534話 次元戦争前の変態とイケメン
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は次元戦争当日だ。
俺がログインすると【菜刀天子】が近寄ってきた。
「いよいよ今日です。
御託はいいでしょう、さあ、さっそく送りますよ」
そういうと【菜刀天子】は黄髪を揺らめかせながら腰に差していた中華包丁を天に掲げて、包丁から力の奔流である光を煌めかせ始めた。
「【上位権限】【Battle field】展開!」
その力の奔流に俺は飲み込まれた。
【渡月伝心】の時に放たれた物々しい光とは異なり、柔らかな心地のする光だった。
【特異次元 封印の森ダンサムント】
俺が飛ばされてきたのは、荘厳な雰囲気でそこにいる力の流れを全身で感じ取れるような森だった。
エリアの中央にはここから離れているのにも関わらずくっきり見えるほどの巨大な大樹が聳え立っているのが目視できる。
「これが次元戦争なのらね~
全く来たことがないエリアに転移するなんてサバイバルイベント以外で体験したことがないから新鮮なのらよ!」
俺の次に転移してきたのは、ピンク髪猫耳頭巾を被った幼女アバターの忍者……【ペグ忍者】だ。
きちんとログインしてくれていたようだな。
ちょっと安心した。
「この森……くっ……何故か頭が痛む……」
【ふ、【フランベルジェナイト】さん!?
だ、大丈夫ですか!?】
次に転移してきたのは【フランベルジェナイト】だ。
だが、何だか様子がおかしい。
片手で頭を抑えており、頭痛を訴えている。
おいおい、そんな状態でログインしてきたのかよ……
そこまで無理しなくてもいいのに……
俺が無理させたみたいで若干罪悪感はある。
頭を痛そうにしている【フランベルジェナイト】の隣にいるのは、【フェイ】だ。
何故か唐突に【フランベルジェナイト】の側に現れた不思議なやつだが、結局理由については分かっていないんだよな。
「【ペグ忍者】を選んだのはいい判断なのらね~
この前のチュートリアル武器交換イベントでも【包丁戦士】しゃんに勝った【ペグ忍者】の実力を見せるのらよ!」
あれは完全に瀕死状態の俺をキルしただけだろ!
漁夫の利もいいところじゃないか。
俺はどや顔をしながら俺に寄ってきた【ペグ忍者】をど突きながら言い返した。
「え~、でも【ペグ忍者】の方が順位も上だったのらよ~
完全勝利だったのら!
そこの【フランベルジェナイト】しゃんにも順位は勝ってたのら!
まあ、一位だから誰にも負けてないのらけど!」
こいつ……一位だったことをこれでもかと言うくらいアピールしてくるな。
相当嬉しかったんだろうが……
「【封印の森 ダンサムント】……っ!?
何処かで聞いた覚えが……いや、気のせいか……?」
【ふ、【フランベルジェナイト】さん……?
ほ、本当に大丈夫ですか?】
【ペグ忍者】がどや顔で自慢している隣で【フランベルジェナイト】は頭を抱えながらぶつぶつ呟くのを止めていない。
いつも架空の存在(?)である【フェイ】に語りかけているからか、【ペグ忍者】はあえて触れないようにしているんだろうが、今回は【フェイ】にも話しかけておらず自問自答を繰り返している。
こいつ、本当に大丈夫か……?
この調子だと戦力としては数えられないかもしれない。
俺が流石に心配になって声をかけてみると、なんとか落ち着いたようで返答を返してくれるようになった。
「フェイちゃん、心配をかけてごめんね。
でも、この【封印の森ダンサムント】で俺は何かを掴めそうな気がするんだ。
そう、忘れてしまっている大事な何かを」
【そ、そうなんですか……
わ、私にはよく分かりませんけど、【フランベルジェナイト】さんのためにも頑張りますね!】
【フランベルジェナイト】はいつにも増して電波系発言をしているが、とりあえず調子を少しでも取り戻してくれたのならそれで問題ないだろう。
仲間が発言がおかしかろうが、変態だろうが結局は勝てればいいのだ!
勝てば官軍という言葉は先人の偉大な言葉だからな。
俺のようなプレイヤーキラーでも、勝ち続ければそれについて文句を言うやつはそんなにいない。
次元戦争の軸になっているのは俺だが、それでもイベントを独占していることへの糾弾よりも勝利して包丁次元全体に利益をもたらしているのが多少は認められているらしい。
これも【検証班長】の根回しによる印象操作の賜物だから、【検証班長】には頭が上がらないな。
いや、普通に上げるけど。
さて、勝ってくださいよ……
【Bottom Down-Online Now loading……】