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605話 花鳥風月を友とする

 【忌々しいこの黒枝……思っていたほどヤワではないようですね……】


 【力任せに破ろうとしましたが、麻痺の影響もあってかびくともしません】


 【あのタコ、陰湿にもほどがありますよ……】


 【とは言うものの、このままプレイヤーたちの攻撃を受け続けるのは危険ですのでとっておきのカードを切らせてもらいましょう】


 【底辺種族上がりのプレイヤーたちに使うのは非常に勿体無いですし、不服ですがここで私が負けるわけにいきませんからね】


 【菜刀天子】、急に何を言い出したんだ……?

 こいつの言い回しは回りくどいからいつも俺の頭を悩ませるが、今回は逆転の切り札でもあるんだろうか。


 今のこのプレイヤー優位の状況が続けば俺たちの勝利は見えているが、【菜刀天子】がこの黒枝を破ってきたならば勝負はまだ分からない。

 だが、ルル様の必殺技である【堕枝深淵】を麻痺した状態で破るなんてこと出来るんだろうか。


 【ふっ、劣化天子は私を誰だと思っているのですか】


 【【聖帝黄龍】であり、【次元天子】の私が秘策を温存していないとでも思いましたか?】


 【そう思っていたのであれば私に対して不敬だと知りなさい!】


 【それでは刮目しなさい!】


 【菜刀天子】がそう言うと、ルル様の呪文の詠唱のようなことをし始めた。

 ……ということは【菜刀天子】の必殺技に該当するやつってことだな!?


 「なんだか嫌な予感がするのらよ!?」


 「ちょっwww

 心の準備が間に合わないwww

 オレは指揮官ポジションのはずなのにどうしてこうなったwww」


 「わ、ワタクシも攻撃したばかりで体勢が整ってませんわよ!」


 「釣竿一刀流【渦潮】!

 ……これで防げるとは思いませんが一応」


 嫌な予感を察知した一部プレイヤーが先行して動き始めた。

 そして、全体の指揮官である【検証班長】も慌てて対応し始めた。


 「これは嫌な予感がします。

 みなさん、死に物狂いで防御するか逃げてください!

 【上位権限】レイドボスの必殺スキルの近くにいてろくなことなんて起きるわけないですから!」


 【検証班長】はプレイヤーたちに警告をしているが、果たして間に合うか!?




 


 【【上位権限】ー【LINK SKILL】!】


 【繋ぎ、繋がるのは私の配下の紡いだ道程】


 【聖なる獣たちの織り成す聖域に誘う】



 【始まりの花の【生命花】は寵愛の紋】


 【スキル発動!【花上楼閣】LINK【聖獣結界υ】!】


 

 【鳥の聲で【燃焼】するのは親愛の標】


 【スキル発動!【渦炎炭鳥】LINK【聖獣結界ξ】!】



 【流れ征く風に身を【流動】させるのは溺愛の験】


 【スキル発動!【波状風流】LINK【聖獣結界Ω】!】



 【阿吽の月で【伝播】するのは相愛の印】


 【スキル発動!【渡月伝心】LINK【聖獣結界μ】!】


 

 【集いし【しるし】が世界の全てを包み込む【四聖結界】】


 【SKILL CHAIN LINK!【花上楼閣】【渦炎炭鳥】【波状風流】【渡月伝心】!】


 【SKILL【花鳥風月】!】






 【菜刀天子】の詠唱が終わった瞬間、【菜刀天子】を縛っていた黒枝が霧散していき、世界は黄金の光に包み込まれた……

 世界から音が消え、俺たちは死を目前としてなお動くことが出来ず迫り来る極光に魅せられていたのだ。

 極上の美を伴ったその一撃は【菜刀天子】の言うようにここにいるプレイヤー全員に直接襲いかかっている。


 物質ではなく、概念のようなものなのか全く抵抗ができない。


 ここまで来たのに、こんな風に負けてしまうのか俺は……

 くそっ!!!












 その黄金色の世界で、俺の一番信頼する男の声がいつもより大きく響いてきた。


 【ガハハ!!!】


 【【次元天子】の必殺スキルが放たれたか!!!】


 【こうなればワシも対抗して出ねばならないな!!!】


 【【上位権限】ー【Enchanting】!!!】


 【スキル発動!【鉄壁樹林】!!!】

 

 絶望する俺の前に立ち塞がったのはガチムチな暑苦しい男だった。

 だが、いつもと姿が異なり暑苦しくも気品ある服装へと変化し、全身から異様なほどの力の奔流が発生し始めた。


 

 そして、黄金色の光から俺たちを守るように鋼鉄によって形成されている樹木が出現し、【菜刀天子】のスキル【花鳥風月】とぶつかり合った。


 この極限状況の中で聞こえるなんて走馬灯か……?

 そう思ってしまうほど脳内に直接声が響いてきている。


 そして、信頼する男の声とは別に無機質な声が鳴り響き始めた。




 【Raid Battle!】


 【鉄血森林の森人君主】


 【槌鍛冶士】


 【メイン】ー【鉄血森人君主】【上位権限】【エンチャントスペシャリスト】

 【サブ】ー【底辺種族】【幻界超技術】【プレイヤー(偽)】



 【【上位権限】によって隠されている】


 【【上位権限】によって隠されている】 


 【【上位権限】によって隠されている】


 【【上位権限】によって隠されている】


 【【上位権限】によって隠されている】


 【【上位権限】によって隠されている】


 【それでも隠者は唯一無二の相棒を選んだ】


 【さあ、一心同体であり相棒である親友(とも)のためにその身を投げ出すぞ!!!】


 【レイドバトル同時発生につき難易度が上昇します】

 【レイドバトルを開始します】






 【ワシとお前、力を合わせて【菜刀天子】を打倒するぞ!!!】



 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[一言] ここにきて明かされる真実! 槌鍛治士は一話から包丁戦士の世話焼いてましたからね。
[良い点] ついにですか 正体を表すのを待ちに待っていましたが出てくるタイミングもアナウンスも最高ですね [気になる点] 幻界? また別の世界があるのか [一言] 実は槌鍛冶士が最後の最後に裏切ったり…
[気になる点] ここでついに鉄血森林君主キタ!!
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