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576話 【菜刀天子】討伐総力戦前夜

 【Raid Battle!】



 【包丁を冠する君主】




 【菜刀天子】


 【次元天子】【上位権限】【???】




 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【次元をさまよい】


 【冒険者を導く】


 【聖獣を担うが故に】


 【深淵と敵対する】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】


 【レイドバトルを開始します】



 はい、今日も元気にログイン!

 今日はとうとう【菜刀天子】討伐総力戦……の前日だ。

 というわけで毎度恒例の……










 俺は草原エリアにある小屋のような建物の中へと入っていく。

 その中は辺りと比べると高い温度が保たれており、絶え間なく金属音が響き渡っている。

 そう、ここは【槌鍛冶士】の鍛冶場だ!

 レイドボス総力戦の前日はやっぱりここに限るよな~

 なんだかんだ俺の原点になる場所だから安心するとでも言ってもいいのかもしれないな。



 そしてこの鍛冶場を奥へと歩んでいくと、金属を叩いているガチムチのおっさんがいた。

 

 「ガハハ!!!

 とうとう明日は【菜刀天子】討伐総力戦だな!!!

 ワシも久々に昂って今日は寝れなさそうだ!!!」


 このおっさんは【槌鍛冶士】だ。

 俺の相棒と言ってもいい存在だな。


 昂って寝れないというかいつも興奮してないかお前は……?

 今さら遠足前の子供のような反応をおっさんにされても、なんと言ったらいいか分からないんだが。

 そこんところどう思うよ?

 こちとら多分年下なんだが……

 


 「ガハハ!!!

 細かいことは気にするな!!!

 興奮するのに年齢は関係ないからな!!!

 そういうお前はどうなんだ、これまでとは規格の違う相手にテンションが上がったりしないのか!!??」


 くっ、それを言われると俺も弱いな……

 興奮していないかと言われると嘘になる。

 じゃなかったらわざわざこの鍛冶場まで足を運んでいないからな。


 流石は俺の相棒であり一心同体と呼ばれるだけあって俺のことを良くわかっているじゃないか。

 この辺のことを気兼ねなく、お互いに言い合えるのがここの安心感に繋がっているのだろう。


 悔しいが、このガチムチのおっさんはとうの昔に俺の安らぎの存在と化していたのだ。


 「ガハハ!!!

 誉められてもワシが照れるだけだぞ!!!

 まあ、ワシとお前の付き合いの長さはそれなりの期間になったからな!!!

 少し様子を見れば大体分かるぞ!!!」


 今思うと、たしかに結構長い時間を一緒に過ごしたりしたんだな……

 感慨深いものだ。


 「これで【菜刀天子】を倒せば一旦聖獣関係に終止符がうたれるから、なおのこと胸にクるものがあるな!!!

 ジェーライト=ミューンから始まった攻略の流れの終着点のようなものだから、ワシらとしても攻略のきっかけを包丁次元の全プレイヤーに与えた責任を取らねばな!!!」

 

 責任って大袈裟な……

 たしかに俺たちが先導してこれまでほとんどのレイドボスを倒してきたわけだが、言ってしまえばこれはゲームだ。

 途中で攻略を放棄したからといって社会的に責任を取らないといけないわけじゃない。

 そこまで重く考えなくてもいい気がするんだがなぁ。


 「ガハハ!!!

 そうはいかないな!!!

 ここまで皆を焚き付けたからには、最後まで勝ちきる責任があるからな!!!

 盛り上がったところで急にどう足掻いても勝てないと思う相手が現れたら皆のモチベーションがさがって攻略が遅れてしまうだろう!!!

 そうなればこの世界は一気に衰退に向かうこと間違いなしだ!!!」


 お、おう……!?

 なんか急に壮大な話になってきたな!?

 そう言われると、総力戦は回数が重なると参加メンバーがどんどん減っていくのは俺にも想定は出来ていると言いたくなる。

 はじめは物珍しさで集まってくれていたやつも、「また勝てないだろう」と悟ってしまえばわざわざ負け戦に来ることはなくなる。


 だからこそ、総力戦を謳う以上必要以上の負けは最終的にプレイヤーの離脱を意味することになる……という理論だ。


 俺たちがジェーライト=ミューンを倒してからかなり多くのプレイヤーたちが復帰勢としてこの包丁次元にログインしてくれるようになったが、そのプレイヤーたちはいつ引退してもおかしくはない。

 きっと【槌鍛冶士】はそれを言いたいのだろう。


 「ガハハ!!!

 明日が総力戦だから今さらこんなこと言っても遅いがな!!!

 心構えとして、気合いを入れていけということだ!!!」


 結局そういうところに落ち着くのな。

 まあ、身の引き締まるような思いはしたし、やっぱり原点回帰で【槌鍛冶士】に会いに来たのは良かった気がする。


 「ガハハ!!!

 最悪、どうしても負けそうになったときにはワシがこれまで温存してきた【アレ】を使うつもりではある!!!

 【菜刀天子】を倒すためならば、そして、【包丁戦士】のためならば全てを失ったとしても安いものだからな!!!」


 えぇ……なんだその覚悟……

 俺はドン引きしながら【槌鍛冶士】を包丁で切り裂いてからログアウトしたのだった……









 【ability【会者定離】が起動しました】


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[良い点] 槌鍛冶師、マジで命掛けてそう 無事生き残ってくれるといいんですが [一言] 天子を倒せば一区切りつきますが、その後の方がより混沌としそうな気がしますね ルル様の支配とかプレイヤーに更に厳し…
[気になる点] 【槌鍛冶士】の最後のセリフが合う者は離れる定めと合わせて不穏たけど続き楽しみです待ってます
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