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539話 遭遇と邂逅

 「はじめまして、包丁次元のみなさん。

 私は【アイシア】と申します。

 以後お見知りおきを……」


 そんなことを言いながら女プレイヤーが現れた。

 奇襲とかではなく、自己紹介から入る丁寧さは感心するが、今回に限っては悪手だぞ?

 俺たち包丁次元が相手なのが悪かったな?


 「それはいったいどういう……?」


 【アイシア】は俺の発言に困惑しているが、その問いに俺が答えるまでもなく無機質な声のアナウンスが教えてくれるようだ。


 【アイシアは自らの名称を公開した】


 【【名称公開】アイシアに知名度に応じたステータス低下効果付与】


 


 「俺たちの次元は名前を明かすことが禁忌だとされている。

 君には悪いけど、枷がハマった状態で戦ってもらうよ!」


 【(ふ、やりましたね!)】


 「今まで戦った相手のなかで一番陰湿な【名前に関するスキル】ですね」


 よしっ、【名称公開】が発動したようだ!

 これで多少は戦いやすくなるだろう。

 次元戦争での【名称公開】のデバフの倍率はかなり抑えられたものになるらしく、ボマードちゃんのように虚弱体質になるところまではいかない。

 それでも、戦闘開始直後に万全の状態を崩せるのは次元戦争での包丁次元の強みだな。


 「いや、フェイちゃん……何かがおかしくないかな?

 【名称公開】が発動したのに【アイシア】の【名前に関するスキル】が発動していないよ!」


 !?

 そういえばそうだ!

 基本的にプレイヤーネームを明かすことで発動する各次元の【名前に関するスキル】だが、【アイシア】に他の変化が起きていない。

 発動条件が違うってことか……?


 「それは秘密ですね。

 何故ならみなさんは私の施した封印を破ろうとしている敵対者なのですから」


 私の施した封印……!?

 ってことはこの大樹を囲っている黄金色の金属の封印をこの【アイシア】がやったのか。

 それならこいつをキルすれば封印が解けるのか?


 俺は打開策が見えたと思い安堵するが、それを【アイシア】は……


 「いえ、この身が朽ち果てようとも封印は健在です。

 何故なら私の権限は封印に特化したものですから、既に力の杭は打ち立てられています」


 バッサリと切り捨ててきた。

 やっぱりこっちで解除しないといけないようだ。


 おい、【フランベルジェナイト】!

 【アイシア】の相手は任せた!

 深度が高い俺が使う【堕音深笛】で封印に熱々のアプローチかけてやるからなんとか粘っていてくれ!


 【(……という言葉を柔らかくして私から【フランベルジェナイト】さんに伝えました)】


 「ああ、フェイちゃんの透き通るような素敵な音色なら必ず封印を気に入ってくれるさ!

 それに、粘るだけじゃなくて別に倒してしまってもいいよね!」


 露骨な死亡フラグを立てるのは止めろぉ!

 でも、それくらい言いきってくれた方が俺としても安心はできるな。

 お前の成長っぷりをここで見せてもらおうじゃないか!


 「私の封印は破らせません!

 ここで退場してもらいます!」


 こうして大樹前の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。









 




 森林にプレイヤーたちを置いてきぼりにして私はとある場所に向かって移動を続けていました。

 そして、たどり着いたのはマップの境界線……【特異次元封印の森ダンサムント】の端ですね。


 何故ここに一直線で向かってきたのかは、私が【次元天子】であるからこそ分かる理由があります。


 「わざわざ私相手に【上位権限】でメッセージを送ってくるとは律儀なものですね。

 プレイヤーにしては粋な計らいですが、【次元天子】である私相手に勝てるというその慢心はいただけませんね。

 プレイヤーと【上位権限】AIとの格差というものを見せつけてあげましょう」


 脳の機能を全て使いきれていないプレイヤーと、私では格が違うのですよ。

 それをこの次元戦争で証明しなくては。


 そう思いながら、マップの端に来ましたがここにあるのは……

 樹木で作られた神殿ですか。


 新緑都市アネイブルにある私の王宮はオリエンタルな構造を意識してクリエイトしましたが、この神殿は西洋風ですね。

 聖剣次元に元々あったものがこの【特異次元封印の森ダンサムント】で再現されているのでしょうが、私の趣味とは相容れないですね。


 この神殿で待っている……とのことですが、上位者として堂々と受けて立ちましょう。





 「ようこそ、僕の領域へ。

 歓迎するよ包丁次元の【次元天子】さん?」


 私を待っていたのは銀色に輝く鎧を着込んだ青年でした。

 金髪に赤いメッシュの入った……どこか私の髪に似ているアバターですね。

 純正の【次元天子】ではないので、中華服ではなく西洋風の鎧を着ているのは不愉快ですが、プレイヤーにそれを言っても仕方ないでしょうか?


 「【プレイヤー】……ね?

 やっぱり僕はその扱いを受けるんだ……

 ここまで勝ち上がってきた次元の【次元天子】ならあるいは……と思ったんだけど、見込み違いだったようだね」


 「勝手に見込み違いと言われても不愉快ですね。

 その上から目線の物言い、私を【次元天子】と知ってのことですか。

 不敬ですよ」


 「もちろん知っているよ。

 何せ今は僕も【次元天子】だからね。

 同等の立場じゃないか!」


 やはりこの男……どこか私を不愉快にさせますね……

 飄々とした雰囲気ですが、私に対して常に棘のある物言いをしてきます。


 「やはりプレイヤーとAIとの格の違いを見せつけてあげないと分からないようですね」


 「……まあ、そう思うならいいさ、相手になってあげよう。

 この正義の体現者である【ランゼルート】が全ての次元天子を下し、君は僕が幻界に並び立つ者がない絶対正義として君臨するための礎になってもらうよ!」


 そう言うと【ランゼルート】という男は黄金に輝く聖剣を鞘から抜き払い、宣戦布告をしてきました。

 いいでしょう、覚悟しなさい!



 【Bottom Down-Online Now loading……】

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