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632/2206

632話 銅の雨

 【Raid Battle!】


 【荒野の自由】


 【????】


 【機戒天使】【上位権限】【保安官】



 【螺旋のように回る歯車は輪廻の象徴】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【罪を裁き悪を挫く】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【罪を迎え撃つ雌伏する弾丸は】


 【増長する悪意を討ち滅ぼす】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【レイドバトルを開始します】




 はい、今日も元気にログイン!

 今日も今日とて監獄の中からスタートだ。

 


 おい【バットシーフ】後輩、鍵を盗んだわけだがここからどうするんだ?

 前に一度この檻から出たことがあるなら周辺の情報とか持ってるんだろ?

 


 マッピングまでは期待していないが、せめて何が近くにあるのかは事前に把握しておきたいからな。

 何か見つける度にそっちに思考が回されるのはそれだけで時間のロスに繋がってしまう、脱獄という時間の限られた行動でそんなことを悠長にしている暇はないから知れることは知っておきたいというのは当然の帰結だ。


 「そうッスね……この柵の外では見ての通り看守の【監柵の機戒大猩々】が巡回してるッスよ!

 俺っちたちしかここにいないはずッスけど、この【機戒監獄】の決まったルートを回ってるッスかね?

 いつも同じ場所から来て同じ場所から出ていくッスから……」


 それだけ聞くとSFモノとかでよく出てくる警備ロボットみたいだな。

 つまり、【監柵の機戒大猩々】が出てった側とは逆に行けばすぐに鉢合わせることはないんだな?

 それは嬉しい情報だ。


 「俺っちもそう思って脱獄しようとしたッスけど、途中で道が繋がっているッス!

 だから逃げてる最中に正面から【監柵の機戒大猩々】が現れてそのままここに死に戻りされたッス……

 だからそれ以外には知らないッスね」


 なるほど……流石に一筋縄で脱獄とはいかないか。

 それなら、とりあえずこの柵から出てみるか!

 【バットシーフ】後輩の窃盗技術ならどうせまた鍵を盗み出せるだろうし、手数でマッピングしていくぞ!

 なんとかなるだろ!


 俺は断崖絶壁のような無い胸を張りながら【バットシーフ】後輩に無根拠な鼓舞をしていく。

 【バットシーフ】後輩は臆病なところがあるからな、先輩としてのちょっとした心遣いってもんよ。


 「先輩の根拠のない自信はこういう時に元気が出てくるッスね……

 いいッスよ!」


 そう言うと【バットシーフ】後輩は盗み取った銅の鍵を柵の外に手を出して外側から鍵穴に差し込み穴の中で捻ると、そのまま柵が開いていった。


 よしっ、次は俺の柵も開けろ!


 「了解ッス!」


 【バットシーフ】後輩は先程と同様に鍵を使用して俺の柵も開放した。

 ちなみに、この状態でログアウトは……



 出来ないみたいだな。

 おそらくこの【機戒監獄】から脱出するか、また死に戻りさせられて柵の中に戻ったらログアウト出来るようになるんだろう。

 じゃなかったら一度柵から出たことのある【バットシーフ】後輩は永遠にログアウトできないデスゲーム状態になっていたはずだからな。


 このゲームはプレイヤーに人権はないが、流石にリアルで命に関わることまではやってきていない。

 そこまでやってきたらもうお手上げだ。

 完全にこのゲームの運営プロデューサーは頭がイカれているってことになる。


 そうならないことを信じて俺たちは当初の予定通り【監柵の機戒大猩々】が出ていった方向とは逆の扉から外へ出た。







 扉から出るとそこには先が見えないほどのとてつもなく長い廊下が伸びていた。

 ……もしかしてこのとてつもない道を走破しないといけないんじゃないだろうな?

 

 とりあえず【監柵の機戒大猩々】が来る前に急いで進むぞ!



 俺はまるでマラソン選手になったかのように無心で走り続けている。

 ボマードちゃんと違って俺の胸部には走る上で空気抵抗を受けてしまうような、邪魔になるようなものはついてないからな!!!!

 颯爽と走り抜けることができるんだぞ!!!

 やったぜ!!!!!



 ……クソッ!




 そんな半分自己嫌悪に陥りながらも俺はただ廊下を走るのではなく左右の壁にも注意を払っていく。

 謎のパネルがついていたり扉のようなものがあったりするが、俺と【バットシーフ】後輩では操作も扉を開けることも出来なかったので、ただひたすらに廊下を駆けていく。


 「ひ~っ!!!

 先輩速過ぎるッスよ!?

 そのアバターの足の長さで俺っちより速く走れるのっておかしくないッスか!?」


 失礼な、これでもアバターの体型はリアル基準なんだぞ!

 

 「えっ、そうなんッスか!?

 意外というかなんというか……ッスね」


 ぽかんとした表情を浮かべながら走る【バットシーフ】後輩の顔を見るとどこか気が抜けてしまうな。

 この【バットシーフ】後輩は良くも悪くも純粋なやつだからな、飾り気の無い反応はそれだけで他人の気持ちを和ませることもある。

 この緊迫した場面で少し肩の荷が降りたような気がするからちょっとだけ【バットシーフ】後輩に感謝だな。


 「せ、先輩の感謝っ!?

 そんな明日は槍でも降るんじゃないッスか!?」


 さっきから失礼なやつだな……

 俺でも感謝するときはしてるからな?

 その辺は誤解してもらったら困る。



 そんなことを【バットシーフ】後輩が言ったからなのかとうとう正面から【監柵の機戒大猩々】が現れてしまい、脳内に無機質なアナウンスが鳴り響きはじめた。



 【Raid Battle!】


 【監柵の機戒大猩々】


 【レイドバトルを開始します】


 

 【監柵の機戒大猩々】は現れて早々に銅色の槍のようなものを次々に投擲してきて、俺たちの上から雨のように降らせてきた。

 あーあ、【バットシーフ】後輩が余計なこと言うから……


 「えっ、俺っちのせいッスか!?

 絶対関係ないッスよね!?!?!?!?」



 【バットシーフ】後輩の反論を最後に俺たちは雨のように降り注ぐ銅色の槍のようなものに貫かれて光の粒子と化したのだった……









 脱獄とは……ギルティだ!


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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