653話 図書館への道中
【Raid Battle!】
【深淵域の管理者】
【エルル】
【???】【上位権限】【ボーダー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【深淵へ誘い】
【冒険者を堕とす】
【深き真価を見極め】
【境界に流転する】
【封印された夢想が解き放たれし時】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日もアビスの方にログインしてきた俺だが、ルル様から聞き出した新施設である【図書館】とやらに行ってみようと思う。
場所は【深淵奈落ー浅層 ルルイン】のようだ。
中層やさらにその奥じゃなかったことには驚いたが、俺としては深淵奈落の中でも歩き慣れている【深淵奈落ー浅層 ルルイン】にあってくれてホッとしている気持ちもある。
【深淵奈落ー浅層 ルルイン】はキリゲーと一緒に色々なところを散歩したからな。
大体の場所のマッピングは出来ているし、危険な場所も一定程度は把握できているから移動自体はスムーズにいくだろう。
【ҐҐҐҐҐҐҐҐҐҐҐҐ♪】
ご機嫌な様子のキリゲーを伴いながら俺たちはルル様が教えてくれた【図書館】を目指す。
考えてみるとキリゲーとゆっくり歩くのも久々だな。
ある程度育ってきたとはいえ、放置しすぎなのは申し訳ないな。
俺だって血も涙もあるからな、自分で育てたキリゲーに構ってやれないことに責任を感じることもある。
【菜刀天子】討伐の時にはこのキリゲーの細胞が決め手になってくれたからな。
【図書館】に着くまでくらいはゆっくり寄り添ってやるとしよう。
黄金色に輝く艶やかな毛並みを撫でてやると機嫌が良さそうにして、足取りを軽くしながら近くの廃墟に突っ込んでいって1つの建物を崩壊させた。
こらこら、寄り添ってやるとは言ったが誰も廃墟を壊せなんて言ってないからな……
相変わらずこのキリゲーはわざとなのか、真面目なのか分からない挙動をするよな。
これも愛嬌と言われたらそれまでだが、そろそろ矯正してやらないとダメか……
どうも俺はこのキリゲーに対して甘すぎるような気がするんだが、治そうと思っても治せるようなものじゃないんだよなぁ。
そうして廃墟群を歩いていくと、ようやく【図書館】にたどり着いた。
その【図書館】は黒く分厚いブロックのようなもので作られた建築物で、建物の周りには円錐の形をした何かが規則的に動き回っており、この建物が周りの廃墟たちとは一線を画したものであると主張しているようだった。
そして、建物自体からも深淵の黒い霧が感じられ、この建物に入る資格の無い者を弾き出そうという意志が感じられる。
こういう感覚は理屈ではなく感覚でなんとなく分かるものだ。
このプレイヤーに人権の無いゲームの中で一番信じられたのは自分自身の直感だからな、変に疑わずその感覚に頼るのが俺らしいとも言えるだろう。
……試しに手を伸ばしてみた。
これで俺に何かがあったらまだここに来るには早かったということなのだろう。
だが、建物に触れてみたが俺の覚悟に反して特に異常が発生しなかった。
抵抗感があるどころか、妙に俺の身体に馴染むような……安心感すら覚えてしまうほどだ。
この【図書館】から拒絶されずに受けいれられていると解釈しても良いだろう。
つまり、最低限俺にはこの建物に入る資格があるということだな。
ちなみにだが、キリゲーは胴体から突入しようとしていたが、この【図書館】に働く不思議な力によって弾き出されてしまった。
まるで見えない壁にでもぶつかったかのように、【図書館】から一定範囲に近づくと進めなくなるようだ。
俺と離れるのが嫌なのか、色々な方向から侵入を試みるキリゲーだったがその努力も虚しく【図書館】への侵入は実現しなかった。
【図書館】の目の前でキリゲーを見守っていたが必死に俺の方に来ようとしている姿は健気だなと思ってしまった。
……まあ、来れないなら置いてくけどな!
なんでキリゲーが弾かれて俺が素通り出来るのかは気になるな。
身体スペックはキリゲーの方が圧倒的に上だし、完全なレイドボスになれる将来性もキリゲーの方が魅力的に見える。
だからこそ考えられるのは、プレイヤーしか入れない、【上位権限】持ちしか入れないなど理由は考えられるが、俺の他にプレイヤーをここに連れて来ないと検証すら出来ないからな。
ボマードちゃんはデカブツムカデが保有していた【失伝秘具】である【天地照堕盾】の効果で深淵奈落には来れるみたいだから、今度連れてきてみよう。
ただ、ここに来るのに【Bottom Down-Online The Abyss】をインストールする必要があるのならその目論みは崩れてしまうがな。
先導する俺がいれば来れるとかいう仕様だったら楽だが……
……。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】