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609/2202

609話 乖離と別離

 【たしかに【天命昇華】を介したスキルに対抗できるようですが】


 【聖獣たちの力を束ねたこちらは流石に無理でしょう!】


 【これで沈みなさい】


 【菜刀天子】は自身ありげに一呼吸置いて詠唱を開始した。

 ……ということは、またあれがくるってことか!?

 プレイヤーをほぼ全滅させたあのスキルにこれで対抗できるかが鍵だが……



 【【上位権限】ー【LINK SKILL】!】


 【繋ぎ、繋がるのは私の配下の紡いだ道程】


 【聖なる獣たちの織り成す聖域に誘う】



 【始まりの花の【生命花】は寵愛の紋】


 【スキル発動!【花上楼閣】LINK【聖獣結界υ】!】



 【鳥の聲で【燃焼】するのは親愛の標】


 【スキル発動!【渦炎炭鳥】LINK【聖獣結界ξ】!】



 【流れ征く風に身を【流動】させるのは溺愛の験】


 【スキル発動!【波状風流】LINK【聖獣結界Ω】!】



 【阿吽の月で【伝播】するのは相愛の印】


 【スキル発動!【渡月伝心】LINK【聖獣結界μ】!】



 【集いし【しるし】が世界の全てを包み込む【四聖結界】】


 【SKILL CHAIN LINK!【花上楼閣】【渦炎炭鳥】【波状風流】【渡月伝心】!】


 【SKILL【花鳥風月】!】




 【菜刀天子】が再び必殺スキル【花鳥風月】を発動してきた。

 視界が黄金色に覆われていき、気が遠くなるような錯覚を覚えてくるが今回ははじめから【槌鍛冶士】が俺の前に仁王立ちして守りの姿勢を取っている。


 ちょっ!?

 お前、あの攻撃また受け止めるつもりかよ!?

 平然そうにしているが、長い間つるんできた俺だからわかる。


 こいつ、さっきの一撃を受け止めただけで既に死屍累々であるのだ。

 全身の力の流れがボロボロになっており、このまま放置していても死に戻りの一歩手前までダメージが進行すると思われる。



 だが、【槌鍛冶士】はそんな様子を一切俺に見せないようにスキルの発動を宣言していく。


 【そのスキルはワシと相性がいいな!!!】


 【【上位権限】ー【Enchanting】!!!】


 【スキル発動!【鉄壁樹林】!!!】



 【槌鍛冶士】が地面から鉄の樹林を生み出し、スキル【花鳥風月】による影響力を抑えてくれているようだ。


 【ガ、ガハハハハ!!!】


 【相性が良くとも流石に戦闘力の差でワシの力が削がれているな!!!】


 【抑えきるだけで身体が張り裂けそうだ!!!】


 おいおい、大丈夫かよ……

 身体から赤色の粒子が飛び散り始めてるんだが……?

 これ本当に防御出来ているのかよ?

 

 【大丈夫ではないでしょうね】


 【【花鳥風月】を抑え込んでいるのは称賛しますが】


 【【鉄血森林の森人君主】と私では種族、そして天命によって与えられた役割……つまりジョブの適性が別方向ですからね】


 【私は自ら戦い自ら勝利を勝ち取りますが、この【鉄血森林の森人君主】は他人に力を託していくのが本来の役割みたいですからね】


 【このように私の攻撃を【鉄血森林の森人君主】が自分で受け止めるというこの状況になった時点で、もはや行く末は見えていたのと同義です!】


 【このまま【花鳥風月】の圧倒的なまでの力の前に屈しなさい!】


 好き放題言いやがって……

 


 【【包丁戦士】、後は頼んだぞ!!!】


 【槌鍛冶士】は自らの身体を血のような光の粒子に変えられていっているのにも関わらず、その防御を止めようとしていない。

 同じ【上位権限】レイドボス同士の戦いだとしても、【菜刀天子】がバリバリの戦闘職系なのに対して、【槌鍛冶士】は生産職系だからこの結果はお互いに分かった上でこの攻防をしているのだろう。


 つ、【槌鍛冶士】!

 もういい、止めるんだ!

 何もお前がそこまでする必要はないって!

 その状態で死んだらお前の力が無くなってしまうんだろ……?


 【お前は、バカかっ!!!】


 【ここで、ワシが、頑張らなくて、どうする!!!】


 【ここまで、頑張ってきた、お前を、最高の舞台、最高の場面で、助けて、やれ、る、ん、だ……!!!】


 【ここで、敗れたと、して、も……ワシ、の、本望、だ!!!】


 【もう、悔いは……な、い……っ!!!】


 


 ……そして、【槌鍛冶士】はこの場から姿を消したのだった。


 【ability【会者定離】が発動しました】

 






 【ふん、いきなり出てきた割には呆気ないものでしたね】


 【このまま劣化天子も【花鳥風月】で乖離させてしまいましょう!】



 【菜刀天子】は何事もなかったかのようにスキル【花鳥風月】の行使を継続し、俺に差し向けてきている。



 さっきまでだったら俺はそのまま死に戻りしていただろう。

 だが、【槌鍛冶士】の稼いでくれた時間で色々と(・・・)準備が整った!





 ここまでお膳立てされたら意地でも俺が負けるわけにはいかないよな!!


 そして俺は叫びながら、再び大剣のような肉切り包丁を振りかざし、周囲にはびこる黄金色の粒子たちを一閃する。



 スキル発動!【鵄嘴縁断】!

 

 キリゲーの性質は、物事の縁を断つという【縁断】だ。

 それの影響を受けた深淵細胞を全身に身に纏い、キリゲーのスキルを起動したのであれば粒子と粒子を操る存在との関係性を断ち切ることさえ可能だ。 

  

 そして【上位権限】によるバックアップがあるからか、ここから繋がる更なる道筋が見えた。


 これが俺と【槌鍛冶士】が培ってきた絆の力だ!

 プレイヤーとかレイドボスとかAIとか関係ない真の絆ってものを見せてやるよ!

 

 ああ、もしかするとこれはこの時のために俺に定着したのかもしれないな……



 ability発動!【会者定離】!







 【Bottom Down-Online Now loading……】

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[一言] キルすることで生まれる絆? ……妙だな
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