613話 基本ジョブ解放について
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
普通にログインしたが、【菜刀天子】がいないので次元天子になった俺自身のアナウンスが流れてきたのにはなんか違和感があるが、普通に天子王宮にログインしたな。
「【包丁戦士】さん、ログインしてくるの待ってましたよ。
昨日は待ち構えていたのにログインしてこなかったので完全に徒労でしたよ……」
ログインした俺の前には痩せ型のメガネをかけた白衣の男……【検証班長】が立っていた。
おっ、【検証班長】!
【菜刀天子】討伐総力戦の指揮お疲れ!
あの人数を見るのは大変だっただろ?
「ええ、流石に次の日もグロッキーでしたよ。
その点で考えるならむしろ【包丁戦士】さんがログインしてこなくて正解だったかもしれませんね」
とかいいつつ、新要素の情報の蓄積とか始めてるんだろ?
検証については強欲な【検証班長】のことだ、いくら疲れていても、本拠地に居ないとしてもメンバーと連絡を取りながら情報共有していたに違いない。
そして案の定、【検証班長】はにやりとした表情を浮かべて口を開いた。
「付き合いが長いだけあって、ボクのことをよく分かっていますね……
もちろん色々と集まってますよ!
ただ、日にちが浅いので要素の触り程度ですが」
ほーん、せっかくだし教えてもらおうか。
「新たに解放されたジョブ【メイジ】【ウォーリア】【クレリック】【レンジャー】についてからにしましょうか。
分かりやすいですからね」
おっ、いいじゃん!
一番気になってたんだよジョブ!
「まず大前提として、これらはおそらく基本ジョブ扱いですね。
初期職ともいいますが、ジョブに就いたからといって劇的な変化はありません。
前から解放されていた【テイマー】ではスキル【想起現像】が別性能に派生するという効果がありましたが、今回解放されたジョブたちにも似たようなものがありました。
【メイジ】では【渦炎炭鳥】に、【ウォーリア】では【渡月伝心】に、【クレリック】では【花上楼閣】に、【レンジャー】では【波状風流】にこれまでとはうって変わった挙動が生まれたのです。
実に興味深いよね!」
それって俺が【天元顕現権限】とスキルチェインさせた時と同じ挙動ってことか?
火柱が出たり、石の礫を飛ばしたりとか?
「やはりそう思いますよね?
ですが、違うものが多いですね……
【メイジ】の【渦炎炭鳥】は火の玉を飛ばすことが可能になり、【ウォーリア】の【渡月伝心】は武器に粒子のオーラを纏わせ、【クレリック】の【花上楼閣】は回復スキルに、そして【レンジャー】の【波状風流】は使ったプレイヤーの一時的な透明化が可能になりました。
こうして並べてみると、似てるけど性能は別物だよね」
うわっ、相手にすると中々面倒になりそうな性能が勢揃いしてきたな……
ジョブによってプレイヤーの動きもこれから更に役割分担されていくだろう。
パーティーのバランスもこれまでは戦いかたやチュートリアル武器の種類だけで判断されていたが、これからはそこにジョブという新たな区分が加わることになるだろう。
今までは【テイマー】しか一般化していなかったからそこまで顕著ではなかったが、こんなにも違うものが出てくるとそういうわけにはいかないだろう。
大型アップデートされたゲームみたいに、急にてこ入れされたな……
「これらのジョブは新しくウインドウ画面に現れたジョブ欄でどこでも変更が出来るみたいですよ。
もっとも、1日1回という縛りはあるようですが……
あと、宝物庫に奉納する時に手に入るポイントが必要のようですね。
一朝一夕で集まるようなポイントではないですが、これまでポイントを温存していたプレイヤーは既に【ジョブ】を獲得しつつあります。
このポイントさえどうにかすれば日替わりで色々なジョブを試せるというのは自由度が高くていいよね!」
まあ、色々試せて損はないからな。
俺も試せたら試したいが……
「次に、新たに解放されたエリアですが、前に【菜刀天子】が言っていた海エリアが解放されましたね。
【無限湖沼ルルラシア】から行けるようですが、今はあまりおすすめしないです。
あそこは今苛烈なので」
深淵獣と機戒兵の衝突のことだろうな……
でも、新しくエリアが解放されたのは良いことだろう。
プレイヤーの活動範囲がこれまでかなり被ってたから、適度に散ってくれると俺としてもプレイヤーキルの成功率が上がるってものだ。
「とりあえず、新要素で簡単に分かったことは今のところは以上ですね。
流石にまだまだ見ないと分からないところが多そうです」
おお、助かったわ。
やっぱり【検証班長】は頼りになるよな!
俺がそう言いながら【検証班長】の肩をバンバン叩いていると神妙そうな顔で【検証班長】が俺にとある質問を投げかけてきた。
「……【包丁戦士】さん、今回のプレイヤー全体に発令されたユニーククエスト【深淵獣】か【機戒兵】どちらを排除して回るつもりですか?」
【検証班長】は一応聞いてきたという感じだが、本当は聞くまでもないだろう。
俺のこれまでのプレイスタイルからして、【深淵種族】の味方をするに決まっているだろう!
「やはりですか……」
なんだよ藪から棒に……
って、もしかして!?
「そう、今回ボクは【深淵獣】の排除クエストを受諾しました。
そして、今回のクエストの民意を確認したところ九割以上が【深淵獣】の討伐を決めたようです」
な、何故だっ!?
今回の【菜刀天子】討伐総力戦で深淵種族のルル様の株が爆アゲだったはずでは!?
勢力図おかしくない?
「それは今の【無限湖沼ルルラシア】の状況を見ていないからそう言えるんですよ。
あの状況を見たら普通のプレイヤーは【機戒兵】を支援しながら【深淵獣】を討伐する方向に動くでしょう。
申し訳ないですけど、これからしばらくはボクたちは敵同士になるのでアドバイスも情報も渡せないと覚えておいてください。
ちなみに、【釣竿剣士】さん、【風船飛行士】さん、【トランポリン守兵】さん、そしてボク【検証班長】が率いるクランは【荒野の自由】側で戦うことになっています。
……覚悟しておいてくださいね?」
マジかよ……
四面楚歌もいいところだぞ……
ピンチだったとか、ピンチじゃなかったとか……
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