657話 次元戦争前の顔合わせ50
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はゲーム運営プロデューサーの山伏権現から通達があったように次元戦争が開催される。
ただ、いつも俺を次元戦争の舞台まで導いていた【菜刀天子】がいないのでどうしたらいいものか途方に暮れていた。
周りを歩いてみたり、包丁を弄ってみたりしたが特に変わりはない。
そうして色々と試しているうちにウインドウ画面に変化があることに気がついた。
【上位権限】という項目が点滅しているのだ。
あきらかにこの項目を選べという意志がひしひしと感じられるので、それを押すと「【上位権限】【Battle field】展開!」という文字が現れた。
……それをポチポチと押してみるが変化がない。
いや、【菜刀天子】は確かこの文言を叫んでいたな?
つまり、口に出さないと起動しないということか。
それでは気を取り直して……
「【上位権限】【Battle field】展開!」
俺は包丁を天に掲げて、包丁から力の奔流である光を煌めかせ始めた。
そして、その奔流に呑み込まれるようにして俺は天子王宮から姿を消していったのだった……
【特異次元 アネイブル】
そのアナウンスが流れたあと俺は見慣れたような光景が広がる場所に立っていた。
周りには樹木でできた建物が建ち並んでいる。
俺がこのゲームで最も時間を過ごした新緑都市アネイブルに酷似している。
アナウンスでもアネイブルって言ってたしそれは間違いないんだろうな。
ただ、酷似しているってだけで細部が俺の記憶とは違う。
所々に川が流れていたりして、俺が知っている新緑都市アネイブルより田舎っぽい。
俺がよく見ているアネイブルは都市とついているだけあって樹木が建ち並んでいる割には近代的でもあるのだ。
この光景を見るのは別にはじめてではない。
俺が参加した一回目の次元戦争では、ここと全く同じ舞台に降り立った。
だから始めてではないが懐かしさは感じてしまうな。
そんな感傷に浸っていると俺の近くに人影が次々と降り立ち始めた。
その数、約50人!
これまでの次元戦争では1つの次元につき1桁の人数しか参加できなかったが、急に規模が大きくなったな!?
次元戦争も戦争という名前に相応しいようにアップデートしていっているのだろう。
たしか前に【菜刀天子】も次元戦争はテスト段階って言ってたし、今後も規模を大きくしていくのだろうな。
その50人ほどのメンバーを見てみると、基本的にはモブプレイヤーばかりだった。
初心者に毛が生えたようなレベルのプレイヤーもいれば、中級者と言ってもいい練度の者もいる。
明らかに戦闘に不馴れそうな気質のやつもいるが、今回は生産系統の次元戦争らしいから問題はない。
むしろそういうやつの方が案外活躍してくれるかもな!
だが、別にモブプレイヤーだけがここにいるわけではない。
俺が知っている2つ名持ちのプレイヤーも何人か混ざっていた。
「当然ですよ、生産プレイヤーなら!
生産活動なら任せてください!」
まずは頭に青色の花飾りをつけた青色の上着を羽織った大学生くらいの少女、【釣竿剣士】だ。
日常的に生産プレイヤーを自称してるくらいだから、今回のイベントに選ばれていなかったらしょげていたかもしれないな。
下手すると逆ギレして釣竿を振りかぶりながら俺に襲いかかってきたかもしれないと考えると末恐ろしいものだ……
「とうとう私も次元戦争デビューですよ!
いや~、【包丁戦士】さんが全然私を呼んでくれないからこんなに遅い出番になっちゃったじゃないですか~
イケずですよね~そういうところも好きなんですけど!!!」
次は初期装備であるタンクトップを頑なまでに着用し続ける頭お花畑プレイヤーのロリ巨乳、ボマードちゃんだ。
身体がデバフ状態で満足に動かせないボマードちゃんに精密作業である生産活動を求めるのは酷なので、他のプレイヤーのモチベーションを上げるためにアイドル活動でもしてもらうか?
それかジェーライトに変わってもらって戦闘でもしてもらうのもいいけど。
「んあ?
狂巫女様には申し訳ないが、教祖の【黒杖魔導師】さんが来れなかった。
だから、俺が今回いるクラン【包丁戦士狂教団】のメンバーを取りまとめて貢献するつもりだ」
読者の皆にはあまり馴染みがないかもしれないが、この殺意を全身から放っている大正ロマン風の服装をした男は【軍刀歩兵】だ。
ability【現界超技術】の保有者である【黒杖魔導師】が作った俺のファンクラブクラン【包丁戦士狂教団】のサブリーダーであり、【黒杖魔導師】の忠臣である。
俺のプレイヤーキル技術に憧れて【包丁戦士狂教団】に入ったらしいが、プレイヤーキルの腕前はもちろんのこと今回のイベントで役立ちそうな生産技術も持っているやつだ。
包丁次元で開催された生産イベント【【菜刀天子】の品評会】で十位にランクインしていたからな。
今回のイベントで役立ってくれることに期待しよう。
「えっ、あっ、その……」
あとは【検証班】にいる生産プレイヤー【ドライバー修理人】か。
こいつは今まで全く絡んだことが無かったが、【検証班長】から名前は何度か聞いたことがある。
こいつは普段から裏方に徹しておりレイドバトルには全く参加していなかったし、俺には【槌鍛冶士】がいたから世話になることはなかったが【検証班】では有力な生産プレイヤーらしい。
ただ、コミュニケーションに難ありとのこと。
引きこもりプレイヤーの【骨笛ネクロマンサー】は案外コミュニケーションを取れるタイプだったが、こいつはダメだな……
なんとかして上手く動いてくれるといいんだが……
そんな感じで次元戦争開始前の顔合わせ時間を過ごしていった……
……。
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