599話 負債超過
【スキルチェイン【名称公開】ー【修練防具上位解放】【魚尾砲撃】】
【追加効果が付与されました】
【デメリットが増加しました】
【特殊作用が発生しました】
ボマードちゃんによる奇形【魚尾砲撃】が放たれ【菜刀天子】へと向かっていく。
極太レーザーなのには変わり無いが、漆黒の爆煙を纏いながら飛んでいっている。
しかもそれは一つではなくフィッシュテールドレスの端が発射口となり合計8本の極太レーザーになったようだ。
通常の【名称公開】と【魚尾砲撃】のスキルチェインは爆発が三連続で起こるものだったが、【修練防具上位解放】を含むことによって変質したようだな。
爆煙を纏った極太レーザーが【菜刀天子】に当たろうとして……
【いや、当たりませんが……】
【数を増やしたところでそう易々と当たってあげるほど今の私は落ちぶれていませんよ】
……かわされてしまった。
黄龍の姿になっている【菜刀天子】はその身体をスクリューのように回転させ捻ることによって8本全てを回避して見せたのだ。
流石は【上位権限】レイドボス……
だが、狙いはそれだけじゃないんだよなぁ!
【よくやった我の配下を身に宿す底辺種族よ!】
【【儡蜘蛛糸】よ、【魚尾砲撃】を傀儡とするのだ!】
ルル様は俺たちの狙いに気づいたようで、ボマードちゃんの放った【魚尾砲撃】を蜘蛛糸で捕らえて方向転換させていっている。
糸で操られるように目まぐるしく軌道を変えていく【魚尾砲撃】に俺たちは呆気に取られてしまった。
……この展開を読んでいたのにも関わらず、ルル様の操作に魅せられてしまったのだ。
糸を噴き出す触手をまるでピアノでも弾くかのような繊細な動きで動かし、荒々しい極太レーザーを何本も操っている姿はラスボス……いや、裏ボスのような圧倒的な威厳を醸し出している。
【くっ、ちょこまかと羽虫のように追いかけてきて鬱陶しいですよ!】
【これだから深淵種族は陰湿なんですっ!!】
【菜刀天子】はルル様によって操られているボマードちゃんの【魚尾砲撃】に対して苦言を呈していた。
黄龍としての身体を使い逃げ回っているが、いかんせん極太レーザーを回避しきれるほどこの天子王宮は広くない。
俺たちの攻撃程度ならかわし切れるんだろうが、相手はルル様だからな。
【こうなったら、一度脱出をして体勢を立て直すしか……】
おっ、逃げる気か?
そうはさせないぞ!
称号【煌めく血塗られた闘志1位】セット!
すると、無機質な声が鳴り響きはじめた。
【Warning!】
【孤高なる闘志の持ち主よ】
【挑戦者を打倒せよ】
【【アリーナチャンピオン】権限により挑戦者の行動範囲を制限】
【挑戦者【菜刀天子】は【包丁戦士】から一定距離離れることができなくなりました】
俺がセットした称号【煌めく血塗られた闘志1位】に秘められたアリーナチャンピオン権限によって遠ざかっていく最中だった【菜刀天子】が壁に阻まれたかのように進めなくなっていた。
【劣化天子っ!!】
【ここでそれを使うとは私への挑戦ですか?】
いや、アリーナチャンピオン権限の文言からするとお前の方が挑戦者ってことらしいがな。
それに、俺は今のところお前とタイマンする気はない。
時間稼ぎとかしないでルル様とぶつかってくれていれば解除するさ。
【劣化天子……小賢しい真似を……っ!!】
【いいでしょう、ではその権限を解除しなさい】
……まあ、いいか。
俺がこの場で【菜刀天子】とタイマンして勝てるとは到底思えないからな。
あくまでも逃げるのを止めただけだ。
どうやら準備も整ったようだし、そろそろいいか。
ほれ、解除したぞ!
俺がアリーナチャンピオン権限を解除した瞬間、【菜刀天子】はバランスを崩し頭上に待機していたルル様の操る【魚尾砲撃】が【菜刀天子】の死角から全弾直撃していった。
【レイドボスの能力に一部制限がかかりました】
【制限時間00:30:00】
【カッカッカッ、【包丁戦士】よ、いい仕事をするではないか!】
【気持ちいいくらいに攻撃が当たったのぅ……】
【次元天子もいい様だのぅ!】
攻撃を見事【菜刀天子】に叩き込むことに成功したルル様は相当ご機嫌のようだ。
長年の宿敵にクリーンヒットを食らわせたのだから当然だろうが、これ以上ないくらい気分が良さそうだ。
それと対照的なのは……
【くっ、身体が重いですね……】
【ダメージの影響もありますが、それ以上にパフォーマンスが落ちています】
【これは……】
【菜刀天子】が身体を小刻みに動かしながら様子を確認しているが、どうもさっきまでよりも動かしにくそうだ。
「これが【名称公開】の新たな使い方です!
いや~、【修練防具上位解放】が出来るようになってから攻撃に付与できるようになったんですよ~!」
「俺様の【魚尾砲撃】だけだけどナァ!
イャ~、宿主様への俺様の【侵略】が上手く馴染んでいる証拠だゼェ!」
なんか不穏な発言がジェーライトから聞こえたが、この場でどうこうって話じゃないから頭の片隅にだけ置いておこう……
「私の大活躍ってことですね!」
【鬱陶しいですよ】
「あっ、【名称公開】!
ボマード、死にます~!」
調子にのっていたボマードちゃんは【菜刀天子】のルル様を相手にしている片手間で死に戻りさせられてしまったようだ。
なんともあっけない……
【レイドボスの能力に一部制限がかかりました】
【制限時間00:40:00】
あいつ、何気に自分の仕事はこなして死んでいったぞ。
ボマードちゃんは頭お花畑だが、仕事人ではあったな。
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