628話 祭壇の素材
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日から【失伝秘具】探しを開始しようと思う。
【大罪魔】から話を聞いたがそれぞれの能力は分かったものの、何処にあるのかという場所の見当は一切ついていない。
一旦【無限湖沼ルルラシア】の機戒兵は俺の気分が向いたとき以外はスルーだ。
これは大がかりな捜査になりそうだからな。
戦ってもキリがない連中の相手ばかりして時間を浪費するくらいなら、いっそのこと【大罪魔】のユニーククエストを進める方が結果的に近道になりそうだ。
というわけでやってきました岩山エリア……【堅牢剣山ソイングレスト】。
ここにひっそりと存在しているクラン【包丁戦士狂教団】の祭壇へと赴いた。
「ククク……狂巫女よ、久遠の時を越えて以来だな……
我輩の漆黒闇の力によって次元天子を葬り去ったが、新たな災禍の出現で困っているようだな……」
初手から困った俺が頼ったのはクラン【包丁戦士狂教団】のクランリーダーである【黒杖魔導師】だ。
こいつは独力で【大罪魔】を復活させるための祭壇を考案して、実際にこの包丁次元へと【大罪魔】を導いた実績がある稀有な才能を持っているからな。
言動は中二病チックで半分何を言っているのか理解に苦しむというコミュニケーションの点で難点はあるが、それでもっても有り余る有能プレイヤーだ。
そして、俺と同等……いや、それ以上に【大罪魔】について理解しているプレイヤーだと思われる。
じゃなかったら狙って【大罪魔】を呼び出すことなんて出来ないからな。
そんな推測からこの【黒杖魔導師】を頼りに来たのだ。
さあ、お前の知っている【大罪魔】の力を増幅させることのできる【失伝秘具】の場所を教えろ!
俺は【黒杖魔導師】の胸ぐらを掴み、宙に持ち上げて恐喝していく。
やっていることは半分チンピラみたいになっているが、情報を手っ取り早く引き出すにはこれに限る!
(そんなことばかりやっているから狂人と呼ばれたり呼ばれなかったりするの……)
あん?うるさいぞ【大罪魔】!
俺は脅迫に近いレベルで【黒杖魔導師】を恫喝し、俺が必要な情報を聞き出そうとした。
そんな俺の行動にも動揺せず【黒杖魔導師】は不適な笑みを浮かべながら言葉を紡いでいく。
「ククク……暴虐に身を委ねるのも一興であるが我輩としては感心しない。
それよりも、せっかく我輩の叡知を頼ってきたのだ、力になろう」
ほう、思ったよりも素直に言うことを聞くじゃないか!
感心感心!
他の連中もこれくらい俺の言うことを聞いてくれたらやりやすいんだがな!
「大いなる罪の力の補強には絶対領域を奉納することが一つあるが、それよりも【失伝秘具】の方が漆黒闇により近づけるだろう。
ククク……何を隠そう、そのうちの一つはここにある狂神神聖祭壇域に組み込んであるのだ!!!
ククク……驚いただろう!」
なんだって!?
そりゃ驚くだろ!?
なんで【失伝秘具】を使って祭壇を作ってるんだよ!?
超レアアイテムを使ってまで成功するか分からない祭壇を作るプレイヤーが他にいるなんて考えたくないが、俺の目の前にいる以上沈黙せざるを得ない。
……でも、冷静に考えたら理にかなっているとも思えてきたぞ。
だって、【上位権限】レイドボスを復活させる機構を祭壇の形状で生み出すには途方もないエネルギーが必要だったはずだ。
その媒体としても【大罪魔】と関係があるものでないとダメだろうし、それでいて大きなエネルギーを保有しているものなら【失伝秘具】が適任だろう。
【大罪魔】が一度倒される前に使っていた【失伝秘具】を改造したものならばその性質を少しくらい受け継いでいるだろう。
つまりだ。
この祭壇の周辺なら【大罪魔】の力が増幅されるってことでいいんだな。
そして逆に【荒野の自由】側は弱体化するというわけだ。
うーん、目的のもののうち一つは見つかったから喜んだ方がいいんだろうが、よりによってメインの戦場とは真逆の方位にあるとはな……
この岩山エリア……【堅牢剣山ソイングレスト】は南にあり、メインの戦場である【無限湖沼ルルラシア】は北にあるのだ。
そして多分だが、この祭壇って動かすとまずいんだろ?
俺は確認のために【黒杖魔導師】へと問いかける。
こいつが作ったんだから何かしらは把握していると思うんだが……
「ククク……狂巫女は察しが良いようだ。
その通り、狂神神聖祭壇域を動かすと我輩が苦心して呼び出した大いなる罪が消滅してしまうのだ。
いくら狂巫女であると言ってもこれを動かすことは許可できない」
だよな~
早々に【大罪魔】が出してきた候補のうちの一つが潰えてしまった瞬間だった。
悔しかったり、仕方がなかったりする……
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