスターと同程度の危険度ってところだ。
それなら様子見すらする必要は無さそうだな!
俺は腕を失い動きが急激に鈍ったトカゲに対して更なる猛攻を加えていく。
残った三つの足を周回するように切りつけていき、斬撃によるダメージを蓄積させていくと一本、また一本と足がずり落ちていきトカゲは胴体から地面に突っ伏すこととなった。
こうなればもうこっちのものだ!
俺は四肢を失い動けなくなったトカゲの真上に登り、そこから包丁を垂直に突き刺していく。
ペーパーカッターで切り分けるようにサクサクと分解していくと、その作業の途中でトカゲは光の粒子と化していった。
「なんだか呆気ない終わり方でしたね~
いや~、雑魚モンスターって言ってた割には時間かかってましたけど!」
虚弱体質のボマードちゃんにだけは言われたくないセリフトップテンに入りそうな嫌みを言われたな?
このプレイヤーに人権のないゲームでは雑魚モンスター相手でもある程度は慎重に戦わないと即死させられることなんてざらにあるからな。
何せモンスター優位の世界だから、プレイヤーにつけあがらせるようなことをさせないためのバランスだろう。
それでも、流石に初っぱなから次元戦争脱落とかにならなくて助かった気もするな……
ここで出会ったのが雑魚モンスターのトカゲじゃなくてレイドボス級とかだったら話にならなかったし。
「そんなの逃げるしかないじゃないですか!?
いや~、そんなことあるわけないんですけどね!」
俺はそんな話をしながらトカゲを倒してドロップした素材を背負っているランドセルへと放り投げて入れていく。
このランドセル、色々と制限はあるがあるのと無いのとでは全然勝手が違ってくるな!
【ドライバー修理人】、良い仕事するじゃないか……
感謝したり、恨んだりする……
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