563話 千年王国計画
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
何か1ヶ月ぶりに言ったような気もするが、気のせいだ。
次元戦争はそんなに長いものじゃなかったからな。
最後は【ランゼルート】に灰塵にされてしまった俺だったが、包丁次元勝利のアナウンスが響いたことから【ペグ忍者】が俺の仕掛けを有効活用してくれたか、自力で勝利してくれたのだろう。
闘技場イベントの時といい、チュートリアル武器交換イベントの時といい、どうも俺は【ペグ忍者】に勝利を譲ってしまう傾向にあるらしい。
今回は同じチームのメンバーだったから結果的に俺の勝利でもあるのだが、俺が公式の場で【ペグ忍者】に勝てたこと一回も無いんじゃないか……
種族的な相性や、実力で差がついているわけでもないから、あいつ相手の巡り合わせの問題っぽいが。
そんなことを考えていると向こうの方からコツコツと足音が鳴り響いてきた。
このタイミングで、この場所で近づいてくるやつなんて一人しか心当たりがない。
よお、【菜刀天子】!
無事勝利を収めてきてやったぞ、ほら念願の一位だ!
「辛勝でしたが……そう、でも……それでも……念願の一位を達成できました!
これで私の宿願が叶います」
【菜刀天子】は感極まったような声を出して、自己陶酔している。
……ん?「宿願が叶います」?
「宿願が叶った」じゃなくてか?
「序列一位の次元になった次元の【次元天子】にはある1つの権限が行使可能になります。
あの底辺種族と次元天子を兼ね備えた【ランゼルート】は次元戦争に参加し続けていたことから、その権限を使っていなかったようですが……」
【ランゼルート】が使わなかった権限……?
あいつは使う力に対して深淵の力以外には好き嫌いしていなかったから、わざわざ使わなかったものがあるとは意外だな。
そして、次元戦争に参加していることがその証っていうのはどういうことだ?
「それは簡単なことです。
この権限を行使することによって【千年王国】への道が拓けるようになるからです」
せ、【千年王国】???
ここに来て一度も聞いたことがないワードが出てきたな?
それは一体どんなものだっていうのだろうか……
「おや、知能の足りない底辺種族上がりでは分かりませんでしたか?
グランドアナウンス……実績照会でも似たワードが出ていたというのに……
これだから劣化天子は……」
実績照会にそんなワードあったか……?
そう思い、【検証班長】が纏めていた実績照会のログのメモを確認してみる。
【千年後に向けて failed】
これか!
千年ってついてるし、これ以外にそれっぽいのは無かったから確定だろう。
だが、千年後……?
「そう、千年後です。
プレイヤーが千年後を目指し、磐石な次元を作り上げる……この計画を【千年王国】と呼んでいます」
まあ、プレイヤーたちを導き、次元もより良い方向へと導いていくことが【菜刀天子】の宿業にも刻み込まれているから理屈はわかる。
だが、プレイヤーと千年後を目指すのは不可能だろ。
俺たちプレイヤーは長くても約百年しか生きられないからな。
ましてや、百年間同じゲームをやり続けるやつなんていないだろうし、このゲームのサービスが先に終了してしまう。
「安心してください。
私は劣化天子のような低能ではないのでそれくらいは理解しています、私をいったい誰だと思っているのですか、【次元天子】ですよ。
【千年王国】はボトムダウンオンラインの次のステージのようなものです。
次元の発展度合いを千年後まで急加速させるシステムですね。
おそらく、NPCや街が増え、発展していくのは間違いないです。
このシステムを使うと公平性を保つために次元戦争の枠組みから外されるので、【ランゼルート】は使っていなかったということが分かったのですよ。
これなら劣化天子でも理解できますか?」
なるほどな。
それなら理解できる。
千年後にこの次元がどこまで発展しているのかと考えると少しワクワクしてしまうな。
スチームパンクな世界や、SFの世界、中世ヨーロッパチックな世界っていうのが創作の王道だし胸が踊る。
……そこ!絶壁のような薄い胸だからって踊るときは踊るんだからな!?
甘く見るなよ!俺はロリではない!!
だが、そんな面白そうなコンテンツなのに【ランゼルート】がその権限を使わなかった理由、それだけが気がかりだが【菜刀天子】がそれに触れることは無かった。
次元戦争……まさか一位まで上がってこられるとは。
あとはリソースさえ溜め込めれば……
【Bottom Down-Online Now loading……】