634話 弾幕シューティング
【Raid Battle!】
【荒野の自由】
【????】
【機戒天使】【上位権限】【保安官】
【螺旋のように回る歯車は輪廻の象徴】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【罪を裁き悪を挫く】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【罪を迎え撃つ雌伏する弾丸は】
【増長する悪意を討ち滅ぼす】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日はあの後も【バットシーフ】後輩と作戦会議していた。
今日はその実行を行おうと思う。
で、【バットシーフ】後輩はもう準備完了してるんだよな?
「抜かり無いッスよ!
これを見てくださいッス!」
【バットシーフ】後輩はポケットから銅色の鍵を取り出して柵を解除していく。
そしてそのまま俺の柵も解除してくれた。
よしっ、ここからが勝負どころだな。
俺たちは事前の取り決め通り扉から廊下へと飛び出した。
そして駆け抜けていく。
ここまでは前に試したことと同じだ。
だが、もちろんこのままではない。
同じことをしていたら結末は同じところに行き着くものだからな。
さあ久しぶりの出番だ!
スキル発動!【想起現像】!
俺はスキルを発動し赤色の砂を撒き散らしながら走っている。
だが、俺が使ったのはただ赤色の砂を生み出すだけのものではない。
砂が凝固していき、1つの形をとりはじめた。
俺が基本的に呼び出すのはキリゲーだ。
だが、ここは深淵の力を拒み続ける特殊な場所みたいだからな。
そんな中に深淵の力を振るうキリゲーを呼んだとしても力を発揮できないだろう。
だからこそ今回呼び出したのは……金色のシャチホコの姿を持った不完全な聖獣【カイ=フジン】だ!
「このシャチホコが先輩のテイムモンスターってことッスね!
カッコいいじゃないッスか!」
俺が呼び出した【カイ=フジン】の見た目に目を輝かせて全身を凝視している【バットシーフ】後輩には悪いが、じっくり観察するのは脱獄完了してからにしてもらおうか!
俺は【バットシーフ】後輩の手を握り引き摺りながら【カイ=フジン】の背中へと騎乗した。
【カイ=フジン】は空中でのホバリングを継続しながら俺の指示を待っているようだ。
それもそのはず、この【カイ=フジン】は不完全な復活をしたせいで意思というものが希薄な状態となっている。
だから聖獣でありながら自発的に行動することがないのだ。
というわけで俺からの命令だ!発進!突っ切れ!
俺は【カイ=フジン】へ簡素な指示を出した。
ただただ前進していくというものだが、この廊下は他の部屋に入ることを諦めたのなら直線で進むのみのマラソンのようなものだ。
そんな道を俺と【バットシーフ】後輩はバイクに跨がるようにして聖獣である【カイ=フジン】を乗り物として運用し突き進んでいく。
「おおおおお!!!!
速いッス!速いッスよ!!!!」
底辺種族では出すことの叶わない猛スピードで爆走する【カイ=フジン】の乗り心地に興奮する【バットシーフ】後輩が非常にうるさいが、順調に進んでいく。
「あっ、いいもの見つけたッス」
しばらく進んでいくと少し遠目に出口のような光が見えてきた。
このまま直進していけば出られそうだな!
俺がそう安堵していると、そうは問屋が卸さないと言わんばかりに脳内に無機質なアナウンスが流れはじめた。
【Raid Battle!】
【監柵の機戒大猩々】
【レイドバトルを開始します】
うわっ、銅ゴリラだっ!?
俺たちの目の前に銅線を毛のように生やしたゴリラが立ち塞がった。
安全策なら一度後退なんだろうが、出口が見えてるんだ。
ここで退くのは何処か釈然としない。
あいつをかわして出口まで抜けろ!
立ち塞がった【監柵の機戒大猩々】は拳を俺たちに向かって突き出してきたが、【カイ=フジン】に乗っている俺が重心移動でギリギリ回避させると、【監柵の機戒大猩々】が後方に、俺たちは前に躍り出ることに成功した。
「や、やったッスよ!
これで脱獄ッス!」
ガッツポーズで喜んでいる【バットシーフ】後輩だが、前に出ただけで脱獄できたと考えるのは幾分か楽観的過ぎるぞ?
だからいつも戦闘で詰めが甘いって俺に言われるだ、自覚したほうがいいぞっ!……と!
俺は首を横に倒して飛翔物を間一髪でかわした。
後ろを見ると走りながら銅ゴリラが槍のような柵を次々に投擲してきているではないか。
飛んでくるものをかわしながら出口に向かうって弾幕シューティングゲームか?ついそう思ってしまった。
俺は後ろ向きになり銅ゴリラを目視しながら【カイ=フジン】を操りなんとか回避行動をとらせている。
「あっ、先輩っ!?
その……抱きつかれると照れるッス……」
このシャイボーイめ……
俺が前に乗っているため、後ろに座っていた【バットシーフ】後輩がそのまま前方を向いているため自然と抱き合うような形になってしまっている。
俺は【バットシーフ】後輩と抱きつこうが全く意に介さないが、この純情な野球学生はそうでもないらしい。
ま、俺は可憐な乙女だからな。
俺のような女に抱き締められたら照れるのも仕方ないというものか、ふっ!
抱きつきながらも俺は包丁の腹を使った受け流しで槍のような柵の軌道を変えていく。
おい、【バットシーフ】後輩!
惚けてないでお前も働けよ!
俺は色ボケしている【バットシーフ】後輩へ檄を飛ばしていく。
「わわわ、分かったッス!
ストックスロット1、【監柵の機戒大猩々】の投擲ッス!」
【バットシーフ】後輩は銅ゴリラの投げてきた柵に対してこちらからも柵を投げて対抗しはじめた。
流石にレイドボスと一般的プレイヤーではスペックの差があるので相殺とまではいかなかったが、軌道を変えることには成功している。
というかこっちから投げた柵はどこから取り出したんだ!?
「さっきから投げてきてるやつ、つい盗んじゃったッス!」
流石は俺が見込んだ後輩だ、色ボケしてても盗むところはきちんと盗んでいたのか……
いや、その姿勢でどうやって盗んだのか非常に疑問が残るところだが、【現界超技術】に理屈を求めるのは不毛か。
「ストックスロット2!先輩の受け流し技術!」
【バットシーフ】後輩は次にチュートリアル武器のバットを使って攻撃を受け流したようだ。
さっき俺がやったやつをそのままコピーしたってことだな。
銅ゴリラは投擲を繰り返しながら迫ってきているが、それでも俺と【バットシーフ】後輩による防御、そして【カイ=フジン】による回避によってなんとか引き離してとうとうゴール目前まで来た。
「よしっ、これで本当に脱獄ッス!」
俺たちは躊躇することなく、そのまま出口へと入っていった。
「えっ、【包丁戦士】っ!?」
「なんでそんなところから出てくるだよ!」
「おいおいおい!」
「あっ、【バットシーフ】もいるぞ」
俺たちが飛び出したところにはモブプレイヤーたちがのんびりと飲食を楽しんでいた。
俺たちが出てきたのはカウンターの奥にある扉で……そこは【荒野バー】だった。
oh!ノー!
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