574話 事故対話
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は【トランポリン守兵】お嬢様に話を聞きに行こうと思う。
レイドボス戦の花形といえばタンクプレイヤーだ!
【釣竿剣士】もタンクを兼ねられるプレイヤーだが、包丁次元の本家本元のタンクといえば【トランポリン守兵】お嬢様の名前が上がってくるだろう。
それほど守りに関して言えばあの【釣竿剣士】を上回る力を持っているということだな。
「それでワタクシのところに来たというわけですわね?
総力戦前に有力プレイヤーたちの話を足を使って集めるのはいい心意気でしてよ?
他人伝えの情報よりも、やはり自分で集めた情報こそが窮地で輝くのですわ!」
金髪ツインテドリルのゴスロリを着たお嬢様……【トランポリン守兵】お嬢様が出会い頭に俺を誉めてきた。
このお嬢様は性格的に聖側に属するプレイヤーだからな、俺のようなプレイヤーキラーにも分け隔てなく接してくれるのだ。
……正直照れ臭いが。
「ワタクシのチュートリアル武器のトランポリンであれば、【菜刀天子】様の攻撃をほとんど止めることが出来ると思いますわよ!
もちろん、ワタクシが称号で【クラフトマイスター】権限とスキル【近所合壁】を組み合わせれば……という前提でという話になるのですわよ。
素のトランポリンだけでも、【近所合壁】を加えただけでも防ぎきるのは難しいですわ……
ワタクシだけであれば可能ですが、レイドバトルのタンクプレイヤーは味方を守ってこそ輝く役回りでしてよ!」
おっしゃる通りで!
やはり包丁次元随一の正統派な倫理観を持ち合わせたプレイヤーなだけあって、突っ込みどころのない発言だな。
この芯がしっかりした考え方をしているからこそ、レイドボス戦では信頼して防御を任せられるというものだ。
俺がタンクプレイヤーだったら人望が無さすぎてあまりタンクとしての機能を果たせないから、【トランポリン守兵】お嬢様の日頃の行いが成せる役割だ。
俺の日頃の行い?
善行利他行を積むプレイヤーキラーとしての活動だが?
何か文句でも?
(あったり、なかったりする……)
なんか【大罪魔】が心へ直接語りかけて来たが、相変わらず薬にも毒にもならない発言なのでスルーしておこう。
あっ、そういえば【トランポリン守兵】お嬢様の深淵細胞ってどれぐらい馴染んでるんだ?
「最近ボマード様から聞いて始めて深淵細胞に宿る【アルベー】様の意識を認識できるようになってきましたわ!
二重人格のようで変わった趣向ですが、ゲームならではの体験をさせていただけて愉しませてもらっておりますわよ!」
ボマードちゃんは何かいつの間にか【トランポリン守兵】お嬢様に身体の内に宿るレイドボスとの対話方法を伝授していたらしい。
確かに深淵関係の中でも、それに関してはあいつが第一人者だからボマードちゃんこそが【トランポリン守兵】お嬢様のサポートを出来るのだろう。
でも、あの頭お花畑のロリ巨乳が教える側っていうのがいまいち想像出来なかったりする。
「おっしゃられるほどボマード様は賢くないわけではありませんわよ?
いつも接しているからこそ気づけないのかもしれませんわね……」
そういうものなのか……?
いやー、信じられないな……
「ともかく、ボマード様のお陰で【アルベー】様と意思の疎通が可能になったのですわ!」
「オーホッホッホ!
ワタクシと対話しようなど、この身体の宿主は下賎な底辺種族にしては見処がありますわ!」
出たなアルベー!
口調は【トランポリン守兵】お嬢様に似ているが、プレイヤーたちを見下す高慢な思想が露骨に伝わってくるから意識が切り替わったのが一瞬で判断できた。
「……というわけでして、【アルベー】様の意識を【深淵顕現権限】を用いなくとも身体に宿すことが出来るようになりましてよ!
防御ではワタクシが勝りますが、デバフ……特に【阻鴉邪眼】の使い方に関しては【アルベー】様に意識を渡した方が明らかに手練れておますわ!」
「下賎な底辺種族と比較されましても張り合いがありませんわ!
ですが、このワタクシを信奉するのであれば悪い気はしませんわ!」
【アルベー】……三本足カラスだった時は威圧感が半端なかったが、こうやって対話してみると結構チョロインの毛があると思った。
これを見ると、とある昔の創作で人を怖がらせる怪物の3つの条件として挙げられているものの中に、怪物は言葉を喋ってはいけない、というものがあったのには納得できるな。
この姿でこの口調だったらあんまり強敵感ないし……
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