537話 聖獣毛皮
さて、この黄金色の金属による封印だが、どうやって外したものか。
とりあえず、手始めに腰から提げていた包丁を手にとって切りつけてみる、とりゃ!
【……ダメみたいですね。
私の通常攻撃ではびくともしません】
「それなら俺もっ!」
俺、【フェイ】、【フランベルジェナイト】がそれぞれ攻撃を仕掛けているが、金属と金属がぶつかり合う音がするのみで、傷ひとつつけられなかった。
ちなみに、【フェイ】は実体を持たないのでそもそも攻撃は当たっていないのだか、今それを指摘するのは野暮なものだろう。
まあ、実体を持っていたとしてもフルートによる打撃だから効かなかったと思うがな。
「攻撃で開かないなら、鍵か何か必要なのかな?
生憎そんなもの持ってないけど」
【わ、私も持ってないですね……】
当然だが俺も持ってない。
それに鍵穴も存在してない封印のどこに鍵を入れるのだろうか。
俺の推測としては鍵ではないだろうと睨んでいる。
隠された鍵穴とかあるなら話は別だが鍵も持っていないので、その場合は手間がかかりすぎるから封印の解除を諦めないといけないな。
出来ればそれ以外の方法での解除方法を考えたいところだ。
【ぶ、物理的に壊して開けるのは難しそうですし……
他の方法で試してみましょうか?】
「そうだね、色々試すのは悪くないと思うよ。
でも、他にとれる手段となるとそんなに無いよね……」
【渡月伝心】、【魚尾砲撃】、【花上楼閣】、【深淵顕現権限】、【天元顕現権限】、【深淵纏縛】、【フィレオ】、【竜鱗図冊】、【堕音深笛】、【阻鴉邪眼】、【渦炎炭鳥】、【堕枝深淵】、【波状風流】、【想起現像】、そして【紅枝深淵】。
俺たちが使えるスキルはこの辺りだが、封印を突破するなら【フィレオ】で強引に切断するのも手だ。
しかし、戦闘が始まっていないのに四肢を失うデメリットは負いたくない。
【深淵顕現権限】と【深淵纏縛】も同様に生け贄とか必要だからな……
上記と同じ理由で、【渡月伝心】、【花上楼閣】、【阻鴉邪眼】、【魚尾砲撃】、【渦炎炭鳥】、【波状風流】、【紅枝深淵】もきつい。
消去法で残された選択肢は【天元顕現権限】、【竜鱗図冊】、【堕音深笛】、【想起現像】、【堕枝深淵】だ。
これらは露骨なデメリットがないから、今試すならこれらからだろう。
いや、【天元顕現権限】はクールタイムが長いからデメリットは無いにしても今使うのは愚策か。
悩ましいな……
「なんだその加速力!?
ちょこまかとめんどくせーな!
もっと派手にいこうぜ!」
「にゃにゃん!
【ペグ忍者】は地味に堅実に戦うのらよ~」
【ラクヨウ】さんは手裏剣を投げながら、私のペグをかい潜って忍刀で切りつけてこようとしてきました。
姿勢を低くしてからの切り上げ攻撃は、私の体勢を崩させるほどの鋭さでしたが、私は虎獣人特有の加速性能を活かして連続バク天を披露しながら回避することに成功しました。
中々冷や冷やさせてくれますね!
ですが、【釣竿剣士】ちゃんに鍛えられた私はそんなに甘くないですよ!
私はお返しにペグを再び投擲していきます。
ですが、今までのペグとはひと味違いますよ?
「なっ!?
こんなところにワイヤーだとっ!?」
私が投擲したペグにはワイヤーが取り付けてあります。
それが木々に突き刺さることで、この一帯にワイヤー地帯が出来ているのです!
ふっふっふっ、これがワイヤー猫ハウス戦術です!
そんなワイヤー猫ハウスに囚われた【ラクヨウ】さんはワイヤーに足をとられて動けなくなっています。
「ちっ、出し惜しみしたらこれかよ……
全くツイてないぜ。
面倒くせーからギアを1つ上げてさらに派手に行かせてもらうぜ!
スキル発動!【聖獣毛皮ξ(クシー)】!」
【ラクヨウ】さんは痺れを切らして必殺と思われるスキルを使ってきました。
スキルを起動した【ラクヨウ】さんは全身が炎に包まれて、背中には炎で編み込まれたような深紅の翼が生えてきましたね!?
これは……聖獣朱雀の力みたいですね。
私も聖獣白虎の力を同じく【聖獣毛皮μ】で扱うのですぐに分かりました。
つまり、【ラクヨウ】さんは種族のランクでは最低でも私と同格……もしかするとその上かもしれませんね。
思ったよりも戦況は良くないのかも……
「にゃにゃにゃっ!?
暑苦しいのら~!
もっと温度を下げて欲しいのらよ!」
「誰がそんな面倒くせーことをしなきゃいけないんだよ!
俺は派手に暴れて、目立ちたいっていうのに皆俺に抑えろと言ってくる。
あの正義の体現者ランゼルートでさえもそうなんだから、全く嫌になってくるぜ!
スキル発動!【比翼炎禽】!」
【ラクヨウ】さんは炎の翼から細かい炎の羽をダーツのように連続で放ってきました。
ワイヤー猫ハウスは炎に焼かれて消え去っていっているので、無力化されちゃいましたね。
あと、この弾幕……私の命の危険ですよね……となると、防ぐにはあれしかありませんね!
やむを得ないです!
「【ペグ忍者】も負けないのらよ~!
スキル発動!【聖獣毛皮μ】!
さらにスキル発動!【虎月伝心】なのら!」
まず私は【聖獣毛皮μ】の影響で身体が紫混じりの白い装束に覆われていきました。
髪の毛の色も上書きされていき、装束同様に白色がメインでメッシュのように紫色の髪が少し生えている感じになっちゃいました。
これイメチェンみたいで実は気に入ってます!
そして、【虎月伝心】の発動でチュートリアル武器のペグを掴み、両手を上空に向けて掴んでいるペグにエネルギーを注ぎ込んでいきます。
そして白光が点滅しながら周囲から集めて放ちました!
これが精一杯の迎撃ですよ!
擬似的な聖獣同士の戦いですか……
珍しい光景ですね。
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か、感想を下さい……(飢餓)