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61話 頭脳の自由落下

 かよぉぉぉ!


 

 かよぉぉぉ!



 かよぉぉぉ!


 

 穴がめっちゃ深いからか、俺の叫び声が延々と響き渡っている。

 さて、俺は今大穴を絶賛落下中だがここからどうすればいいんだろうか?

 身体中で浮遊感を感じながら行く末を考える。


 せっかく無限ループする部分を突破出来たんだからここで死に戻りするのは避けたい。

 だから使うと死に戻りが確定する【魚尾砲撃】や、使用後スタン状態になってしまう【渡月伝心】は使用を控えたほうがいいだろう。

 【フィレオ】なら、最低使うことはできるだろうけど、使ったところで四肢がなくなると着地に失敗して結局死に戻りすることになりかねない。

 つまり、現在発動中の【深淵顕現権限】で生えてきたウナギ尻尾に頼るしかあるまい。


 とりあえず壁にウナギ尻尾を突き刺してみる。

 固そうな岩盤だったので突き刺せるのか不安だったが、そこはレイドボスの性能を受け継いでいるスキルのパワーなのかあっさり突き刺さった。

 突き刺さったまま落下していっているので岩盤がゴリゴリと削れていっているが、次第に落下のスピードが遅くなっていき、最終的になんとか完全停止させることができた。


 【深淵顕現権限】のスキル効果時間が切れる前にいそいそと壁に張り付いたところで、おしりについていたヌルヌルのウナギ尻尾が消失した。

 ふー、間一髪だったか……

 あと少し遅かったらアウトだったな(確信)


 さて、なんとかして岩壁に張り付いたのはいいが上がるべきか……?

 いや?せっかくここまで降りてきたんだ、降りれるだけいくか?

 うーん、ちょっと悩むが……よしっ、降りよう!

 ここまで来たなら降りれるだけ行ってみるか。


 降りる決意をキメた俺は岩肌を掴み、慎重に下っていく。

 腰に提げていた包丁をピックの代わりにして少しでも安全を確保していく。

 何度か風化して崩れかけている部分を掴んでしまい危うく落下しそうだったが、ぎりぎりのところで耐えて別の部分を掴むことで移動を再開するということがあった。

 


 そしてしばらく下っていくと横穴が空いているのを発見した。

 ラッキー!

 ちょっとこの横穴に入って休憩していくか。

 ずっと手で全体重を支えていたし、体勢もほとんど変えられなかったからここいらで休憩できるのは本当に助かる。


 駆け込むように横穴に入っていくと奥の方から物音がした。

 こんなところにプレイヤーがっ!?

 ……いるはずないので、つまり……


 「我の眠りを妨げるものよ、我が面前へ来たれ」





 

 【Raid Battle!】



 【深淵域の管理者】




 【???】


 【???】【上位権限】【???】




 【ーーー深度不足のため未開示ーーー】


 【深淵へ誘い】


 【冒険者を堕とす】


 【ーーー深度不足のため未開示ーーー】


 【ーーー深度不足のため未開示ーーー】


 【ーーー深度不足のため未開示ーーー】


 【ーーー深度不足のため未開示ーーー】


 【ーーー深度不足のため未開示ーーー】




 【レイドバトルを開始します】


 


 うわっ、どう考えても厄介案件でしょこれ。

 めったに誰もいかない場所にある、バグみたいな方法でしか入れなかったところのレイドボスだぞ。

 一応言葉は通じるっぽいけど、すんなり話が進むとは思えない。


 だが、声を無視して大穴を降りていくのはどう考えても悪手なので、暗闇が続く横穴を進んでいくのが俺に残された唯一の道と言っても過言じゃない。

 諦めて横穴を進みながら、さっきのアナウンスについて考えてみるとしよう。


 

 【深淵域の管理者】というレイドクエストの名前、【ーーー深度不足のため未開示ーーー】という【菜刀天子】のときには見たことがない表示から推測すると、この声の主は実績照会に何度も出てきていたフレーズである【深淵】というものや深度に深く関わりのある存在だろう。

 

 それともうひとつ、辛うじて読み取れている情報に【上位権限】がある。

 【菜刀天子】と竜人ギルドマスターの時のアナウンスを参考にすると、この【上位権限】というものはジョブ、あるいは種族欄に属しているものであると考えられるからこいつは【菜刀天子】と同様な存在であると思われる。

 つまり、サポートAIかな。

 【ーーー深度不足のため未開示ーーー】っていう欄が並んでいる部分に辛うじて読み取れる【深淵へ誘い】【冒険者を堕とす】という文面は【菜刀天子】のレイドバトルアナウンスにある【次元をさまよい】【冒険者を導く】という文面と類似している。

 意味こそ真逆だが、多分そういうことだろう。



 物思いに耽っていると、前方から異様な重圧がかかりはじめた。

 こ、この異様な感じ……

 体が前に進むのを拒否し始めている、こんなのは初めてだ。

 本能がこの先にいるやつがヤバいと叫んでいるかのようだ。


 そしてその重圧にこれ以上耐えられない……と思ったとき再び先程の声の主から言葉が紡がれた。


 「我の眠りを妨げたことはさておき、いったんは歓迎しよう。

 ようこそ、深淵種族が集う楽園の入り口、【深淵奈落】へ!」



 【ワールドアナウンス】


 【【深淵奈落】が【包丁戦士】によって観測されました】



 

 【個人アナウンス】


 【【包丁戦士】が称号【深淵奈落の観測者】を獲得しました】


 【称号の効果で【Bottom Down】!】


 【【包丁戦士】の深度が7になりました】



 



 なんかグランドアナウンスにあった実績を解除してしまったようだ。

 ふー、やれやれだぜ(思考停止)。

 俺の頭は岩壁下りと自由落下のループによる疲労と急展開へのついていけなさにオーバーフローした。




 【Bottom Down-Online Now loading……】

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