592話 はりつめた緩み
「フェイちゃん、俺にバフを回して欲しいな!
スキル発動!【波状風流】!」
【わ、わかりました!
だ、【堕音深笛】……】
「ふひひっ、あてぃしは【フランベルジェナイト】を支援しますぅぅ……
スキル発動ぅぅ、【堕音深笛】ぃぃ!」
まず【フランベルジェナイト】が風のスプリンクラーを設置し、その推進力を利用して駆け抜けるように【ミューン】に斬撃を与えていく。
【フェイ】と【骨笛ネクロマンサー】の支援もあってか、スピードも威力も段違いだ!
「【虫眼鏡踊子】さん、力借りるッスよ!
ストックスロット2【獣王無尽】ッス!」
【バットシーフ】後輩は【菜刀天子】と戦っている時の【虫眼鏡踊子】からコピーしたと思われるスキル【獣王無尽】を発動して、身体にオーラを纏いバットで【ミューン】を殴り付けていく。
「ガハハ!!!
ワシは普通に槌で殴りにいこうか!!!」
【槌鍛冶士】は特に犠牲の少ない攻撃スキルを持っていない(?)からか、そのままチュートリアル武器の槌で殴り通り抜けていく。
「皆さん凄いやる気ですよね!?
いや~、私は爆撃するんですけど!」
ボマードちゃんは近接攻撃プレイヤーが一通り駆け抜けていったのを確認してから拡散スイカの種を加工した爆弾を【ミューン】に投げつけてノックバックさせていく。
「俺たちそろそろ死にそうだし、デバフでもかけておくか
スキル発動!【阻鴉邪眼】!」
「おっ、それいいな!
スキル発動!【阻鴉邪眼】!」
「拙者【包丁戦士】好き好き侍。
義によってデバフを重ねるで候。
スキル発動!【阻鴉邪眼】!」
最後にだめ押しするかのように【ハリネズミ】のメンバーたちが何を思ったのか【阻鴉邪眼】を発動させて【ミューン】の周りにデバフサークルを設置していった。
これで【ハリネズミ】のメンバーたちは右半身が不随になってしまったが、こいつらはここまでの戦いで既に疲労困憊だったようで、そもそもさっきからほとんど動けていなかったから大差はないか。
そして、そのデバフサークルのお陰で【ミューン】の耐性も低下したからか、まだ麻痺が僅かに継続しているようだ。
嬉しい誤算だな。
その隙に俺たちは体勢を整え直していく。
……これで準備完了!
「これが、ていへんしゅぞくたちの、かのうせい……?
でも、にせもの、みとめないっ!」
【ミューン】は一瞬考え込む仕草をした後、自力で麻痺状態を打ち破るように身体に気付けし復帰した。
麻痺状態こそ解除されてしまったが、ダメージはかなり与えられたようで【ミューン】の身体はボロボロになっている。
レイドボスだった【ジェーライト=ミューン】ならこの攻撃でもまだピンピンしていただろうが、今のこいつにそこまでの自力はないようだ。
ちょっと安心したぞ。
「こうなったら、きょかされてる、あれに、ちからをつかうっ!」
おっ、何かしてきそうだな!?
今まで俺がこいつに接してきてこの状況でやりそうなことで思いつくことと言えば……っ!
まずい、お前ら各自退避、防御、迎撃なんでもいい!
攻撃に備えろ、死ぬぞ!
「……不允许假品っ!
【兎月伝心】」
【ミューン】は手に装着していた爪から紫色の光の円環を発してきた。
これがこいつの得意技、【伝播】の力を持った強スキル【兎月伝心】だ!
「ああああっ、ストックがもうないッス!!!」
「俺たちは右半身動かないからなー」
「死んだなこれ!」
「仕方ないか……」
対処が遅れた【バットシーフ】後輩と【阻鴉邪眼】のデメリットで右半身が動かない【ハリネズミ】のメンバーたちがどんどん死に戻りしていく。
ちっ、ここまでクランメンバー全員生存してたのにここで一気に脱落か……
だが、そんなことを考えている余裕はない。
【骨笛ネクロマンサー】、俺に合わせろ!
スキル発動!【波状風流】!
【スキルチェイン【天元顕現権限】【波状風流】】
【追加効果が付与されました】
【スキルクールタイムが増加しました】
俺は天子の力に【流動】のスキルである【波状風流】をスキルチェインさせていく。
すると、風のスプリンクラーが設置されそこから見えざる刃が飛んでいき、【ミューン】の生み出した紫色粒子の円環を切り崩していく。
「ふひひっ、またあてぃしの新スキルの出番みたいですねぇぇ……
ability発動!【粉骨再身】んん!!
スキル発動!【黄泉月心】んん!!」
abilityによってさっき回収していた溢れんばかりの【渡月伝心】の粒子を【骨笛ネクロマンサー】は骨粒へと変換すると、その骨粒を活性化させて【伝播】の力を伴った骨粒粒子として【ミューン】の【兎月伝心】と相殺させていっている。
これでどうなるかだな……
【Bottom Down-Online Now loading……】