661話 ランドセル拠点50
はい、というわけでロリ巨乳のボマードちゃんを脇に抱えながら全力で包丁次元の拠点まで戻ってきた。
無駄にデカイ乳が横で揺れながら弾んでいるのは、邪魔だし目の毒だったぞ……
俺とボマードちゃんだと、それぞれが走るよりは俺がボマードちゃんを抱えて走った方が早いからな。
だって、ボマードちゃんは【名称公開】のデメリットで弱々体質になってて移動速度も徒歩レベルが基本だからな……
こういう時は俺が少し無理してでも強行手段に出るのが得策だ。
「【包丁戦士】さんが抱えてくれるなんて役得ですね!
いや~、同行して良かったです~!」
なんかボマードちゃんは喜んでいるが、無視だ無視!
「んあ?
狂巫女様がそんなに急いで戻ってくるなんて余程のことでもあったのか?」
俺が拠点に戻ってきて一番始めに遭遇したのは素材採取班の【軍刀歩兵】だった。
慌てて戻ってきた俺の様子に緊急性を感じたのか、素材の仕分けを行っていた手を止めて俺の方へと歩み寄ってきた。
ちょっと腕に自信のあるやつ、俺についてこい。
この次元戦争でかなり不味いことが判明したから、実力行使に出る必要があるんだ。
俺は戦闘系プレイヤーを募るべく、少し大きめな声で話しかけた。
それに対して【軍刀歩兵】は困惑した表情を浮かべ、俺の突然の宣言に対して質問を繰り出してきた。
「んあ?
こんな序盤からそんな不味い状況になるなんてあり得るのか狂巫女様。
俺たち素材採取班が見回った時には特に異常は見つからなかったが」
何も異常があったわけではないんだ。
だが、俺たちがこの次元戦争に敗北する可能性があるものがこのフィールドに存在しているっていうことが分かってな。
俺たち包丁次元は何としてでもそれを手中に納めておかないといけない。
これは必須事項だ!
「ん……
不味いっていうのは熱くなってる様子から伝わってくるが、具体的なことが何も伝わってこないんだが。
狂巫女様、落ち着いて俺たちにも分かるように説明してくれ」
……っっ、悪い悪い。
戦闘をしたり、走ったり、情報を仕入れたりしてヒートアップしてたな。
もっとクレバーな感じでいかないと……
俺は一度深呼吸して呼吸を落ち着け頭を冷やしていく。
先走っていた思考が一気にクリアになっていき、俺がここで何を伝えていくべきなのかを整理していく。
……うん、纏まった!
で、情報だが……
このフィールドの南方に鉱山があるらしい。
俺が戦った蛇腹剣次元のプレイヤーが言っていたことだから鵜呑みにするのは危険だが、もし本当なら鉱山が今回の戦いのウィークポイントになるだろう。
「んあ?
何で鉱山が俺たちの弱点になるんだ?
鉱石とか採掘できるなら、鉱山の情報を握った俺たち包丁次元が有利なんじゃないのか?」
普通ならそう考えるだろうな。
確かに俺たちが素材を手に入れるということだけを考えるならその通りだろう。
【軍刀歩兵】らしい堅実な考え方だ。
だが、相手が悪い。
鉱山を俺達が占有するに当たって、今回の対戦相手にいる【ピッケル次元】……ここが最大の障壁となる。
俺も話を聞いただけだから実際のところは不明だが、【ピッケル次元】では鉱石の採掘が発達していて、さらにそれに最も熱心なのがピッケル次元のMVPプレイヤーである【石動故智】だ。
なにせチュートリアル武器からしてピッケルという採掘道具だから、その熱の入り様は想像できるんじゃないか?
戦闘も出来て、鉱石の採掘も出来る……そんなやつを主体にしているピッケル次元がこのフィールドにある鉱山を占有したとしたらどうだろうか。
間違いなく猛スピードで素材を採掘していき、神殿を完成させるだろう。
「ん……
こういうゲームの鉱石っていうのは基本的に特殊な効果を保有しているのが定番だ。
狂巫女様の言うように、採掘特化プレイヤーを神殿作成素材に有用な鉱石が手に入る鉱山に近づけるのは相手に勝ちを譲るようなものだ……
こうなったらウカウカしていられない、クラン【包丁戦士狂教団】の同胞たち、そして俺たちに同行する勇気のあるやつはついてこい!
この俺、【軍刀歩兵】が先行して南方の鉱山に偵察にいく」
【軍刀歩兵】はそう言って、クランメンバーたちを引き連れて颯爽と拠点から立ち去っていった。
うーん、これは有能な副官だな。
必要な情報を聞き出しつつ、必要以上のことをせずに迅速に動くという効率の鬼……
俺のクランにはいないタイプのプレイヤーだな。
あの【黒杖魔導師】に任せておくのが勿体ないくらいの人材で、【菜刀天子】討伐戦の時に【検証班長】が近くに置いておきたいと言った理由がよく分かった。
【黒杖魔導師】がいるとどうもあいつの方がアクが強く目立つので気づかなかったが、【軍刀歩兵】は一家に一人欲しいレベルで有能なプレイヤーだな。
さて、俺も鉱山を探しに出発するぞ!
そう意気込んで足を踏み出したら後ろから俺を呼ぶ声がした。
「えっと……その……あの……これ……」
声をかけてきたのは【検証班】の生産プレイヤー【ドライバー修理人】だ。
人見知りが凄いのか、声をかけられたのはいいもののイマイチ何を伝えないのかが分からない。
だからこの【ドライバー修理人】が差し出しているものを見てみる。
……これはランドセルか?
作りたてだからか生臭い香りが鼻を突くが、見た目は完全に小学生が背負うようなランドセルである。
せっかくなのでそれを受け取り、拠点にある巨大な虫眼鏡にかざして情報を見てみることにした。
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レッサーレッドドッグの背負い皮鞄(イベント限定)
レア度:4
品質:高
耐久度:80/100
【Battle field 特異次元アネイブル】に生息するレッサーレッドドッグの皮で作られた鞄。
鞄の大きさと容量は比例しておらず、5個までアイテムが収容できる。
ただし、この鞄よりも大きいものはそもそも入れることが出来ない。
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「これ……ぼくが作った……から……」
ふーん、【検証班】お抱えの生産プレイヤーなだけあって即興にしてはいいものを作るじゃないか。
見た目がランドセルっていうのには若干引っ掛かるが、ありがたく使わせてもらおう。
そうして俺はこのランドセルを背負ってみた。
ほう、身体にフィットして動きやすいな。
身体の可動域を変えること無く、戦闘の邪魔にならなさそうというのも高評価だ!
そうして【ドライバー修理人】の仕事に感心していると、周りのプレイヤーたちがざわめき始めた。
「ほ、【包丁戦士】がランドセル背負ってるぞ!?」
「見た目と似合いすぎてて笑うw」
「ランドセルを背負ったプレイヤーキラーってなんかシュールだな……」
「やっぱりロリじゃないか(確信)」
「これは事案!」
「小学生は最高だぜ!」
おいお前ら……
何度も言うが俺はロリじゃなぁぁぁぁぁい!!!!
ランドセルを背負った俺の慟哭が拠点に虚しく響き渡ったのだった。
ロリだったり、ロリじゃなかったりする……
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