604話 集団リンチ
「いくぜぇぇぇぇ!!!!」
「おりゃぁあああああああ!!!」
「うおおおおおお!!!」
かなり大多数のプレイヤーが死に戻りしていったが、その中でも残ったプレイヤーたちが黄龍の姿の【菜刀天子】へと攻撃を加えていっている。
スキルを使う者や、チュートリアル武器での攻撃を行う者など様々ではあるが、その攻撃が向かう先は一つだ。
人型レイドボスではなくなったのもあって、ただ攻撃を当てるだけならこれまでよりも命中率は上がっている。
【菜刀天子】は黒枝と麻痺で動けなくなっているからなおのことだろうな。
こうして【タウラノ】に煽てられたプレイヤーたちが攻撃しているので俺も便乗して包丁で切りつけている。
うりゃっ!うりゃっ!
「オレもやるぞwww
風船偽竜のブレスをくらえwww」
【風船飛行士】は銀色の鱗に覆われた風船偽竜のブレスを【菜刀天子】の顔面にぶつけ始めた。
わざわざそこを狙うとは何とも性格の悪い……
完全に【菜刀天子】への嫌がらせみたいなものだろ、それ……
まあ、結局倒すんだからどこを狙おうが俺の知ったことではない。
「【ペグ忍者】も行くのらよ~!
にゃにゃにゃにゃにゃ!!!!」
【ペグ忍者】は指と指の間にペグを挟み込んで切りつけていっている。
【ペグ忍者】はスキルを連発していたのもあって、今はスキルを使えない状況なのだろう。
それでも種族転生したプレイヤーの基本スペックは高い水準にいるため、通常攻撃であっても侮れないものだ。
「私は……これでいきましょうか。
釣竿一刀流【怪力】!」
【釣竿剣士】は釣竿一刀流の中でも使う頻度が少ない珍しい技を使い始めた。
釣竿一刀流【怪力】は特殊なエフェクトを発生させることのない釣竿一刀流で、攻撃範囲が増えたりとか特殊な追加効果があったりとか、異質な動きをしたりとかはない。
ただ単純に己の筋力を向上させるだけの釣竿一刀流だ。
だからこそ、流れの激しい戦いの中で流れを変えることができるものでは無いので使われることは少なく、こういった相手の身動きが取れない場合などの特殊な状態で使われるのだ。
どういう原理かは不明だが、全身の筋力を増大させた【釣竿剣士】はまるで鉄の棒で殴りつけるかのようにして【菜刀天子】の身体に釣竿を叩きつけている。
うわっ、痛そう……
あれをくらうのは俺はゴメンだな。
ability【現界超技術】のデメリットによって【釣竿剣士】の与えるダメージは減少させられているはずだが、あれほどの力で殴られたら減少されたとしてもそこそこのダメージは入っているはずだ。
「俺たちもいこうかフェイちゃん!
スキル発動!【竜鱗図冊】!」
【わ、私も一緒にやります!
す、スキル発動!【竜鱗図冊】!】
【フランベルジェナイト】と【フェイ】も巻物から竜の鱗を発生させて身に纏い始めた。
そして、手に持っているチュートリアル武器にも張り付くように鱗が収まっていく。
「竜の力を身につけた俺はワンランク上をいく!
この次元のため、そして何よりもフェイちゃんのためにお前を倒させてもらうぞ!」
【う、うれしいです……でも見ているだけだはなく……
わ、私も支援しますよ!
だ、【堕音深笛】!】
【フランベルジェナイト】は竜の力を解放したそのフランベルジェで黄龍【菜刀天子】の胴体に思いっきり切りつけていった。
そして、そんな【フランベルジェナイト】を手助けするように【フェイ】は口に咥えている深淵フルートで演奏し、深淵の黒い霧を発生させていく。
この霧の行く手を阻むものはなく、【フランベルジェナイト】へと一直線に流れるように移動すると【フランベルジェナイト】の動きがより活発になりキレが増してきた。
「ありがとうフェイちゃん!
君のお陰でどこまでも戦える気がするよ!」
そう言いながら【フランベルジェナイト】は【菜刀天子】の身体をどんどん切り裂いていっている。
他のモブプレイヤーたちは攻撃を通すのに一苦労しているというのに、この【フランベルジェナイト】はそんなのお構い無しというように刃を通していっている。
【竜鱗図冊】と【堕音深笛】によるバフの影響もあってステータスが一時的に向上しているというのあるが、それに加えて【フランベルジェナイト】の剣捌きが突出しているからだろう。
【菜刀天子】の身体を覆い尽くしている黄色の鱗と鱗の間を的確に狙い刃で切りつけているからこそ、【菜刀天子】の鱗の下にある肉体に直接切りつけることが出来ている。
ただやみくもに切りつけているだけでは頑丈な鱗に阻まれて、あの辺にいるモブプレイヤーたちのように金属に弾かれたように攻撃を通さないのだ。
ちなみに俺は突き刺してから傷口を広げるように切っているのでやりやすい。
包丁は手回ししやすいからな、リーチを犠牲にしている分こういうときは役立ってくれるな!
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