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659話 せいさんむし50

 とりあえず人望のない俺はボマードちゃんと二人きりで他の次元のプレイヤーたちを探すことにした。

 俺は料理系生産プレイヤーだから具材さえ揃えば料理で貢献できるんだが、それは【釣竿剣士】たち食材調達班が仕事を終えてからようやく出来ることだ。

 今は他の次元に圧をかけていくのが先決だ。

 ふっ、あわよくばキルしてやろう。


 俺がそうほくそ笑んでいると、俺の顔を覗き込んできたボマードちゃんが口を尖らせながら口を出してきた。


 「やっぱり【包丁戦士】さんは次元戦争っていう大舞台でも相変わらずブレないですよね……

 いや~、普段も攻略に貢献しているかと思いきや他のプレイヤーを合間合間でキルしてますからね……

 あれっ?でも【包丁戦士】さんってイベント中にルールやマナーに反して他の味方プレイヤーの邪魔をすることってあんまりないですよね?

 ちょっと不思議ですよ~!?」


 こらこら、俺を誉めたいのか煽りたいのかどっちかにしろ!

 この頭お花畑の爆弾魔めっ!

 そんなこと気にするくらいなら真剣に敵を探せよ……



 ……ちなみに、そのタイミングで他の奴らを狙わないのはレイドバトルならレイドボスの方が、次元戦争ならMVPプレイヤーの方が戦ってて面白いからだろうな。

 俺にとってつまらない、温い世界だったら俺はイベント中だろうが決定的瞬間だろうが、なんだって台無しにしただろう。

 初心者イベントの時とかがまさにそうだ。

 あれは俺自身途中まで何も出来ないイベントだったからな、あまりの退屈さに俺がレイドボスとしてイベントを乗っ取って初心者プレイヤーたちを虐殺して回った。


 今後もそんなつまらない状況になったら遠慮なく積み上げてきたものをキリ崩していくに違いない。

 退屈に俺が耐えられないからな。

 他のVRMMOでも、難易度が低かったりぬるいことばかりが蔓延している世界では俺はより全てを壊していく動きをしてきたしこれからもしていくと思う。

 

 俺のスタンスはそんなところだな。



 「えっ、【包丁戦士】さんってこれでも控えてる方なんですね……

 いや~、他のゲームでどれだけ環境破壊してきたのか考えるだけでも恐ろしいですよ~!?」


 そんな下らない話をしながら俺たちは小川に沿って歩いていき、まずは移動距離を稼いで行動範囲を広げていっている。

 小川から少し外れると森が広がっているので遠くまで見ることは出来ないが、地形の変化を観察できたり珍しいアイテムなどを拾う機会が増えることは期待できそうだ。


 まあ、遠くまで行きすぎると戻ることがそもそも大変だからな……

 死に戻りで拠点まで一気に戻れるならともかく、今回の次元戦争は詳しいルールがほとんど開示されていないまま始まったから行動は慎重にした方がいいだろう。


 間違っても序盤でMVPプレイヤーと戦って死ぬなんてことはあってはいけない。

 いや、俺は勝つが?

 








 「いや、うちも負けないよっ?

 変態お姉さんが完全に敵として出てくるのって一番始めの次元戦争以来だからね~

 久しぶりに目が覚めたカンジだよ~」


 俺の一人言に反応するように小川の向こう側から声をかけてきたのはこの大自然の中では不自然に映るパジャマを着たロリだ。

 眠そうに目を擦りながら現れたが、手にはぬいぐるみを持つかのように蛇腹剣を持っているというアンバランスな組み合わせに俺は心当たりがある。


 そう、蛇腹剣次元のMVPプレイヤー……【マキ】だ!

 通称パジャマロリの【マキ】はこれまでの次元戦争で一番顔を会わせたプレイヤーだが、明確な敵として対峙したのはスキルもまともに揃っていなかった一番初期の次元戦争だけだ。


 今ここでぶつかり合えば激戦が繰り広げられることになるだろうし、負けるのは論外だが勝ったとしてもこっちも致命傷になるだろう。


 「そうだよねっ!

 弱々ザコザコの牛乳パフェお兄さんと違って、変態お姉さんは今一位だもんね~

 うちも負ける気はないけど、もう少しゆっくりしたあとで戦いたいよ~」


 「いや~、二人とも戦う気満々でそんなこと言っても信憑性なんてないですよ!?

 そもそもこの次元戦争って別に相手のプレイヤー倒さなくてもいいんですよ!?」


 ボマードちゃんがなんかわめいているが、俺はパジャマロリが纏う闘争心に当てられていて自分を抑えきれそうにない。

 

 「【包丁戦士】さん、さっきまで慎重に行こうとか言ってたばかりじゃないですか!

 いや~、言ったそばからこれって狂人としか言いようがないですよ……」


 俺はボマードちゃんの制止を振り切って小川を駆けていき、腰に提げていた包丁を手に取ると対岸のパジャマロリへ振りかざした。

 首もとから腰にかけて切り裂く斬撃……袈裟斬りを舐めるように繰り出し、パジャマロリの命を刈り取りにいく。


 そんな俺の攻撃をパジャマロリは身体の大きさに不釣り合いな蛇腹剣を振り回し、鞭のようにしなる特殊な軌道で俺の包丁を止めてきた。

 

 へぇ、挨拶代わりとはいえ、やるじゃないか。

 やっぱりMVPプレイヤーの歯ごたえはまるで別格のメインディッシュだな!

 はははははっ、テンション上がってきたぞ! 







 テンションが上がったり、狂ったりする……


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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