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606話 過去を辿り行きついた真実

 レイドアナウンスを引っ提げて出てきたのは俺の相棒、【槌鍛冶士】だった。

 

 「【槌鍛冶士】がレイドボスだった!?」


 「えっ、【包丁戦士】みたいに一時的にレイドボスになってるとかじゃないんか?」


 「えええええええ!?」


 他のプレイヤーたちは困惑しているが、一方で俺は動じることなく【槌鍛冶士】を見つめている。


 【ガハハ!!!】


 【【包丁戦士】、お前は驚かないんだな!!!】


 【ワシがレイドボスであったというのに!!!】


 【槌鍛冶士】はそう言ってくるが、俺は新緑都市アネイブルでの総力戦でジェーライト=ミューンを討伐する、その前からお前がただ者ではないと思っていた。


 プレイヤーの中でも突出した生産技能を持っていたからな。

 【釣竿剣士】の例もあるからそれだけでは確証は取れなかったが……

 お前がレイドボスだと思った理由は主に4つある。


 【何やら面白い話をしていますね】


 【プレイヤーたちから私への攻撃も止まっていますし】


 【何よりも【鉄血森林の森人君主】についての話であれば私にも有益です】


 【話が終わるまで特別に待ちましょう】


 【劣化天子、そのまま話を続けなさい】


 なんか【菜刀天子】も俺の推理に興味があるようで、戦場は今完全に停滞状態となった。

 さっきのスキル【花鳥風月】で大半のプレイヤーが死に戻りしていったので、ここで迂闊に動くようなプレイヤーが残っていないのが救いだな。


 総力戦開始の時にこの開示があったら、それでも無視して【菜刀天子】に攻撃するやつらもいただろう。

 ……ちなみに、当事者じゃなかったら俺は積極的に攻撃してた側ということは置いておこう。



 

 と、まあ【菜刀天子】のお墨付きももらったわけだ。

 俺の推理を聞いてもらおうか。


 まず一つ目は、お前が死に戻りするときのエフェクトが微妙に他のプレイヤーたちと違うってところだ。

 俺以外でそのことに気づいていたやつは多分いないと思うが、俺はお前の死に際を何度も見てきたからな。

 なにせ俺はプレイヤーキラーだ、お前の死因の大半を占めているだけあってその点については詳しいんだ。


 お前の死に戻りするときのエフェクトは若干赤みがかっている、他のやつらはそんな有色ではないのにだ。

 

 【ガハハ!!!】


 【ワシの残滓からヒントを得ていたとはな!!!】


 【日常的にキルされていたのは迂闊だったな!!!】


 【ワシ自身でもそんなこと気にしたことなかったぞ!!!】


 ……【槌鍛冶士】の死に際の赤色が好きでいつも悦に入って眺めているからというのは伏せておこう。

 あれを見たいがために【槌鍛冶士】を執拗なまでにキルし続けたからな。


 そして、そのキルの影響で手に入れたものが次なるヒントへと繋がっていく。

 そうability【会者定離】だ。





 二つ目はability【会者定離】の効果、仕様はいくつかあるが、その中でも俺が着目したのはフレンドの強制解除だ。

 ability【会者定離】はプレイヤーとのフレンド登録を強制解除し、さらに今後プレイヤーとフレンドになることができない……と手に入れた時のアナウンスで宣告された。


 その影響で俺がそれまでフレンドだった連中も一斉に解除されてしまった。

 なのにも関わらず【槌鍛冶士】という名前だけリストに残り続けた。

 その後にもリストには名前が増え続けたが、他には【菜刀天子】、【ジェーライト=ミューン】、【エルル】、【フェイ】という明らかに通常のプレイヤーではない存在しか増えていない。


 ここからもお前が本当のプレイヤーではない異質な存在だということがわかる。



 【そうか!!!】


 【さすがにワシの管轄外のabilityのことまでは把握していなかったぞ!!!】


 【まさかそんなに前からそこまで気づかれていたとはな!!!】


 まあ、ability【会者定離】についてはほとんど仕様が不明だから根拠にするには怪しかったが、実際合ってたようである意味ホッとしたな。

 このabilityについて詳しくわかる時が来るんだろうか……

 もう606話だぞ……



 さて、気を取り直して三つ目だ。

 生産イベントの時のことだが【大罪魔】と一緒に作り上げてたアレ、どう考えてもおかしかったよな……

 いや、みんな【槌鍛冶士】だからな~とかで軽く流してたけど、【失伝秘具】の【大深罪鉄林包丁】って名前からしてどう考えてもプレイヤーが作れるアイテムじゃないだろ!


 【失伝秘具】ってオーパーツ的な扱いだと思ってたけど、そんなものを生み出せるのは文字通り格が違うやつらしかいない。

 ……つまり【上位権限】持ちレイドボスっていう推論だ。


 誰も突っ込まなかったから俺もあえて言うまいと思ってたけどさ。

 あっ、【大罪魔】は気づいてたっぽいよな。

 【槌鍛冶士】と会った時に露骨に嫌そうな顔してたし……

 知ってて預けたけど、性格的に合わなかったのか【上位権限】同士だから合わなかったのかまでは本人たちしか分からないからな……


 





 そして最後の四つ目はプレイヤーに擬態してる方法が分かったってことだな。

 まず大前提として、俺たちが【ジェーライト=ミューン】を倒したときに流れたグランドアナウンスで、今に至るまで全く解明されてなかったのにも関わらずClearになっている項目があった。

 それは……【エルフとフレンドになる clear】だ。


 この時点で種族転生しているプレイヤーはいないから天然のエルフとフレンドになったプレイヤーがいるってことだ。

 でも、そんな報告もないし、そもそもエルフを見かけたというプレイヤーもいない。

 ということは何処かに隠れているということが思い当たる。


 そして、【上位権限】持ちの面々も【鉄血森林の森人君主】は見つけ出すのが困難と言っていた。

 つまり隠蔽もしくは擬態するのが上手いってことだろう。


 それで何に擬態するのかが問題だ。

 一般的なNPCなんてこのゲームでまともに見てないから、それになるのは逆に違和感を持たれるだけだ。

 そこで、このゲームで雑に数が増えてもバレない存在に思い当たるわけだ。

 つまり、プレイヤーだな。


 そして、そのプレイヤーに擬態する能力があるって確信したのは聖剣次元との次元戦争の最中だ。

 俺が戦った【精霊森林の緑女王】……【エムハート=アイシア】はレイドボスでありながら【プレイヤー(偽)】というものを持っていた。


 そして、【メイン】と【サブ】の種族欄があった。

 つまり、【エルフ】系種族の【上位権限】の中にはプレイヤーに擬態して行動する権限が含まれているってことだ。


 そして、その【プレイヤー(偽)】のある方をメインにしている間は他のプレイヤーたち同様に死に戻りもできる……とかだろう。

 ここは本当に予想でしかないから合ってるかは不明だ。


 つまり、リアルでの事情として語っていたバックグラウンドも嘘ということだろうな。


 


 【ガハハ!!!】


 【流石はワシの見込んだ相棒だ!!!】


 【ほとんど合ってるぞ!!!】


 ま、俺にかかればこんなところだな。

 ……なんてな。

 流石に推測で語ったところが多かったから合っているか不安だったが、【槌鍛冶士】は誤魔化すこと無く答えてくれた。


 俺を信用してくれているってこと……だと思いたい!





 【Bottom Down-Online Now loading……】



【トランポリン守兵】お嬢様のイラストを描きました。

53話に掲載してありますので、興味のあるかたは見てみてください。

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