579話 戦前問答
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン……ではなくて、俺たちは外壁から天子王宮へと乗り込み【菜刀天子】のいる玉座へと到達した。
これはその時に流れたレイドアナウンスだ。
【よく来ましたね、底辺種族あがりのプレイヤーたち!】
【この次元天子である私に挑もうなど100年早いと言いたいところですが、低能なあなた方に言葉による理解力は求めません】
【ですので、純粋なる私の力を以てあなた方に私に下克上を起こすということの無意味さを身体に叩き込んであげましょう】
【私はこの戦いでの勝利による経験値で包丁次元を新たなるステージへと導きます】
【それが次元天子である私の宿業ですからね】
玉座の間で俺たちと対峙した【菜刀天子】は戦闘態勢に入る前に演説のようなものを始めた。
いつもは戦闘前にこんなことを言ってきたりしなかったが、今回はいつもと違ってプレイヤーが徒党を組んで挑んでいるからその大一番ということを汲み取ってこのようにしたのだろう。
しかも、普通に発言するのではなくアナウンスを利用して直接脳内に語りかけてきている。
プレイヤーが聞き逃さないように配慮したのだろうな。
これだけの数のプレイヤーがいるから、普通に声に出すと聞き逃したり雑音でかき消されたりするからな。
【菜刀天子】は口ではプレイヤーを見下した発言を多くするが、本人(?)も言っているように宿業によってプレイヤーを導くことが身体に刻み込まれているから細かい配慮をしてくれることは多々ある。
さあ、【菜刀天子】には悪いが俺たちはお前を倒して新緑都市アネイブルを真の意味で解放させてもらうぞ!
そもそもな話、初期街にラスボスが滞在し続けるのも違和感しかないからな。
【その結果、どうなろうとも構わないというわけですか】
【いいでしょう、その蛮勇があるからこそ私の配下である4体の聖獣を打ち破ったのも事実ですからね】
【どう転ぶかはあなたたちの奮闘次第ですが、どちらにしても私はプレイヤーであるあなた方の選択を尊重しましょう】
【ですが、私が負けるなど万が一にもあり得ない話ですからね】
【千年王国計画達成は揺るがないでしょう】
【あなた方が何を選ぼうとも、私はそれを尊重はしますがねじ曲げてでも導き直します】
大した自信じゃないか。
いくら【菜刀天子】でもこの数のプレイヤー相手をするのは厳しいんじゃないか?
俺だって【菜刀天子】相手に本当の意味で本気で戦ったことはないし、手札を温存しながら戦っていた。
それを見て見くびっているようなら後悔するぞ?
悪いが、今回は温存してきたもの、使いたくても使うのを躊躇していたもの、試してすらいなかったもの……その全てを使ってお前を打倒する!
それは俺だけじゃなくて、ここに集まったプレイヤー全員が同じことを思っているはずだ。
窮鼠猫を噛む、いくら俺たちが格下だと言っても舐めていると足元を掬われるぞ!
【言うようになりましたね】
【私と出会ったばかりの頃には片手で捻り潰すことすら容易であった劣化天子が、四回に渡るレイドバトルと数々の次元戦争を勝ち抜きここまで来ただけのことはあります】
【この包丁次元を一位の位階に到達させることが出来たのは、間違いなく劣化天子による功績ですからね】
【私が介入出来たのはほんの数回だけなので、この功績を私のものであると豪語するほど私は愚かではないです】
【ですが、私は劣化天子を含めてここにいるプレイヤー全員を見くびっているわけではないということを事前に表明しておきましょう】
【そして、見くびっていないことを前提に言います】
【それでもやはり、プレイヤーのあなた方が私に敵うのは100年早いです】
【私の常識を覆すようなことが無ければ順当に私が勝つでしょう】
【既定路線です】
「既定路線とは聞き捨てなりませんね?
ボクたちが歩んできたこの道のりはこの足でその路線からはみ出ることを望んでいます。
いつまでも庇護されるだけがプレイヤーではないんだよね。
ボクがこの【菜刀天子】討伐総力戦の指揮をとる【検証班長】です。
ですので、ここにいるプレイヤーを代表して宣言しましょう」
【検証班長】はここで一息つき、息を大きく吸い込み張り裂けんばかりの大声をこの戦場へと響き渡らせた。
「ここに【菜刀天子】討伐総力戦の開始を宣言します!
では皆さんっっ!!!事前の作戦通り行動を始めてくださいっっっ!!!」
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