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584話 天子の見えざる刃

 「これでっ!」


 「終わりダヨ!」


 「なんとか削り取れたッスよ……

 ギミック解除だけでこれだけ苦労するレイドボスなんて今までのゲームにはいなかったッスから疲れたッス……」


 ご苦労【ブーメラン冒険者】、【短剣探険者】、【バットシーフ】後輩……とその他モブプレイヤーたち!


 二方向からの一斉攻撃によってヒビが入った巨大な岩の花弁は中央からぱっくりと割れていっている。

 今も地面に向かって崩れ落ちている最中だ。

 完全に崩壊するのも時間の問題だろう。



 【ふむ、手堅い手でクリアしてきましたね】


 【若干無茶してきたようですが、今まで見てきたプレイヤーたちの動きの中ではまともに思えます】


 【いつもこのように素直にクリアしてくれていたら私も導きやすいのですが……】


 【さて、次の試練にいきますか】






 「よしっ!これで第二の試練もクリアだ!」


 「死に戻りも出てるけどいい調子じゃね?」


 「【オメガンド】の方が苦戦したまであるな」


 「わかるわ~」


 モブプレイヤーたちが試練達成で浮き立っているようだ。

 口々に軽口を発しているのがその証拠だ。

 ……だが、言われてみると妙だな。

 試練は順調にクリアして、想定よりもこれまでの被害は少ない。

 しかし、あの余裕綽々な【菜刀天子】の顔を見ているとどうも何かが引っ掛かる。 

 まるで重大な何かを見落としている……そんな心地だ。



 それでも俺の心配はよそに新たな試練へとステージが切り替わっていくようだな。


 【第三の試練】


【【流動】の力ー【波状風流】】


 【見えざる風の刃を、その矮小な身体でどう対応するのか見物ですね】


 【愚かな者ほど見えないものを恐れる……とは言いますが】


 【ここにいる底辺種族たちはどうでしょうか?】



 【菜刀天子】はそう言いながら空中に力を集めてスキルを発動させた。

 すると、不可視ではあるが強力な力を保持していると思われる核が発生した。



 この感覚は覚えてるぞ、【オメガンド】が使ってきたやつだ。

 ってことは……


 「ぐわわわっ!?

 や、ら、れ、た……」


 「あっ(ヒュン)」


 俺の前で浮かれていたモブプレイヤーたちが不可視の斬撃によって真っ二つに切断されて死に戻りしていった。

 これは普通に不味いぞ!?


 俺には【波状風流】の不可視の斬撃に対する具体的な対応策がないからな……

 とりあえず間に合わせで包丁の腹を【菜刀天子】側に向けておく。

 すると、十秒後くらいに俺が手に持っていた包丁に強い衝撃が走った。

 直感で受け止めることが出来たらしい。



 そしてそのまま包丁の向きを調整して斬撃を受け流し、勢いを殺した。

 これが俺の防御の常套手段だ!

 【ジェーライト=ミューン】を相手にしていた時に徹底的に磨き上げた技術は防御であっても、今も主力級だな。

 やはり信じられるのは己の技能だ。



 「ちょっwww

 これ、オレのボーナスステージみたいなものじゃんwww

 ability【銀盃羽化】www

 見えなくても遠距離攻撃なら自動で跳ね返せるンゴwww」


 そんなことを言いながら調子にのっているのは【風船飛行士】だ。

 【風船飛行士】は手に持った銀色の杯を手前に構えてニタニタと笑っている。

 すると、一瞬鈍い音が響き渡ったかと思うと全く違う場所で再び鈍い音が連続して聞こえてきた。


 

 「どうよwww

 オレが跳ね返した斬撃が他の斬撃とぶつかり合ってるンゴwww

 テラワロタwww」


 見えない攻撃にも自動で反応するって凄いな……

 【風船飛行士】が戦場を引っ掻き回しているお陰で、【菜刀天子】が【波状風流】を発動したばかりの時よりもプレイヤーの被害は減ってきている。

 タンクプレイヤーたちは壁を張るように横一列に並びスキルを後方へと飛ばさないような構えをしている。

 その後ろに隠れているのはクラン【お屋敷組】、【冒険者の宴】の遠距離攻撃部隊と【検証班】の非戦闘要員だ。


 このレイドボスには有事に対応できるように生粋の生産プレイヤーや、観察専門のプレイヤーも参加している。

 【検証班長】もその観察専門のプレイヤーのうちの1人である。



 「スキル発動!【近所合壁】ですわ!

 ……次から次へときりが無いですわよ。

 早くこのギミックを解除してもらって、ワタクシは一旦息を入れさせていただきたいですわ!

 集中力が持ちませんでしてよ……」


 【トランポリン守兵】お嬢様は戦闘開始から早々に全プレイヤーに意識を回しながらトランポリンを生成して守り続けているので、現状一番負担のかかっているプレイヤーと言っていい。

 本当は並列思考のできる【風船飛行士】がその役割を担えたら良かったんだが、あいつはあいつで防御してるから肩代わりも出来ないし本当にきつそうだ。


 額から汗がしたり落ちてるくらいだし。



 そんな惨状を見てか、このタイミングで1人の男が立ち上がった!


 「それなら俺が終わらせにいこうか。

 さあ、フェイちゃん行くよ!」


 【ふ、【フランベルジェナイト】さんなら皆さんを助けられますよね。

 わ、私も頑張りますよ!】




 そう、電波系イケメンの【フランベルジェナイト】だ!






 【危険人物が来ましたね……】


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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