65話 【菜刀天子】さんのマーベラス解説教室
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
【深淵奈落】でのアレコレが濃すぎて久しぶりに思える死に戻りだが、俺があそこにいたのは1日だけ……だ。
あっ、そうだ。
【菜刀天子】~、元気か~!
なんだか【菜刀天子】が懐かしく思えたので声をかける。
一応ログインし直す度にここに戻ってくるからよく会うといえば会うんだが、最近はじっくり話す機会も無かったからな。
たまには腰を据えて向き合ってやるとするか。
「なんですか唐突に……
底辺種族【包丁戦士】は私に対しての扱いが軽すぎませんか?
もう少し敬意を持ってくれませんかね、私は【上位権限】持ちのサポートAIである【次元天子】ですよ」
あー!
そういえば、今まで全く気にしてもいなかったけどお前の立ち位置ってぶっちゃけどんな感じなの?
凄そうな権限とかジョブみたいなの?とか並べてるけど、それぞれどういうものなのかよく知らないから、お前に敬意を払おうにもよくわからんから気持ち的に微妙なんだよな(知ったところで敬意を払うかどうかは別だが……)。
「ふむ……そう言われてみるとその通りですね。
底辺種族の考えにしては珍しく一貫性がありますね。
いつもなら思考が、夢遊病のように勝手に散らかっていってますから……」
凄い言われようだな俺……
俺自身は一貫した行動を取っているつもりなんだが?
俺の言葉を聞いた【菜刀天子】が肩を竦めて呆れた表情をする。
「発言した次の瞬間矛盾した行動をとる底辺種族が何を言うのですか?
……まあ、自覚がないのならともかくは言いません。
私の立ち位置について特別に教えてあげましょう。
何から聞きたいですか?」
そうだな……
とりあえず【次元天子】についてだな。
天子というのは前にも説明したから省くが、俺の知っている概念とは違うっぽいからな。
「【次元天子】というのは、次元を管理する君主のようなものです。
それぞれの次元に1人いて、各々が思うように世界を発展させていく天命を受けています。
私は基本的に放任していますが、他の次元では【次元天子】を打倒しプレイヤーがその座に就いたり、プレイヤーと共にレイドボス攻略に挑んでいる【次元天子】もいるようですよ。
……訳あって直接レイドボスには攻撃できませんけどね、精々壁になるくらいでしょうか。
私は底辺種族のために身体を張るなんて死んでも御免ですが……」
敵対ルートとか、共闘ルートとかもあるのね。
【包丁次元】はほぼ放任なんだろうけど、どちらかというと共闘ルート寄りなんだろうな。
一応気紛れで攻略のヒントとかくれたり、次元戦争で共闘(?)したりもしたからな。
……最終的には俺が生け贄に捧げたのだが。
というかプレイヤーが【次元天子】になることもできるのね。
【次元天子】になると何か良いことでもあるのだろうか。
特典とかあったりする?
「……ありますね。
分かりやすいものですと、ステータスの向上です。
基本スペックからかけ離れた力を手にすることができます。
それと1部レイドボスから手に入れたスキルの制限を解除して使用できる権限。
他にもありますが、【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】。
……やはりロックがかかってしまっているようなのでこれ以上は話せませんね」
あっ、それ意図的にやってた訳じゃないのね。
どうやらシステム的な制限で自動的にかかるようなものらしい。
……あれ、あの竜人ギルドマスターは意図的に解除してなかったか?
プレイヤーたちに情報を自分の意思で渡せるかどうか……【次元天子】との違い……
種族……ジョブ……天命……?
……何か閃きそう!?
そう思ったとき、【菜刀天子】から苛立ちを感じさせるような声がかかった。
「あの、聞いていますか?
次は【上位権限】についてです。」
くそ、何か閃きそうだったのに完全に考えが霧散してしまったぞ!?
まあ、上の空で話を聞いていた俺が今回に関しては全面的に悪いので口には出せないが……
「キチンと反省してくださいね。
【上位権限】とは世界改変に関わる権限ですね、この権限を持つものは先ほどの【次元天子】の例とは違い、1つの次元に幾つもいます。
この権限を持つもの同士の勢力バランスが次元に大きな影響を与える……と言われていますので、互いに牽制しあい時には抗争も起きたりしています。
底辺種族たちが介入する前【Bottom Down-Online】……【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
だめですね、ここにもロックがかかっていますか。
とりあえず、私も【上位権限】を持つ他の勢力と戦っているということだけ覚えておいてください、その者たちに底辺種族が会えるのは当分先だと運営から聞いているので頭の片隅にでも置いておくといいですよ」
……俺は頭を抱えている。
頭をぶつけたとかそういうのではなく、こいつに伝えたらいいのか分からない情報を昨日手に入れたばかりだからなぁ……
うーん、どうしよう。
まあ、いいか。
今日はやけに機嫌が良さそうだし(【包丁戦士】比較)、今伝えるのが穏便に済みそうだ。
あのー、昨日ですねー、おそらくなんですけどー、【菜刀天子】様のお知り合いみたいな人に会ったんですよー。(棒読み)
「その白々しい微妙な敬語は背筋に悪寒が走るので止めてください。
それで、私の知り合いとは誰でしょうか?
底辺種族でも会いやすい知り合いというと、リバティや呪符使い辺りでしょうか」
知らない名前だ。
俺が知らないだけなのか、他のプレイヤーも知らないのか分からないが、今後会う可能性があるやつらなんだろう。
だが、俺が会ったのは……
ルルっていう堕天使タコです。
「えっ、私の聞き間違いですか?
……もう一度言ってください」
俺が会ったのは……
ルルっていう堕天使タコです。
「あのタコぉぉぉぉぉ!?!?
まだ生きていたのですかぁぁぁぁああ!!!!
【渡月伝心】んんんんん!!!!!!」
こめかみをピクピクさせて、顔を真っ赤にしたり、真っ青にしながら腰に提げていた中華包丁を取り出し、銀光の円環を刃先から発動させた。
いきなり情緒不安定になりすぎてない!?
次元戦争でぼろ雑巾になっていたときですらこんなになってなかったのに……
困惑していた俺は、情緒不安定な【菜刀天子】の奇行に巻き込まれ念入りに千切りになった後に光の粒子となって死に戻りすることとなった。
解せぬ!
タコォオォォオォォ!!!
【Bottom Down-Online Now loading……】
ブックマークが50人突破しました!
記念に54話の後書きに竜人ロリのイメージイラストを置いておいたので
もしよろしければ見てみてください。
今後とも継読、感想ともよろしくお願いします!