630話 機戒監獄
【Raid Battle!】
【荒野の自由】
【????】
【機戒天使】【上位権限】【保安官】
【螺旋のように回る歯車は輪廻の象徴】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【罪を裁き悪を挫く】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【罪を迎え撃つ雌伏する弾丸は】
【増長する悪意を討ち滅ぼす】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はいっ!?今日は驚きながらログインっ!?
俺はログインして早々に驚愕の表情を隠せないでいる。
まず、ログインしてすぐに流れたアナウンスが俺のアナウンスでもルル様のアナウンスでもなく【荒野の自由】のアナウンスという点だ。
こんなこと今まで無かったからな。
そして俺がログインした場所も天子王宮でも深淵奈落でも無い全く見覚えの無い場所だ。
周囲が鉄に覆われており、俺の前には柵のようなものが広がっており行く手を阻んでいる。
……前の強制ログアウト前に【荒野の自由】が言っていたのを鵜呑みにするならここは【機戒監獄】……つまり罪人を隔離しておくための監獄ということだろう。
柵で封鎖されているのも脱走させないためだろうな。
【荒野の自由】に悪質プレイヤーだと認知されてしまった俺はとうとう隔離空間に転送されてしまったということだ。
何度かログインとログアウトを繰り返してみたが、結局同じ場所にログインさせられてしまうのでログイン場所の固定もされてしまったぞ!?
なんという仕打ちだ……
とりあえずスキル発動!【深淵顕現権限Ж】!
俺はここから脱獄すべく深淵細胞を励起させようとした。
こんなところに囚われていたら楽しむものを楽しめないからな!
早く脱獄して憂さ晴らしのプレイヤーキルをしたいぞ!
……だが、そんな俺の気持ちとは裏腹に身体の深淵細胞が活発化してくれない。
おかしい、今までこんなこと一度も無かったはず……
深淵適性が人並み以上にある俺の意思に従ってくれないとなると、この場所による外的要因の可能性が高い。
深淵細胞が使えないとなると俺の手札の威力は半減以下だぞ……
もちろん、他にもスキルはあるがその前に一度周りを確認してみるか。
スキルの無駄うちなんてしても有意義じゃないからな。
そう思い柵の周辺に目を凝らしているが、特に変わったものは見当たらないな。
鍵穴もあるが、俺はプレイヤーキラーではあるがピッキングとか出来るわけではない。
包丁でこじ開けようとしてもびくともしなかったから、そう簡単に開くものではないだろう。
鍵穴を穴が空くほど見つめているとその先にいるものに気がついた。
俺のいる檻とは別の檻に何かがいる……
それは黒いシルクハットを被り、スーツのような服を着た男……
「えっ、先輩もここに飛ばされて来たッスか!?」
そう、そこにいた人物とは俺のクランメンバーの【バットシーフ】後輩だった。
【バットシーフ】後輩のポーズから推測すると、バットで地面にへの字を書いていたのだろう。
よほど途方にくれていたんだな……
「そりゃそうッスよ!
いつログインしてもここに飛ばされてくるッスから!
他のプレイヤーなんていないから俺っち1人で色々試してたッスけど埒が明かないッスよ!」
お前……しばらく見ないと思ったらまさかこんなところで隔離されていたとはな。
予想もしなかったぞ?
「でも先輩も今同じ状況ッスからね!?
ここからどうやって逃げるッスか?
先輩なら何かやってくれそうな気がするッスけど……」
それは素直に褒め言葉と取っていいのか……?
若干含みのある言い方で引っ掛かるな、この後輩は俺を一体なんだと思っているんだろうか。
だが、その希望には応えられそうにない。
あいにく俺もこの場所について計りかねていてな。
目下捜査中というわけだ。
「そうッスか……
それでも参ったッスよね、この扱いは囚人みたいで嫌ッスよ!」
みたい……というより囚人そのものだろうな。
ちなみに【バットシーフ】後輩はどうやってここに来たんだ?
俺はヒントになるかもしれないと思い柵越しに【バットシーフ】後輩に問いかけた。
すると【バットシーフ】後輩は苦虫を噛み潰したような顔をして俺の問いに答えた。
「俺っちは荒野エリアにある【荒野バー】で高そうなジュースを何本か拝借しただけッス!
つい手癖で盗んじゃっただけッスよ!
そうしたら【荒野の自由】が後ろから現れて、俺っちはこのゲームから強制ログアウトさせられたッス……
それで、再ログインしたらここにログイン場所が固定されていたってことッスね」
【荒野の自由】に連れてこられたというところは同じだな。
俺は不法侵入、【バットシーフ】後輩は窃盗でここに連れてこられたという違いはあるが、起きている現象は酷似している。
ここには他にプレイヤーがいないから、ある程度の前科がないと送られてこないのだろうが、流石に正規ルートでここに来る手段もあるはずだ。
じゃなかったらこのエリア設定も無駄になるからな……
深淵奈落ですら特殊ルートと正規ルートがあったのだから、なおさらだ。
つまり、俺と【バットシーフ】後輩は特殊ルートでここに幽閉されたということだろう。
出るにも何か条件を満たす必要があるのか……?
うーん、とりあえず考えをまとめるためにも一度ログアウトして頭を冷やしてこよう。
【バットシーフ】後輩も明日また一緒に脱獄方法を考えような。
「了解ッス!
ようやく先輩も来てくれてようやく希望が見えてきてホッとしたッス……」
ギルティなプレイヤーたちは隔離するに限る!
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