637話 外骨格ネクロマンサー
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日の中央突破作戦が失敗したからきっと今日も【検証班長】は何か仕掛けてくるだろう。
とりあえず激戦区に向かうか……
というわけでやってきました沼地エリア……【無限湖沼ルルラシア】。
そこでは昨日の作戦とはまた違ったものが繰り広げられていた。
「【フレイムギア】!
今日こそ攻めきるよ~!」
「オジサン、このポジションで固定なのかねぇ……?
たまには自由に遊撃とかしてみたいところだけどねぇ」
中央にいるのは【リフレクトミラーディフェンダー】ことリデちゃんと、【短弓射手】。
それと何人かのクラン【検証班】のメンバーたちだ。
ここまでは昨日と同じだがこいつらを妨害する戦力として動いている深淵獣側のプレイヤーも今日はいた。
「ボスのところまで行かせるわけにはいかないナァ!
イャ~、今は宿主様の身体を使わせてもらっているがそれでも深淵種族としての誇りを忘れたわけじゃないゾォ!」
「俺っちもいるッスよ!
ボマードちゃんをみすみす死に戻りさせたら先輩に怒られるッスからね!」
意識がそもそもプレイヤーのものじゃなかったり、動機が若干不純だったりするがとりあえず頼れるプレイヤーのボマードちゃんと【バットシーフ】後輩だ。
素のボマードちゃんならともかく、ジェーライトが身体を好き勝手使っている状態ならそこらのプレイヤーには遅れはとらないだろう。
【バットシーフ】後輩も順当に戦えれば強いプレイヤーではある。
それに、深淵獣も味方しているからここはこいつらに任せても良さそうだ。
というわけで俺はさらなる戦場へと移動していく。
戦線は一つではないのだ!
俺が次に来たところでは【トランポリン守兵】お嬢様と【風船飛行士】が、【骨笛ネクロマンサー】のabilityとスキルの組み合わせで生み出された骨によって強化された深淵獣の群れと戦っていた。
「ふひひっ、あてぃしの【堕音深笛】で外骨格が新たに装着された深淵獣たちは一味違いますよぉぉぉ……
あてぃしはこういう戦場が得意みたいですぅぅぅ!」
「【骨笛ネクロマンサー】様を相手にするとここまで厄介なことになるとは思っておりませんでしたわ!
レイドボス相手ではありませんのに、ワタクシは守るだけで精一杯ですわ!」
「ちょっwww
なんでそんな深淵獣を手懐けてるんだよwww
チート乙なんだがwww」
なんか【骨笛ネクロマンサー】が覚醒してた。
……というか【骨笛ネクロマンサー】はいつも新しい環境になる度に新技を披露してるよな。
元々集団戦で強みを発揮するようなabilityやスキル構成になっていたが、深淵獣を強化して戦うとは俺としても予想してなかったぞ。
「流石にレイドボスとまではいきませんが、ゲートキーパー並みまで強化されていましてよ!?」
「ワロエナインゴwww
……ま、オレと【トランポリン守兵】そして俺たちのクランメンバーで取りかかればなんとかなんだろwww
トッププレイヤーの意地ってやつ見せてやろうずwww
スキル発動!【竜鱗図冊】!
ability発動!【銀盃羽化】!」
「スキル発動!【近所合壁】ですわ!」
【トランポリン守兵】お嬢様と【風船飛行士】はそれぞれ十八番とも言えるスキルを発動してきた。
【トランポリン守兵】お嬢様が空中に展開したトランポリンを跳ね回るように【風船飛行士】の作り出した風船偽竜が飛び、ブレスを周囲に撒き散らしている。
一点集中攻撃ではないからかそれだけで外骨格を纏った深淵獣たちが倒されることはないが、全体的に弱ってきている。
そこを二人のクランメンバーたちが狙い、各個撃破していっている。
考えたな……味方が多いんだから全体攻撃で総ダメージを増やした方が効率的ってことだな。
俺には出来ない芸当だ。
認めるのは癪だが、流石は【風船飛行士】と【トランポリン守兵】お嬢様だな。
「ふひひっ、これってあてぃしピンチってやつですかぁぁぁ……?
ヤバイですぅぅぅ……
どうしましょうかぁぁぁ……!?」
急に慌て出す【骨笛ネクロマンサー】だが、こいつは集団を動かすわりに引きこもりで、あまり人と関わらないからか急展開に弱い。
【バットシーフ】後輩にも言えることだが、俺のクランメンバーはそんな感じのやつが多い気がする。
動揺した【骨笛ネクロマンサー】は深淵獣をなんとか操ってプレイヤーたちを撃退しようとしているが、そんな状態で行った指示では深淵獣も効率的に動くことは出来ずどんどん圧されていっている。
……ここだな!
スキル発動!【深淵顕現権限Б】!
「おいおいおいwww
ここで【包丁戦士】かよwww
面倒くさすぎワロタwww」
「……アルベー様の力ですわね」
俺はしれっと連れてきていた【ハリネズミ】の一人を生け贄に捧げて深淵細胞を励起していく。
俺が今回励起したのはアルベーの力だ。
右目が漆黒に染まり、目の中に翼が宿る。
そして、鏡に姿を晒すかのように力の流れを目視していく。
この状態から……スキル発動!【阻鴉邪眼】!
俺はアルベーの力を最大限に活かすためにデバフサークルを生み出し、外骨格を纏った深淵獣たちと戦うプレイヤーを囲み込んでいく。
「身体がっ!?」
「思ったように動かないっ!?」
「うわああはあああ!?」
思わぬ方向から弱体化をくらってしまったプレイヤーたちは深淵獣との力勝負に敗北していき、先ほどの動揺が何処に行ったのかというほど深淵獣たちが盛り返しはじめた。
「ふひひっ、【包丁戦士】さん来てくれたんですねぇぇぇ……
あてぃしはもうダメかと思いましたよぉぉぉ……」
実際負けかけてたからな……
まあ、トッププレイヤー二人とそのメンバーたちを相手にここまで立ち回っていたんだからむしろ大金星ですらあるから責めることはしないがな。
「くそwww
覚えてろよwww
お前ら絶対潰してやるからなwww」
「……ほどほどに頑張りなさってくださいまし?」
【風船飛行士】は退路を塞ぐ深淵獣たちを蹴散らしながら撤退していき、俺が現れてから少し様子がおかしかった【トランポリン守兵】お嬢様はその後に続いて退散していったな。
今回はなんとか間に合ったが、この流れからするとそろそろ機戒兵側よる全面包囲が始まりそうな予感がする……
本格的に不味いぞ!?
俺の身体は一つしかないんだからな!
……。
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