564話 権限付与の可能性
【Raid Battle!】
【深淵域の管理者】
【エルル】
【???】【上位権限】【ボーダー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【深淵へ誘い】
【冒険者を堕とす】
【深き真価を見極め】
【境界に流転する】
【封印された夢想が解き放たれし時】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【ーーー深度不足のため未開示ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はボトムダウンオンラインーアビスの方でログインした。
俺が次元戦争中に会った深淵種族である【ガルザヴォーク】について聞こうと思ってのことだ。
「【エルラシア=ガルザヴォーク】……過去の深淵聖獣対戦で滅んだ我の配下のことだのぅ……
あやつは野心家で、隙あらば我の力を簒奪しようとしておった。
他の次元で【上位権限】を持っておったのであれば、我があやつに根気負けした次元なのであろう。
あるいは生まれる順番が違った可能性もあるが……
それはともかく、お前から【ガルザヴォーク】の名前が出てくるとは想定外であったのぅ……」
ちなみに、【フランベルジェナイト】が【ガルザヴォーク】としての記憶を取り戻したらしいが、ルル様的にどうするつもりなんだろうか。
「好きにさせておくといいであろう。
記憶があるとはいえ、生まれ変わった者にまで配下としての使命を強要するほど器が狭いわけではないからのぅ……」
流石はルル様!
この達観した振る舞いがボスとして慕われる由縁なのだろう。
「それに、【ガルザヴォーク】の代わりにお前が働いてくれるのであろう?
憎き次元天子を打倒するのはもはや目前に迫っておるからこそ、我としてもどっしりと構えていることができるのだ。
それで、次元戦争にも勝ち次元天子との休戦協定も打ちきりとなったが、あやつに何か動きがあったりしたかのぅ……?
あの高慢な次元天子が一位になることだけを目標としていることは考えられない。
一位の次元であることによる権限のどれかを求めていたのであろう」
ん?
ルル様は元々一位次元の権限について知っていたようだ。
だが、気になる言い方だな?
権限のどれか……?
まるで、権限がいくつか付与されているような言い方だ。
「その通りだ。
【上位権限】に付与する効果を選べるらしいな。
もっとも、ゲーム運営プロデューサーの【山伏権現】から少し話を聞いただけで詳しくは知らぬがな」
ルル様も【菜刀天子】と同じでゲーム運営プロデューサーに【上位権限】で交信ができるから、軽く聞いていてもおかしくないな。
ちなみに、【菜刀天子】が手に入れようとしていた権限は【千年王国】計画らしいぞ。
どうやらこの次元の急速発展を目指すらしい。
「それは困るのぅ……
おそらくであるが、その権限で他の種族たちの衰退を狙っていると我は推測した。
世界がそれほどはやく発展した場合、レイドボスたちがその世界についていけるとは限らないからな。
それは【上位権限】を所有しているレイドボスであっても例外ではないであろう」
まじか。
プレイヤーはその世界に順応できるであろうことは【菜刀天子】が言っていたが、レイドボスたちはそうではないのか……
プレイヤーたちを導くためとはいえ、【菜刀天子】はかなり大胆なことをやろうとしているんだな……
「これは早急に、憎き次元天子を倒さねばならなくなったかもしれぬぞ……っ!
権限の取得承認が降りるまでには多少時間がかかるらしい、これまで貯めていたリソースを昇華して力に変える故にそのリソースが少なければそれだけ時間が変わってくるであろう。
その権限の発動を止めるためにも、我は我の忠臣へと最後の深淵結界を張るように指令を出しておこう。
【包丁戦士】よ、地上での誘導は任せるぞ」
おお、一時期停止していた深淵結界の最終段階をとうとう成立させるときが来たんだな!
これまでの深淵結界でも【菜刀天子】をかなり弱体化させられている気はあるが、それでも何度かソロで挑んでみた感じでは総力戦を仕かけても勝てないと思った。
だからこそ、さらなる弱体化の鍵である深淵結界をルル様の忠臣とやらに張り巡らせてもらうしかない。
俺たちプレイヤーだけで次元天子に勝つならそれくらいの前準備があって1割の勝率があるかないかだろうからな。
一応、【タウラノ】やルル様が助っ人に来てくれるらしいが、【菜刀天子】の本拠地である天子王宮でどこまでの力を発揮させることが出来るのかは不明なので、実際にはプレイヤーのみで挑む気概で用意しておいた方がいいだろう。
正直気は重いが、【タウラノ】の助っ人が吉と出るか凶と出るかが問題だ。
ルル様も懸念していたから、どうなることやら……
急がねば……急がねば……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】