582話 乱れ咲く花
【第一の試練は突破と判断して問題なさそうですね】
【低能な底辺種族たちにしてはよく足掻いたと誉めてあげますよ】
【ですが、息をつかせる暇は与えません】
【第二の試練】
【【生命花】の力ー【花上楼閣】】
【咲き誇る高嶺の花に群がるあなた方プレイヤーは、どのようにしてその甘い密を吸えるのか高見の見物といきましょうか】
そう宣言した【菜刀天子】はスキル【花上楼閣】を発動して広間の中心に岩で生成された10メートルほどの巨大な花弁の上に鎮座して見下ろしている。
……これは今まで見てきた【菜刀天子】が使う【花上楼閣】とはタイプが違うな……
地面に咲く形式は俺たちプレイヤーがリスポーンポイントを設置するのと同じだ。
だが、それはこんなに大きくない。
「つまりさらに別のパターンってことだなwww
この総力戦の段階まで来て新行動パターン発見とか嘘だろwww
テラワロタwww」
こらこらこら、笑ってる場合じゃないぞ!?
【その通りです】
【乱れ咲く花弁に貫かれなさいっ!】
「ぐわあああっ!?」
「せっかく総力戦に参加できたのにこんなところで死ぬなんて……」
「これは全方位攻撃でして!?
ワタクシのトランポリンでもカバーしきれませんわっ!?」
「みなさん、至急タンクプレイヤーの後ろに待避してください!」
【菜刀天子】の忠告の直後、地面に咲く巨大な花弁から次々と1メートルほどの花弁片が発射され咄嗟のことに対応できなかったモブプレイヤーたちがここに来て脱落し始めた。
それを見た【トランポリン守兵】お嬢様はトランポリンを広域に生成して守りを広げているが、360度至るところに放たれる攻撃を一人で防ぎきるのは無理がある。
なので【検証班長】が新たな待避指示を出して、タンクプレイヤーたちの負担を減らそうとしている。
勝手に動き回られるよりは、動きが纏まっていたほうが守りやすいだろうから見事な采配だな。
【その程度で防いだつもりですか?】
【この【花上楼閣】は破壊されるまで無尽蔵に攻撃を続けますよ】
【移動もさせられませんし、操作も出来ませんから普段は使いませんが】
【これだけ有象無象の敵対者がいるのならどれかには当たるでしょうから】
【わざわざ私が操作する必要がないでしょう】
「完全に舐められてるのらね~
【ペグ忍者】はそんな簡単に尻尾を掴まれるつもりはないのらよ~!」
「ほう【花上楼閣】ですか、大したものですね。
この無差別攻撃を回避できるプレイヤーは限られているでしょう。
【ペグ忍者】がそう言い切れるのはあなたが特別だからですよ」
「やったのらね!
【ペグ忍者】は特別なのら~」
お前ら……
和みながら解説しているように聞こえる【ペグ忍者】と【モップ清掃員】だが、【ペグ忍者】は持ち前の移動速度とセンスに任せて回避している。
それに対して【モップ清掃員】はタンクプレイヤーの後ろに隠れながら大声で【ペグ忍者】と話をしているのだ。
別に余力があるってわけじゃないのに、情報交換を優先するとは流石はクラン【検証班】のメンバーと言ったところなのか。
「これくらいの岩なら私と相性がいいですね!
釣竿一刀流【石砕き】!」
回避したり、守ったりしているプレイヤーたちに対して【釣竿剣士】は反撃の一手に出たようだ。
釣竿の先に取り付けていたルアーを【槌鍛冶士】お手製の鉄球に取り替えると飛び散らかしている岩の花弁に打ちつけて砕きはじめた。
流石はオブジェクト破壊にかけては右に出る者はいない釣竿一刀流の使い手【釣竿剣士】だ。
「当然ですよ、生産プレイヤーなら!
砕く、斬るなら私に任せてください」
そんな物騒なことを言いながら岩を砕きながら前進し続ける【釣竿剣士】の勢いを見て、その後ろにプレイヤーたちが続いて進みはじめた。
先頭は【釣竿剣士】、その後ろに五人ほどクラン【釣り堀連盟】のタンクプレイヤーがチュートリアル武器の盾を構えて隊列を組んでいる。
おそらく、【釣竿剣士】が砕き逃した岩を防ぎながら進むためだろう。
そして、その後ろには攻撃に自信のありそうなプレイヤーたちが続く。
俺もそこに加わり【花上楼閣】の巨大【生命花】へと一歩一歩、確実に歩みを進めている。
【菜刀天子】ィ~、今からそっち行ってやるからなぁ~!
【嬉しくない口説き文句ですね】
【Bottom Down-Online Now loading……】