586話 成長の証
「私の爆撃をくらってくださ~い!
いや~、爆発させれるのは最高ですね!」
「ガハハ!!!
ワシも便乗して爆撃だ!!!」
「俺たちも攻撃だぁ!」
「ヒャッハー!
やってやるぜ!」
【フランベルジェナイト】が【波状風流】の核から放たれる斬撃を斬り伏せている間にボマードちゃんと【槌鍛冶士】が拡散スイカの種を内蔵した特製爆弾で核に直接攻撃をいれている。
さらに、周りに群がっていたモブプレイヤーたちも各々のチュートリアル武器でタコ殴りにしている。
無色透明で、何処にあるのか分からないはずの【波状風流】の核だが、【フランベルジェナイト】が受け止める身体の向きから推測して攻撃したようだ。
まあ、これだけのプレイヤーが一斉攻撃しているんだから当たるだろう。
「そして、俺がトドメをさそう!
やあぁぁぁあ!!!」
【【フィレオ】極小付与】
【フェイ】がなんか怪しげなワードを呟いて【フランベルジェナイト】にエンチャントしていくと、【フランベルジェナイト】は見えざる核にチュートリアル武器であるフランベルジェを突き刺し、横に一気に振り抜いた。
すると、核があったと思われる場所からガラスが割れたような音がしたと思うと、そこを中心に暴風が吹き荒れていった。
おそらく【波状風流】の核の中に止めていた【流動】
【これは見事な……というより異様な対応力ですね……】
【私の【波状風流】を完全に見切っていたと言っても過言では無さそうです】
【これほどまでの異質さは何か理由がありそうですが、今は一旦置いておくことにしましょう】
【今一番重要なのは試練の進行ですから】
【プレイヤー一人一人に上位権限AIであり、次元天子である私が付き合う道理もないでしょう】
どうやら【フランベルジェナイト】の出自について深く言及するつもりはないようだ。
俺としてはちょっと安心した。
……安心したのだが、一方で根拠のない不安も込み上げてきた。
なんだこの不安な気持ちは……?
【菜刀天子】の発言で引っ掛かることなんて無かったはずだが。
やはりこのまま漠然と進むのは良くない気がするな。
具体的に何をすればとか、何がダメなのかは分からないが……
「やりましたね。
これで第三の試練突破です。
今までのレイドボス攻略方法がそのまま活かされているので、大がかりな攻撃のわりにはボクたちも充分に対応できているというのが大きいだろうね。
【渦炎炭鳥】は【クシーリア】、【花上楼閣】は【ウプシロン】、【波状風流】は【オメガンド】が使ってきたスキルや攻撃方法のデッドコピーみたいなものですから。
【菜刀天子】の攻撃としてはあまり見ないものでも、初見の攻撃ではないというのが助かります。
ボクも深く考えなくて済むから楽でいいかな」
【検証班長】は今のところの状況を見た心境を俺に語ってきた。
表情を見ると若干余裕がありそうな様子だ。
それもそのはず、【検証班長】のメインの役割である検証、考察に関するような新たな事例は巨大な設置型【花上楼閣】くらいしか無かったから、プレイヤーたちの指示に専念できているというのもあるだろう。
既知の攻撃や行動パターンだけならやりやすいはずだ。
【オメガンド】の試練もある程度パターン化されてたから同じ感じだろう。
なんか暇そうにしてる俺の遠距離攻撃部隊の二人、【菜刀天子】の動きが止まっている今がチャンスだぞ。
ほら、早く攻撃しろよ!
「はいはい、オジサンも今のうちに攻撃しておこうかねぇ……
スキル発動!【レインボウ】!」
「くっくっくっ、我輩の漆黒闇の力を帯びた魔法を披露するとしようか!
漆黒闇混沌魔法【暗黒曇天魔導弾】!」
次の試練が始まると【菜刀天子】に攻撃を当てる余裕が無くなるからな。
この隙に攻撃させるしかないだろう。
ただ変に近寄ろうとするとこちらに被害が出やすくなるから、こういう時こそ遠距離攻撃部隊の活躍が必須だ。
七色に輝く矢を放った【短弓射手】と、深淵の力とはまた異なる黒い禍々しい魔力を込めた魔法の弾丸を撃ち出した【黒杖魔導師】。
スキル攻撃のクールタイムを狙ったその一撃は【菜刀天子】に反応させずに直撃させることに成功した。
【……まあ、これくらいのダメージは必要経費ですね】
【わざわざ大規模なスキルを使っているのですから当然です】
【ですが、私が見せた隙を好機として逃さずに狙ってきた点は誉めて上げましょう】
【あなた方プレイヤーもこのボトムダウンーオンラインの世界で、低能で虚弱ながらも成長したという証です】
【私がこれまで導いてきたのですから、それくらいはやってくれないと困りますが……】
【Bottom Down-Online Now loading……】