583話 花弁前線
無差別に放たれる岩の花弁をくぐり抜け、その発生源へと到達した俺たちは【釣竿剣士】とそのクランメンバーたちが攻撃を防いでいる間に攻勢に出ることにした。
「俺っちが先陣を切るッスよ~!
先輩の力を借りさせてもらうッス!
ストックスロット1【天元顕現権限】ッス!」
まず行動に移ったのは【バットシーフ】後輩だ。
その漆黒の装いと対照的になる色である黄金色の左翼を背中から生やすと上空へと飛んでいった。
この花弁、ほとんどが地上に水平に放たれているので上空であれば弾幕は薄いと判断して俺が指示を出しておいた。
ってなわけで、俺もスキル発動!【天元顕現権限】!
俺も【バットシーフ】後輩に追随する形で黄金色の左翼を背中に伴うと、迫り来る岩の花弁をくぐり抜けながら上空へと飛び立った。
【低能な底辺種族と劣化天子にしてはよく考えましたね】
【それなら攻撃を回避するのは容易になるでしょう】
【ですが、そこからどう攻撃しますか】
【バットシーフ】後輩は【菜刀天子】の発言に反応せず、スキルを発動していく。
「スキル発動!【花上楼閣】ッス!
【花上楼閣】には【花上楼閣】をぶつけるに限るッスよ!」
【バットシーフ】後輩は岩の花弁を空中に生み出すと、そこから弾丸のように射出し始めた。
【天元顕現権限】を発動した状態だから【バットシーフ】後輩もバージョン違いの聖獣スキルが使えるってわけだ。
その弾丸の狙いはもちろん、【菜刀天子】が設置した巨大な岩の花弁だ!
【バットシーフ】後輩が生み出した岩の花弁は【菜刀天子】が設置したものと比べるとかなり小さく、石の礫ほどではあるが上空から勢いよく射出している関係で一点への攻撃力は侮れないはずだ。
そして、やはり俺の思った通りに岩の花弁弾丸が当たった部分は少しずつだが欠けていっている。
よしっ、俺も便乗して手助けしてやるか。
スキル発動!【花上楼閣】!
【スキルチェイン【天元顕現権限】【花上楼閣】】
【追加効果が付与されました】
【スキルクールタイムが増加しました】
俺が【バットシーフ】後輩のやつから追加で生み出した岩の花弁弾丸は、【バットシーフ】後輩が生み出したものよりも若干大きい。
これは俺の種族……深淵天子の補正だろう。
一応聖獣や天子が使うスキルなんだから、その関係の種族で使った方が強くなるのは自明の理だ。
俺と【バットシーフ】後輩は同じ場所を狙い、確実に巨大な岩の花弁を削り取っていっている。
地上から見ると氷柱でも降っているような光景になっているんだろうが、そんなのはお構い無しに連射だ!
花弁の中央に向けて放たれている岩の弾丸だが、それとは別に花弁の外側からの攻撃も始まったようだ。
「ようやく私の出番だねっ!
スキル発動!【竜鱗図冊】!
ability発動!【天地逆転】!」
「動かない相手なら私の超攻撃力で削り取ってあげるヨ!
スキル発動!【竜鱗図冊】!
ability発動!【天手古舞】!」
【釣竿剣士】に追随していた攻撃部隊にいた【ブーメラン冒険者】と【短剣探険者】がそれぞれが手に持ったチュートリアル武器と自らの身体に、スキルによって巻き物から発生させた竜の鱗を纏わせていく。
この双子は元々種族【竜人】でパワーが上がっているのだが、追加で竜の力を纏わせることによって限定的ではあるが超攻撃力を手に入れられるってわけだ。
そんな竜の双子たちが巨大な岩の花弁へと攻撃を仕掛けていく。
「イクヨ!はあぁぁぁあ!!!!」
「私はいつもはサポート寄りだけど、今は攻撃に専念させてもらうよっ!
あっ、ブーメランでも岩が削れるみたいだよっ!」
上からと横から、それぞれがそれぞれの方法で巨大オブジェクトに攻撃を叩き込んでいる。
だが、流石に劇的に破壊できるというわけにもいかずチマチマと削っていっている状態だ。
その合間にも岩の花弁が無差別に放たれているのも忘れてはいけない。
「俺たちで守りきるぞ!」
「あー、この攻撃いつ止まるんだよー」
「はやく終わらねーかな……」
「みなさん、生産プレイヤーならしゃきっとして守りに専念してください!」
止まる気配のない弾幕に集中力を欠こうとしていたタンクプレイヤーたちだが、それに釘を刺したのは釣竿一刀流で花弁を次々と粉砕している【釣竿剣士】だ。
先陣を切っている【釣竿剣士】が言うのだから説得力はある。
あるが……
「おれ、【釣竿剣士】ちゃんの言う生産プレイヤーの定義がわかんねーよ」
「安心しろ、俺もだ」
「だよな~」
……ちなみに俺も同感だ。
【劣化天子と同じ意見なのは気がのりませんが、同意せざるを得ないですね……】
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