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591話 コラテラルダメージの奮闘(挿し絵あり)

 「おもしろいから。

 すこし、はやさを、あげていく!」


 【ミューン】は笑みを浮かべたまま再び俺たちの方へと急接近してきた、ジェーライト=ミューンだった時にも何度も見た突撃攻撃だな?

 距離を離したはずなのにこの一瞬でもう詰めてきやがったぞ!?

 どんなスペックしてるんだこいつは、どこがMVPプレイヤーより少し強いだよ……

 めっちゃ強いじゃん!



 とりあえずこの突撃を止めないとな、【フランベルジェナイト】っ!

 一緒に前で止めるぞ!


 「分かったよフェイちゃん!

 二人で力を合わせて戦おう!」


 【ミューン】が放ってきた爪撃に対して、今度は俺1人ではなく【フランベルジェナイト】と共に迎え撃つ。


 リーチが長めな【フランベルジェナイト】のチュートリアル武器のフランベルジェで牽制しつつ、【フランベルジェナイト】だけではどうしても発生してしまう隙をリーチの短い俺の包丁の手数で補っていく。


 こうでもしないと【ミューン】の高速攻撃を安定して受け止めるのは難しい。

 逆にこれ以上受け止める側のプレイヤーを増やしたとしても人型の相手では逆効果になるだろう。

 俺と【フランベルジェナイト】が上手く動けなくなるからな。


 

 「いいね、いいね。

 ていへんしゅぞくしゅっしんでも、ここまで、できるのは、すごい!」


 鉤爪による攻撃が加速していくのにつれて【ミューン】のテンションのボルテージも上がっていっている。

 俺たちのようにベースが底辺種族であるプレイヤーが【ミューン】の思っている以上にやれることに驚きつつも、さらに戦闘意欲が高まってきているようだ。


 「それなら、これ、どう?」


 【ミューン】は猫獣人系の種族特有の超加速を使って俺たちの後ろに回り込んできた。

 やばいっ、流石にこれは対応できないぞ!?

 【ペグ忍者】よりも圧倒的に加速の制御が上手すぎる!?


 「その速度盗むッスよ!

 ストックスロット1【ミューンの超加速】!」


 

 前のめりで攻撃しようとしていた俺と【フランベルジェナイト】では対応できなかったが、後方で待機していた【バットシーフ】後輩が即興で【ミューン】の超加速をコピーして【ミューン】の攻撃に割り込んできた。


 そうして【バットシーフ】後輩のバットの打撃と【ミューン】の鉤爪がぶつかり合った。

 超加速を二人とも使っているという点では互角だが……



 「いろいろ、たりない……」


 「ギャフン!?

 何でッスかぁっ!?」


 【バットシーフ】後輩は出落ちと言わんばかりに後ろに吹っ飛ばされていった。

 ちょっと俺に当たりそうでヒヤッとしたぞ……



 「フェイちゃん、あれは【ミューン】の方が元々スペックが高いのと、超加速をしていた距離が【ミューン】の方が長かったから同じ加速を使ってもこの結果に繋がったんだよ。

 フェイちゃんは気をつけてね」


 【は、はい……】



 【フランベルジェナイト】は【フェイ】に今の現象について説明している。

 たしかに、先に超加速していた【ミューン】の方が助走もついているし結果的に攻撃の威力が高まった状態になるっていうのはわかる。


 だが、【バットシーフ】後輩のあの吹っ飛ばされっぷりからすると、それ以上に身体スペックの差で押し負けているような気がするな。

 あの聖獣の人型アバター……【菜刀天子】の言葉からするとプレイヤーのものと同じ規格に近いものなんだろうが、ハイエンドコンテンツをある程度網羅したらプレイヤーが素でああなれるというとでも言うのだろうか。


 【ミューン】は俺が【深淵顕現権限】……いや【深淵纏縛】を使った状態と互角レベルだぞ……?

 つまり、全盛期ジェーライト=ミューンには遠く及ばないが下手なレイドボスと同じくらいのスペックがあると考えた方がいいだろう。

 

 【菜刀天子】のやつ……面倒くさい相手を用意してきて……恨むぞ!



 「みじゅくだけど、ふせがれた……

 それなら……これ」


 【バットシーフ】後輩が身を呈して攻撃を防いだのを見て、【ミューン】はさらなる行動に出た。


 左右にステップを踏みながら揺れるように俺たちを撹乱させてきたのだ、あまりの速さに残像すら見えるぞ!

 野性味溢れるその動きに俺たちは翻弄されてしまっているが、【ミューン】はまだ攻撃を仕掛けてこない。

 こちらの反応を窺っているのだろう。



 「ガハハ!!!

 ここはワシの出番のようだな!!!

 ワシが電気属性を付与して作り上げクラフトした【麻痺玉】だ!!!

 これは痺れるぞ!!!」


 【槌鍛冶士】がそのガチムチな腕でガラス玉のようなものを投げて【ミューン】にぶち当てると、【ミューン】は急にスピードを落とした。

 思うように動けなくなったことに不信感を持った【ミューン】は一度バックステップをとり、俺たちから距離を置いてきた。


 「……しびれる。

 これ、なに?」


 「ガハハ!!!

 さっきも言っただろう、【麻痺玉】だ!!!

 ダンジョン産の【電気鰻の髭】、【電精霊のエキス】を素材にして麻痺効果を生み出したのだ!!!

 効くだろう!!!」


 「……こそく」


 流石は【槌鍛冶士】、アイテムで【ミューン】に一泡吹かせるとはな!

 このまま圧しきるぞ!




 【Bottom Down-Online Now loading……】

Twitterでキルノさん(@soyo_kiruno)に【包丁戦士】を描いていただきました!

闇に映える包丁と、今にも襲ってきそうな臨場感が最高です!


もしよろしければ元ツイートの方も覗きにいって見てください!


挿絵(By みてみん)


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