658話 部隊編成50(挿絵あり)
【ディメンションバトル】
【【1位 包丁次元】VS【4位 ピッケル次元】VS【6位 蛇腹剣次元】】
【勝利条件 【神殿】の完成】
【異次元の風が吹き荒れている】
【包丁が血を求める】
【ピッケルが硬き意思を打ち砕く】
【蛇腹剣が激しく取り巻く】
【Duel Start!】
【ゲーム運営からのアナウンス】
【今回の次元戦争で包丁次元が一位になった場合、ピッケル次元及び蛇腹剣次元の世界からリソースが搾取されます】
リソースの搾取っ!?
これがゲーム運営プロデューサーが言っていた【完成に近づく】ということに繋がるんだろうか……?
俺にとってはデメリットは無さそうだが、一方的に搾取される可能性のあるピッケル次元と蛇腹剣次元は混乱していることだろう。
「いや~、私も混乱してますよ!?」
まあ、ボマードちゃんはそうだろうな。
「当然混乱ですよ、生産プレイヤーなら!
こんな情報を聞いて混乱しないプレイヤーは【包丁戦士】さんくらいですよ……」
【釣竿剣士】もかよ……
というか、これって俺がおかしいのか?
……先にゲーム運営プロデューサーから情報を聞いていたから動揺が少ないだけだと思うが、俺の精神性を疑うのはヤメロォ!
まあ、ピッケル次元と蛇腹剣次元はリソースを奪われる可能性があるが、逆に包丁次元が負けたら一位の座を剥奪されるからな。
それ自体がデメリットとなっているんだろう。
相手はピッケル次元と蛇腹剣次元だが、それぞれの次元のMVPプレイヤーについては何度か共闘したり敵対したりしているのである程度手の内は把握できている。
だが、今回は小規模ながら人数が増えているし、そもそもメインが戦闘じゃない。
勝敗がどう転ぶかは誰にも分からないだろう。
「なんだこれ!?」
「急に出てきたぞ!?」
「虫眼鏡ですよね、これ?」
なんだなんだ!?
次元戦争が開始してからモブプレイヤーたちが騒ぎ始めた。
何に騒いでいるのかというと、俺たちの拠点に人の身長ほどの巨大な虫眼鏡がどこからともなく出現していたのだ。
地面に突き刺さるように埋まっている虫眼鏡だが、誰かのチュートリアル武器ってわけじゃなさそうだ。
「あっ、これっ、そのっ、ええっと……アイテムが……」
コミュニケーション能力に乏しい【検証班】の【ドライバー修理人】がその辺に落ちていた石を虫眼鏡にかざしていた。
何を伝えたいのか分からないので近づいて実際に見てみると……
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普通の石(イベント限定)
レア度:0
品質:低
耐久度:50/100
石。
詳しい区別は存在するが、石であるという事実は変わらない。
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「んあ?
どうやらアイテムの詳細が見れるらしいな。
他のゲームだとプレイヤーにデフォルトでついてる能力だが、このゲームでアイテムの詳細なんてはじめて見た」
【軍刀歩兵】が言うように、このゲームで【鑑定】や【看破】など能力を見破るスキルというものはお目にかかったことがない。
だが、この巨大な虫眼鏡は擬似的にそれを可能にしてくれるらしい。
「ちょっとテンションあがってくるよな!」
「せっかくだし色々と見てみようぜ!」
「【検証班】の端くれとして、私はここで虫眼鏡について検証してみます……」
どうやらさっそく役割が1つ決まったようだ。
この次元戦争の特殊アイテムである虫眼鏡の機能を探る連中だ。
【検証班】に所属しているという女モブプレイヤーが前のめりで虫眼鏡に興味を持っているな。
「当然生産プレイヤーとして、魚を釣りに行きますよ!
兵站は戦争の基本ですから」
【釣竿剣士】は何人かのプレイヤーを連れて食料補給に行くようだ。
このゲーム、地味に空腹度がマスクデータとして存在しているらしいので長時間何も食べないとステータスにデバフがかかっていくからな。
大人数いるので食料に特化した部隊も必要だよな。
「んあ?
じゃあ俺たちは【神殿】ってやつの材料になりそうな素材でも集めにいくか。
集めるのは石とか粘土とかだろう」
【軍刀歩兵】は無難に【神殿】の素材を集めに行くようだ。
こいつは【大罪魔】を降臨させるための神殿を作った経験があるからな。
ある意味では今回の作戦の第一人者となり得るかもしれない。
頼りにしてるぞ!
「【包丁戦士】さん、私たちはどうしましょうか?
いや~、私はここで歌っていてもいいんですけどね!
でも、せっかくなら【包丁戦士】さんと行動したいですよ~!」
ボマードちゃんは溢れんばかりの巨乳を俺に押し付けながら甘えてきた。
なんだこの巨乳は!俺への当てつけか!
断崖絶壁の俺の胸とは天と地ほどの差があるバストサイズだからこそ、自虐的になってしまう。
なので、八つ当たりでボマードちゃんの胸を揉みしだいて怒りを発散させていく。
「あぁんっ、【包丁戦士】さん激しいですよっ!
いや~、大胆ですね~!!!」
……ふぅ、落ち着いた。
とりあえずボマードちゃんと俺は他の次元のプレイヤーでも探すか。
他の次元の拠点とか動きを把握しておくと後々役立つかもしれないからな。
どうせプレイヤーキラーとして悪名高い俺は人望のないので、ほとんどのプレイヤーは別の部隊に付いていっているからな。
せっかくだし、どこの部隊でもやってない役割を俺とボマードちゃんで果たしてやろうじゃないか!
「それでこそ【包丁戦士】さんですよ!
いや~、【包丁戦士】さんとのデート楽しみですね~!」
……こいつっ、俺の話ちゃんと聞いてたか?
あまりの場違い発言に暗雲が立ち込めてきたように感じてしまった。
先行きが若干不安になってきたぞ……
……。
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