627話 【大罪魔】の求める【失伝秘具】
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は【大罪魔】に会いに行こうと思う。
正直半分放置しようかなと思っていた【大罪魔】のユニーククエストの【失伝秘具】の探索が深淵獣側のメリットになるとルル様が言っていたので、詳しいことを【大罪魔】に聞きにいこうというわけだ。
はじめて話を聞いたときにもっと聞いておけよ……と思われるかもしれないが、今回はまさにその通りなんだよな。
あの時はそこまで【大罪魔】側であるメリットを感じなかったので話し半分で切り上げてしまったが、今回は重箱の隅をつつくように聞かないといけないな。
というわけでやってきました草原エリアにある元【槌鍛冶士】の鍛冶場!
ここでぼーっと椅子に座っていた銀髪褐色ロリの【大罪魔】に話しかけていく。
前に聞いた【失伝秘具】について詳しく教えてくれないか?
本格的に捜査してみようと思ったんだが流石に情報が少なすぎてどうしようもないぞ。
「心当たりはあったり、なかったりする……」
相変わらず毒にも薬にもならない曖昧な表現だな……
そう思っていたが【大罪魔】はさらに言葉を続けていく。
「私が過去に使ったことがあるもの、見つけようと思って見つからなかったもの、【荒野の自由】が保有しているもので一つずつ候補があったり無かったりする……」
ん?
ルル様の発言だと【大罪魔】が使っていた【失伝秘具】についてしか語っていなかったが、【大罪魔】としては候補が3つほどあるようだ。
ルル様が他の候補のことを認知していなかったのか、あるいは深淵種族として必要なものはこの中の一つだけというパターンかだな。
【大罪魔】から詳しく聞き出せばそこまで分かるかもしれないな。
そう思い、俺は【大罪魔】の言葉を耳をさらに傾けていく。
「私が過去に使っていた【失伝秘具】は【鉄血森林の森人君主】が作った【大深罪鉄林包丁】みたいな効果があったりなかったりする……
あれがある場所では擬似的な大罪空間を作り上げることができるの。
私の力が強まったり補完されたりする……そして反対に【荒野の自由】に与する存在に弱体化を強いることが出来たりする……」
なるほど。
確かにルル様が必要とする性能の【失伝秘具】を【大罪魔】は持っていたようだ。
常時強化空間を展開できるアイテムをレイドボスが持っていたら挑む側のプレイヤーとしては発狂ものだが、【大罪魔】は今持っているわけではないし、そもそも【大罪魔】がどこにいるのか気づいているやつがごく僅かという関係上挑むプレイヤーそのものがいないからな。
今の時点では例え【大罪魔】がその【失伝秘具】を手に入れても【荒野の自由】陣営の機戒兵が弱体化して大多数のプレイヤーが困るくらいだろう。
俺としてはありがたいがな!
「次は私が見つけようとして見つからなかったり、手に入らなかったりしたもの……
独立した眷属を産み出せたり、産み出せなかったりする……
無機物の形をしていたりするらしいの」
無機物の形、眷属……
なんか普通に心当たりがあるな。
キリゲーだ。
あいつは元々風見鶏の形状だったからな。
「【上位権限】持ちが直々に産み出す眷属とは別枠で眷属を持つことができる【失伝秘具】は次元内にいくつか散らばっていると【山伏権現】は言っていたの。
でも、私は見つけられなかったり、奪われたりした……
そういうのを見つけるのは裏工作が得意で狡猾な深淵種族の主が得意なの」
ルル様……もしかして深淵奈落にキリゲーの雛型を置いていたのはわざとだったのか……?
既に手に入れていた【失伝秘具】で眷属を産み出そうとしていたが、あえてすぐに効果を発揮させずに深淵奈落に到着したプレイヤーに任せることで既存の深淵種族とは性質の異なる同胞が生まれるのを期待した……っていう可能性はあるな。
その目論見があるからこそ深淵奈落に【失伝秘具】があるのを知らないフリをしていた……というのはあらゆる存在から狡猾と言われているルル様なら平気でやってくるかもしれない。
【大罪魔】がもし眷属を産み出せたのなら確かに動きやすくはなるかもしれないし、それを持ってきてもらうことも望んでいるのだろう。
ただ、【大罪魔】の口ぶりからすると包丁次元に複数あるらしいし、見つかる可能性が高いからこそ他の【失伝秘具】ほど今回は場面をすぐさま打開できるわけではないだろう。
キリゲーだって育成に時間がかかっているし、長時間の戦闘もまだ出来ないから純粋な戦力として扱うのは正直難しい。
それでも【大罪魔】としては仲間が欲しいということだろう。
「そして最後……これが一番入手難易度が高かったり低かったりする……」
どっちだよ!?
高かったり低かったりって真逆じゃないかよ。
「どっちも嘘じゃなかったりする……
入手難易度が低いと考える理由は誰が持っているか分かっているからなの。
つまり場所の特定もやりやすかったりする……
入手難易度が高いと考える理由は、その持ち主が【荒野の自由】だからなの。
天敵から掠めとるのは今の私には不可能だったりする……
その【失伝秘具】の効果はエネルギー蓄積型で、長時間のチャージで【荒野の自由】が発動する広域殲滅型の概念を生み出すものだったりする……
あれがまた使われたら私は即死だったり、塵も残らなかったりする……」
まじかよ!?
そんな【失伝秘具】を【荒野の自由】が持っているのかっ!?
鬼に金棒みたいなものじゃないか……
つまり、俺たちが機戒兵の排除を一定期間内に終わらせれないと【荒野の自由】がその【失伝秘具】を持ち出してくる可能性が高いってことだろ?
つまりこのユニーククエスト、何も表記されていないが明らかな時間制限があったということになる。
なんというプレイヤーに対して不親切な仕様なんだ……
他のゲームとかだったら絶対クエストの詳細に記入されてしかるべき要素だぞ、これ!?
流石はプレイヤーに人権のないゲームだぁ……
【Bottom Down-Online Now loading……】