624話 ヤンヤンデレ
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【パイロット】とかいい特殊派生のジョブを発見した……プレイヤーの独り言を盗み聞きできた。
あの後も追跡しながら聞き耳を立てていたが、大前提としてあの女モブプレイヤーは自分のテイムした機戒兵【フレイムギア】に話しかけているってことだ。
つまり、俺目線では独り言だったがあいつ目線では一応話しかける相手がいたということだな。
境遇は【フランベルジェナイト】と【フェイ】の関係に似ている気がする。
そんなわけで【フランベルジェナイト】に意識がいったので急に【フランベルジェナイト】に会いたくなってきた。
せっかくだし【フランベルジェナイト】の現状についても聞いておくつもりだ。
流石に深淵獣側のユニーククエストに参加していると思いたいが……
「何を言っているんだ?
この前フェイちゃんと深淵獣側として機戒兵を排除しようと決めて行動している最中じゃないか!
もしかして疲れで忘れちゃったとか……?」
あっ、やべっ!
【フランベルジェナイト】目線だと俺と瓜二つの【フェイ】と常に同行してるんだから知ってて当然の情報を今さら聞いてるってことになるのか。
おい、【フェイ】!
お前を介して話してくれたら良かったものを……
俺は自分の失敗を棚にあげて俺の分身みたいな存在である【フェイ】に八つ当たりしていく!
どうせ自分自身に当たってるんだからセーフセーフ!
【あの次元戦争で【包丁戦士】としての私の声が直接届きやすくなってしまったのが、こんな感じの場面では思ったより融通がきかせにくくなりましたね……】
そうなんだよなぁ……
はじめは仲介役である【フェイ】を通さなくても良くなると思ってたんだが、日々が過ぎていくうちに【フランベルジェナイト】と【フェイ】が過ごした時間や情報の差異がどうしても発生してしまうので俺が事前情報を仕入れてないと今回のような会話が崩壊しそうなことが起きてしまうってことだ。
「それで今日はまた機戒兵狩りでもするかい?
フェイちゃんの作っているものの素材集めだからね、俺も文字通り命がけて協力するよ!」
【ふ、【フランベルジェナイト】さん!
あ、ありがとうございます……】
【フェイ】は俺から露骨に顔を背けて【フランベルジェナイト】に返答をしていく。
なんだ?
機戒兵を狩って素材集めてるのか……?
でも深淵獣も機戒兵もまともなモノなんてドロップしなかったはずだが。
俺が何体か倒した機戒兵からは基本的には鉄屑のようなもの(俺に金属の種類は分からないので鉄じゃないかもしれない)、何かの部品だ。
精々鉄を打ち直して食器にするくらいしか思いつかなかったが他に有効活用する方法を考案したんだろうか。
【それは秘密です。
私の本体には教えず【フランベルジェナイト】さんと二人で楽しませてもらいますよーだ!】
【フェイ】は俺に向かって舌を突き出してあっかんべーのポーズを取り牽制してきた。
なんだその独占欲は……
俺は別に【フランベルジェナイト】を取って食おうとしているわけじゃないんだが。
まあ、プレイヤーキラー的な意味で取って食おうとしていないかと言われると返事に困るけどな!
【今の私ではプレイヤーキラーとしての活動が出来ませんからね。
【フランベルジェナイト】さんをキルするのも私だけです!】
おっ、いいねそういうの!
流石俺が大元なだけあって、プレイヤーキルについての拘りも一級品ってわけだな。
【フェイ】は自力で実体化できるわけじゃないから実際にプレイヤーキラーとして活動することは無いだろうが、もし実体化したら【フランベルジェナイト】に心休まる時は訪れるのかどうか怪しいな。
俺の全体へのプレイヤーキル欲が一人のプレイヤーに集中したとなれば、より執拗な攻撃が行われるのは自分ながら予想は出来る。
いわゆるヤンデレと化すってことだ。
俺はヤンデレ属性ではないがな!
……ん?【槌鍛冶士】をキルし続けた?なんのことやら……
そんな俺たち二人と一体は機戒兵をひたすらキルし続けたのだった……
なお、何度か死に戻りはした模様。
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