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656話 プロデューサー、次元戦争告知を

 【Raid Battle!】


 【包丁戦士】


 【包丁を冠する君主】


【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】

【サブ】ー【次元天子】【上位権限】



 【聖獣を担うが故に】


 【深淵へ誘い】


 【聖邪の境界を流転させる】


 【会うは別れの始め】


 【合わせ物は離れ物】


 【産声は死の始まり】


 【この世の栄誉は去ってゆく】


 【故に永遠なるものなど存在しない】


 【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】


 【ああ……この世は無情である】




 【ワールドアナウンス】


 【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】


 【レイドバトルを開始します】



 はい、今日も元気にログイン!

 俺が玉座に座りながらログインすると、目の前に一人の人物の影が現れた。


 山伏のような姿とサラリーマンのような姿をまぜこぜにしたカオスな見た目のやつだ。

 基本は山伏衣装なんだが、ネクタイをしていたり、キッチリメガネをキメて、髪は七三分の状態でワックスで固めているようだ。


 この時代錯誤な服装をしているやつは前に……生産イベントで一度見たことがある。

 ゲーム運営プロデューサーの【山伏権現】だ。


 【どうも、ゲーム運営プロデューサーの山伏権現です。

 まずは、ここまでこのゲームを楽しんでいただけたようで、プロデューサーとして感謝を!

 これからもこのゲームをよろしくお願いします!】


 【上位権限】レイドボスたちに知識を授けたその本人だが、よほどのことがない限りプレイヤーには直接的関与なんてしてこなかった。

 それなのに今俺の前に現れたのには何か理由があるんだろうか。



 俺はジト目で山伏権現を睨みながらその意図を想像する。

 そんな俺の無愛想な態度に山伏権現は苦笑しながら現れた理由を説明し始めた。



 【他の次元だと次元天子に就任したプレイヤーって聖剣次元のランゼルート君だけなんだよね。

 本当はレイドボスの次元天子から告知をするんだけど、今回は居ないみたいだからこのゲーム運営プロデューサーの私、山伏権現が告知に来たよ!はい拍手!】


 わー、パチパチパチ。


 俺はゲーム運営プロデューサーというやつに媚びをうった。

 他のやつが拍手!とか言ってもそれに乗らなかっただろうが、権力に屈して拍手してしまったのだ。

 これがプレイヤーの性だな。

 このゲームはプレイヤーに人権がないので、絶対的権力者に好かれることはメリットが大きいのだ!

 

 【拍手どうも!

 そんな【包丁戦士】君にお知らせだよ、次元戦争の時間だ!】


 とうとう来たか。

 この包丁次元は一位になったが、別にそこで終わりというわけじゃない。

 聖剣次元のランゼルートが一位を保持し続けたように、一位になった後でも戦いは続く。

 例外は【菜刀天子】がやろうとしていた【千年王国計画】を実行して次元戦争という軛から逃れることだが、俺はその【千年王国計画】にいまいち乗り気じゃない。

 だからこそ【菜刀天子】を最優先で討伐したんだからな。


 そういえば次元戦争ってサーバー間対決をしているわけなんだが、どんな意図があるんだろうか。

 せっかくのゲーム運営プロデューサーなんだ、答えてくれてもいいんじゃないか?


 俺がそんな疑問を皮肉混じりで飛ばすと、山伏権現は営業スマイルを浮かべながら口を開いた。


 【たしかに君は【上位権限】を得ているけど、事が起きるまでは私から説明するのはフェアじゃないからね。

 でも、せっかくだから意味深なことだけは教えてあげようかな。

 「【上位権限】プレイヤーが勝てば完成に近づく」この言葉を覚えていてくれたら時が来れば分かると思うよ。

 しかも、その時はもう迫っている……かもね!】


 勝つっていうのは次元戦争に……ってことでいいんだろうな?

 つまり、【上位権限】を手に入れたプレイヤーが勝利することで得られる何かがあるんだろう。

 ということは、聖剣次元のMVPプレイヤーのランゼルートも何かを得たのか?


 あいつもプレイヤーで、【上位権限】を手に入れて、次元戦争に勝利しているはずだからな。


 【彼には元々その権利が無いからね。

 権利がなければその先もないよ。

 上がってはいけない舞台に上がってしまっている代償だね……

 彼もそろそろ懲りてくれるといいんだけど、中々頑固で私も手を焼いているんだよ】


 あー、ランゼルートは純粋なプレイヤーじゃないからか。

 あいつは元々このゲームの住人だから、いくら【上位権限】を保有していても次のステージには進めないということだろう。

 ランゼルートが聖剣次元の他のプレイヤーに討伐されていないとあの次元は行き詰まるという結論になる。


 いくら強くて立派なプレイヤーがトップにいても、そいつが進行の妨げになっているとなればザマァないな。

 正義が必ず勝つというのも眉唾物ってことだ。


 【それでも【包丁戦士】君とランゼルート君がタイマンで直接対決したらランゼルート君が勝つだろうから、負け惜しみのようにしか聞こえないよね】


 ぐっ、痛いところ突いてくるじゃないか……

 たしかに前に戦った時の感じだととてもじゃないが勝てたものじゃない。

 あの時は【菜刀天子】、【ガルザヴォーク】、そして俺がいてもギリギリ負けてたからな。

 【ペグ忍者】が生き残ってなかったら普通に負けてたし……

 色々な意味で別格なランゼルートに今のままでは勝つことは出来ない。


 【でも、安心していいよ。

 今回はランゼルート君が相手じゃないからね。

 君も何度か戦ったことのある相手さ!】


 まあ、全ての次元のプレイヤーとは戦ったことことがあるからな。

 その中でも一回しか戦ってないのは、ステッキ次元と十字架次元、釣竿次元に聖剣次元だ。

 山伏権現が【何回か】と言っているからこの四つの次元以外の次元と戦うことになると想定しておこう。


 【ルールは【とあるもの】の完成だよ。

 イベント限定特設次元に広がるエリアで素材を集めて、先に完成させた方が勝利という今までとは変わった形式だね!

 【菜刀天子】は戦闘系統のイベントばかり要求してきたから多数決で戦闘系統の次元戦争ばかりに決まっていたけど、今回からは【菜刀天子】の票が無くなった分バランスが崩れたからね。

 生産系統の形式で勝敗を競ってもらうよ。

 うん、実に私好みだ!】


 ほう、ここにきて一風変わった決着方法だな……

 面白いとは思うが、惜しむべくは【槌鍛冶士】がいないことか。

 あいつがいれば百人力……というかチート性能だったからな。

 

 【選出するメンバーはこちらで面白くなりそうな感じで選ばせてもらうよ。

 当日までドキドキしながら待っているといいよ】


 そう言い残して山伏権現は幽霊のようにすーっと消えていったのだった……





 ……。


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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