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556話 βプレイヤー

 「やりましたか!?」


 【菜刀天子】は【ガルザヴォーク】の攻撃によって黒炎に包み込まれた【ランゼルート】を見てそう呟いたがそれは生存フラグだぞ!?


 余計な一言を言ってしまったな。



 「【黄竜一閃】」


 

 とか思っていたら黒炎の中から黄金の光が輝き始めて、陣の中に立ち上っていた黒炎が振り払われ【ランゼルート】が姿を現した。

 とはいえ、【ガルザヴォーク】のエネルギーを大幅に消耗して放たれたスキルをまともにくらって無傷とは行かなかったようだ。


 【ランゼルート】は黄金の輝きを身に纏いながら歩きだし、何やら語り始めた。


 「僕は【ガルザヴォーク】を封印した後、次に【ガルザヴォーク】と対峙したときのことを考えていたんだ。

 そして、あの時のままでは次に復活した【ガルザヴォーク】と戦っても必ず再封印できるわけではないと思ったんだよね。

 そうしてまず手に入れたのは【次元天子】の力さ。

 別に僕が元々【次元天子】だったわけじゃないし」


 それはそうだろう。

 プレイヤーが初めから【次元天子】だったら逆にビックリする。

 

 「プレイヤーか……君ならそう思ってもおかしくないか。

 包丁次元の【次元天子】には落胆したものだけど、君なら別に自然の流れだからね」


 ……?

 こいつはいったい何を言いたいんだ?

 さっきから要領を得ない口振りだが、何を俺に伝えたいんだろうか。


 「つまりこういうことだよ!【上位権限】【ステータス公開】発動!」


 【ランゼルート】の発言をトリガーとして無機質な声のアナウンスが戦場に鳴り響いていく。




 【Raid Battle!】



 【聖剣を冠する君主】

 【封竜の勇者】



 【ランゼルート】



【メイン】ー【底辺種族】【上位権限】【勇者】【プレイヤー(β)】

【サブ】ー【次元天子】【上位権限】【ドラゴンスレイヤー】



 【底辺種族を導き】


 【次元を勝利に導く】


 【聖獣を担うが故に】


 【深淵と敵対する】


 【地の底から這い上がった勇ましき者は】


 【深淵竜帝王を封印し】


 【未だなお正義を執行する】


 【聖剣の輝きは今ここに!】


 【レイドバトルを開始します】



 「なっ、【底辺種族】のまま【上位権限】を手に入れたのですか!?

 そのようなことありえるはずが……」


 【菜刀天子】がアナウンスを聞いてまず反応したのが【上位権限】と【底辺種族】の組み合わせについてだ。

 【次元天子】と同じ列にある【上位権限】は聖剣次元の【次元天子】を手に入れた時にセットで種族【次元天子】と同時に手に入れたと推測できるからそっちには触れなかったんだろう。

 俺で予想できることを【菜刀天子】がわざわざ質問しないだろうからな。



 「【底辺種族】は全てにおいて低い水準の種族で、その必要とされるリソースの少なさから数多く現れるプレイヤーの初期種族として定められたもので、【底辺種族】に【上位権限】持ちが居たなんてゲーム運営プロデューサーからも聞いたことがありません。

 それに、そんな少ないリソースで【上位権限】を扱えるとは思えませんね……論理的ではない現象です……」


 「君の言い分はごもっともだよ。

 【底辺種族】……つまり人間はこの世界では最も虚弱で、ほとんどの次元で真っ先に排斥された種族さ。

 【包丁戦士】君にも分かるように説明すると、【プレイヤー(β)】というのは【現界】……君たちプレイヤーでいう現実からではなく、この世界で生まれた【底辺種族】に与えられたジョブのようなものさ。

 βプレイヤーという表現の方が【現界】のプレイヤーたちには伝わりやすいかな?

 【現界】のプレイヤーと違って、【プレイヤー(β)】を持つ【底辺種族】は種族転生が出来ないという縛りがあって、生まれてから滅びるまで【底辺種族】として生きることを定められている存在なんだ。

 そんな種族が生き残れると思うかな?」


 【クハハハ!!!

 聖剣次元では我がほとんど滅ぼしておいたわ!!!

 脆弱で何者にもなれず世界のリソースを食い散らかしていくだけの滅びゆく種族に引導を渡してやる瞬間は最高であったな】


 「……今は聖剣次元の【次元天子】と戦っているので敵対はしませんが、この深淵種族はやはり相容れませんね……

 一言でいうと思考が下衆としか言いようがありませんから……

 堕とすことが生き甲斐の種族など、世界の癌でしかありません」



 「その通りさ。

 そう思って僕たち【底辺種族】も他の種族たちと協力して深淵種族の長である【ガルザヴォーク】を討つための戦い……聖魔戦争を引き起こしたんだ!

 その最中、他の種族の【上位権限】者たちから与えられた試練を乗り越え、皆に対等の立場であることを証明して、僕が【底辺種族】の長として認められた時に【山伏権現】から【上位権限】とジョブの【勇者】を与えられたんだ。

 これは類を見ない何もないところからの、後天的な【上位権限】の獲得さ。

 つまり、他の次元で【底辺種族】に【上位権限】持ちが居なくても不思議じゃないってことだね」


 「つまり、【底辺種族】では扱いきれない【上位権限】を制御するためのジョブがその【勇者】であるということですか?

 にわかには信じられませんが、自ら公開した情報に虚偽を混ぜることが出来ないのは同じ【上位権限】持ちである私が一番分かっていますから、あなたが【底辺種族】で【上位権限】を行使できるのは間違いないのでしょう」



 ……話に置いていかれていたが、つまりこの【ランゼルート】はNPCでありながらプレイヤーとして攻略に参加していたってことになるよな?

 MVPプレイヤーとして選ばれているってことだし、他のプレイヤーたちと扱いが同一ってことだ。


 「君、良いところに気がついたね。

 僕が行使する【上位権限】はエルフ系の【上位権限】と酷似しているってことだよ!」


 「なるほど、それで納得がいきました……」


 【そんな軟弱なものでも【上位権限】であるというのが嘆かわしいな!!!

 我であればそんな権限では満足出来ないであろう】


 なんか他の【上位権限】持ちレイドボスたちは納得していっているが、エルフ系の【上位権限】ってなんだよっ!?



 ……なお、俺に配慮してくれるやつはいないようで、そのまま戦闘が再開されたのだった……







 【Bottom Down-Online Now loading……】



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