表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

542/2209

542話 一心二体

 【我を封印から解き放ったこと、感謝しよう。

 我が名は【エルラシア=ガルザヴォーク】!

 深淵奈落を守護し、その領地を拡大侵食する【深淵域の竜帝王】である!】


 俺たちの前に現れたのは漆黒の鱗がびっしりと生えている大型のドラゴンだった。

 口からは黒い炎がチリチリと燃えており、身体にも炎の紋様が刻まれている。


 「【エルラシア=ガルザヴォーク】っ!!

 ああっ、思い出した!」


 【フランベルジェナイト】が【深淵域の竜帝王】の名前を聞いた瞬間、何かを思い出したようで、先ほどまでの苦しそうな表情から一転してすっきりとした表情となった。


 【フランベルジェナイト】、一体何を思い出したんだ?

 俺は思わず問いかけると返事はすぐに返ってきた。









 「そう、【エルラシア=ガルザヴォーク】!

 ……それは俺の名前だ!」


 【【エルラシア=ガルザヴォーク】は自らの名称を公開した】


 【【名称公開】【エルラシア=ガルザヴォーク】に知名度に応じたステータス低下効果付与】




 何を言っているんだと思ったが、【フランベルジェナイト】が宣言するのと同時にスキル【名称公開】のログが流れてきた。

 つまり、【フランベルジェナイト】の名前が【エルラシア=ガルザヴォーク】ということになるんだが、それとは別に隣にいる巨大な漆黒のドラゴンの名前も本人(?)が言うには【エルラシア=ガルザヴォーク】だ。


 つまり、同姓同名のやつがここに同時に存在していることになる。

 謎が謎を呼んでいる……


 「【ガルザヴォーク】が2体……いえ、そんなことはありえません!

 たしかに私が封印したのはそこのドラゴンの【ガルザヴォーク】です。

 あの聖魔戦争で【ランゼルート】の聖剣と私の封印の力を使い抑え込みました。

 今は封印が解けたとはいえ、それでも2体いるというのには納得できません!」


 【アイシア】も困惑しているようだ。

 この【アイシア】はよく見るとエルフ的なものに種族転生しているようで、周りに精霊のようなものが飛んでいる。

 レイドアナウンスで色々と正体を出してきたが、【フランベルジェナイト】、【深淵域の竜帝王】、【アイシア】それぞれが不可解な存在として俺の目には写っている。

 

 誰を信じればいいというのだろうか。


 【我はフェイの言う【聖剣次元】の【ガルザヴォーク】である。

 聖魔戦争で封印されたまま、特異次元に隔離されておったのだ。

 そして、こやつが……】


 「俺は【包丁次元】の【ガルザヴォーク】だよ!

 かつて包丁次元で行われた聖獣深淵対戦で、滅んだ深淵種族……の残滓みたいなものさ。

 第3陣プレイヤーたちが入ってきた時にその流れを利用してプレイヤーとして擬似的に蘇ったみたいだ。

 フェイちゃんと会ったのは偶然だったようだけど、お陰で深淵の力を知らず知らず蓄えられていたようだ」


 【我とは違いこやつは【上位権限】を持たぬ故に【名称公開】の影響を受けておるが、どうやら【包丁次元】での我は種族の頂点にはおらなかったようだな】


 「なるほど、別次元の【ガルザヴォーク】……

 次元が交差する次元戦争だからこそ起こりうる、悪夢のような邂逅ですね……

 ですが、【包丁次元】の【ガルザヴォーク】は私の【緑王絶対封印】で既にほとんどの力を封じています。

 つまり、私たち【聖剣次元】の【ガルザヴォーク】さえ封じてしまえば何の問題もないということです。

 さあ、戦闘再開です。鎖よ揺蕩え!」


 ……こいつらはなんか当事者たちだから皆納得しているらしいが、俺は若干置いてきぼりにされている気がする。

 というかこの【ガルザヴォーク】と【フランベルジェナイト】は記憶を共有しているっぽい。

 自己紹介をしていないのに俺のことを【フェイ】と呼んでいるからな。


 いや、俺の名前は【フェイ】じゃないんだけど、ここで否定するのも水を差すようで悪いから止めておこう。





 当事者たちは事情を把握しあったようなので戦闘を再開したようだ。

 

 【アイシア】は鎖を飛ばし、それを蛇のようにうねらせながら【ガルザヴォーク】へと絡みつかせていく。

 右前足を捕らえた鎖は渦を巻くように足先から胴体へと上がっていき、拘束の範囲を広げていっている。


 【我は長いこと封印されておったのだ、力が有り余っておるぞ!

 他者を縛ることでしか生き甲斐を感じられぬような愚者はこの戦いの場には不適格である!

 よって、ここで沈め!【覇道逆鱗】!】


 【ガルザヴォーク】は身体に刻まれた炎の紋様から黒い炎を噴出し、まるで鱗が飛び交うように炎を周囲に撒き散らしはじめた。

 その激しい勢いに【アイシア】が施そうとした封印は爛れ堕ち、地面には消えない炎が散乱することとなった。






 【覇道逆鱗】……これはギルドマスターである元レイドボス【オメガンド】が俺たちが試練の突破に失敗した時に使ってきたお仕置きスキルと同じ名前だ。

 あれを使われた瞬間、レイドボスに挑んでいたプレイヤーたちは残らず死滅していたのでどんな攻撃なのか黙視できなかったが、黒炎を噴火のごとく撒き散らすという暴力的なスキルだったようだ。


 一応、味方である【フランベルジェナイト】と俺を避けてくれたようで力の氾濫の中でも俺は無傷で済んだ。


 それに対して、【アイシア】は鎖を身体の前で何重にも形成することによって分厚い壁を作り攻撃を凌いだようだ。

 あの鎖、身体を縛り上げるだけじゃなくて、こんな盾のような使い方もできるという自由度の高さには驚かされた。



 ……で、何故この【ガルザヴォーク】が【オメガンド】と同じスキルを使えているのか分からないが、とりあえず味方として頼もしいので良しとしておこう。

 






 ……後で聞かないといけないことがどんどんふえてきてるな。





 【Bottom Down-Online Now loading……】

152話にボマードちゃんのイラストを掲載しました。

興味のある方は覗きに行ってください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ