540話 緑王封印
さっそく封印の解除に取りかからせてもらおうか!
スキル発動!【堕音深笛】!
俺は深淵フルートに口をつけ、息を吹き込み始めた。
あらゆる者を堕とそうとするかのような重いメロディーが辺りに鳴り響き、黒い霧が出現していく。
そして、そのまま大樹に巻きついている黄金色の金属へと誘導する念を込めながら演奏を変化させていく。
「まさか深淵使徒でしたか、これはいけません!?
封印は解かせません!
スキル発動!【緑王飾彩】!」
【アイシア】は緑色のオーラを杖にはめ込まれた宝石に宿らせると、そこから緑色の蔓を編み込んで出来たような鎖を俺の方へと飛ばしてきた。
おいおい、お前の前には【フランベルジェナイト】がいるんだぞ!
そっちを無視して俺を直接狙うとはよっぽどこの封印が大切と見えた。
その大切な封印を守るために勇み足で俺を捕らえようとした気概は悪くない、むしろ好みだ。
だが、俺が許してもこいつが許すかな?
「フェイちゃんは俺が守るって言ったよ!
たとえ槍の雨が降ろうとも必ず守り通してみせる!
【アイシア】……悪いけど、俺が生きている間にフェイちゃんを狙ったこと後悔させてやる!」
【ふ、【フランベルジェナイト】さん!
私は大丈夫ですっ!】
「何故そこまでして封印をっ!?
あれは決して解いてはいけないものですのに……」
俺を狙ってきた緑色の蔓で作られた鎖は、俺を守るように飛び出してきた【フランベルジェナイト】が振るった炎の形を模した剣……フランベルジェによって切り捨てられた。
これが姫プレイの真髄、守られるヒロインっていうものも悪くないな!
【フランベルジェナイト】と知り合ったのも俺が姫プレイを出来るってことを【菜刀天子】に証明するためという、今考えるとよく分からないことがきっかけだった。
今回は奇しくもその通りになったな。
「あの大樹からはどこか懐かしい雰囲気を感じるんだ。
俺はそれを確かめたい、ただそれだけのことだ!」
俺はその言葉を聞いて、【堕音深笛】によって発生させた黒い霧の操作を進めていく。
俺がイメージするのはやはり枝……
黒い霧を操り、伸長する枝を形成し黄金色の金属の封印に絡ませていく。
だが、これでは足りないのか封印に変化はない。
このまま引き下がるのは【フランベルジェナイト】に申し訳ない。
というわけでさらなるスキルを重ねていく。
【骨笛ネクロマンサー】や【検証班長】との会議の結果、試しては居なかったがこのスキルとの相性が良さそうだという結論になっていた。
それを今試すときだ!
スキル発動!【堕枝深淵】!
俺はルル様の奥義を発動した。
すると……
【スキルチェイン【堕音深笛】【堕枝深淵】!】
【効果が変質します】
【スキルがロックされているので深淵域の管理者による評定待ちです】
【深淵域の管理者による評定】
【深度適正(最上級)錬度(中)深度(高)贄の数(多)日常の言動(狂)……最上級深淵適正者用ability【会者定離】による干渉】
【我の力を変質させて使う方法を覚えてきたようだのぅ……喜ばしくも悲しくもあるが、此度は良しとしよう。さあ、忌々しい封印から力を解き放つのだ!】
【【ランゼルート】ォォ!!あやつに復讐をせねばこの気が収まらぬぅぅ!!!】
【深淵域の管理者による評定結果(良)】
【ワールドアナウンス】
【スキル獲得条件達成者を検索……対象者1名】
【【包丁戦士】はスキル【深淵龍脈】を獲得しました】
【【包丁戦士】が称号【深淵龍脈の先導者】を獲得しました】
【個人アナウンス】
【【包丁戦士】が称号【封印から深淵を解き放つもの】を獲得しました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が66になりました】
【【包丁戦士】の深度が67になりました】
おおっ、なんか久しぶりに珍しいアナウンスが流れたな!?
ルル様の声とか、他にも聞いたことのない声とかも聞こえたりして気になることは多いが、まず俺がやらないといけないことははっきりしている。
スキル発動!【深淵龍脈】!
俺がスキルを発動すると、黄金色の金属の封印に深淵の黒い脈が走り始め、そこから先ほどから伸ばしている黒い枝が侵食していっている。
どうやら、俺が新しく発動したスキルが封印されていた力を呼び起こしたようで、内部から封印を破ろうとしてくれているようだ。
「ふ、封印がっ!?
いえ、まだ間に合います……
これで止めてみせますよ!
スキル発動!【緑王顕現権限】!
続けてスキル発動!【緑王降霊】!
これで繋げます【上位権限】起動!」
【Raid Battle!】
【精霊森林の緑女王】
【エムハート=アイシア】
【メイン】ー【精霊緑王】【上位権限】【封印守人】
【サブ】ー【森人】【プレイヤー(偽)】
【聖魔戦争にて竜帝王ガルザヴォークを封じ】
【森の神聖なる力で浄化する使命を受け持った】
【願わくばその封印が解かれることがないよう】
【少女は祈る】
【王は挑む】
【守人は畏まる】
【封印こそが存在意義】
【幻界に平和あれ!】
【レイドバトルを開始します】
「本気でいきます。
ここまで危険な存在だと思わせたみなさんが悪いのですよ!
【上位権限】【緑王絶対封印】!」
なんだか知らんが、ここまで来たんだ止めさせない!!
いっけぇぇぇぇ!!!!!!
【Bottom Down-Online Now loading……】