530話 プレイヤーキラーキラー
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
先日は【タウラノ】とジェーライトのコンビにやられてそのままログアウトしたんだったな。
あの小者狐は自虐ネタが多かったから実は大したこと無いんじゃないかと舐めていたところはあったが、思ったよりも厄介な相手で驚いた。
しかも、人型のままだったからきっと第2形態も残しているだろうし、倒す気なら真剣に挑まないとダメだろう。
まあ、特段優先順位が高いわけでもないし、ここに連れてこられるメンバーも限られているからしばらく放置は確定だがな。
さて、今日は気を取り直してプレイヤーキラーとして、毎度お馴染みの草原エリアで殺戮の限りを尽くしていたがどこから騒ぎを聞きつけたのか分からないが、俺の宿敵とも言えるプレイヤーキラーキラーの【短弓射手】が目の前に立ち塞がっている。
【短弓射手】は弓使いのおじさんだ。
装備は軽戦士である俺と類似の軽装に背景に溶け込めるボロマントだ。
プレイヤーと戦うことを念頭に置いた装備なのは俺としても好感度が高い。
「オジサンでも、装備を誉められると嬉しいねぇ!
お嬢ちゃんみたいな若い娘に誉められると機会なんて、滅多にあるものじゃないからなおさらだねぇ……
これは昔ちょっとかじったサバゲーの時のものを参考にさせてもらったんだよ」
へーそうなのか。
そんな会話をしながらも【短弓射手】は弓矢を乱れ撃ちし、俺はそれを切り落としている。
お互いに影で戦っている(描写してないものも含めて……)回数はやけに多いので、大体の攻撃パターンを知っているからこそ攻撃しつつも悠長な会話をする余裕もあるわけだ。
ほれっ、袈裟斬り!
「あらら、お嬢ちゃん怖いねぇ……っ!?
ここでそのパターンの斬撃はオジサンの心臓に悪いカナ……」
心臓に悪いと言いつつも【短弓射手】は紙一重のタイミングを見極めて回避し、そのままバックステップで距離を離していった。
離された距離を詰めるように俺は包丁を手にし斬撃を……
「それは甘いねぇ……
オジサンのペースになってきたねぇ!
スキル発動!【レインボウ】!」
【短弓射手】は回避ししながらも弓に矢をつがえて、弦を引き絞るとそこから七色の発光が発生し七本の矢に分裂しながら俺に向かって飛んできた。
こうなれば、こっちもスキルで対抗するしかないな!
スキル発動!【天元顕現権限】【渡月伝心】!
【スキルチェイン【天元顕現権限】【渡月伝心】】
【追加効果が付与されました】
【スキルクールタイムが増加しました】
俺は【短弓射手】のスキル【レインボウ】に対抗すべく黄金色の天子を背中から生やし、さらには包丁の先から無数の粒子を産み出して【短弓射手】へと向かわせる。
そして、それぞれの攻撃がぶつかり合うと激しい衝撃と共に俺たちは後ろへと吹き飛ばされた。
「あいたたた……
お嬢ちゃんはオジサン相手に容赦ないねぇ……
ゲームなのに、そろそろ腰に響いてくる気がするよ」
吹き飛ばされて腰を打ったのか擦りながら立ち上がる【短弓射手】。
実際に腰の病になることはゲームではないはずだが、現実の癖というものはそう簡単に抜けないものだ。
ないと思っていても反射的にその行動をとってしまうのは仕方ないことだろう。
「レースゲームをすると身体が傾くのと同じ感覚だねぇ……
あの癖もオジサン治らないんだよねぇ……」
それは大衆的によくある現象だからな。
……とかそんな呑気なことを言いつつも、【短弓射手】は身体を動かし弓矢を放つのを止めていない。
無尽蔵に放たれる矢で穿つように狙われていると、その殺気が心地よくすら思えてくる。
これが戦場にいるという快感だな!
いいぜ、やっぱりプレイヤーキラーの天敵であるプレイヤーキラーキラーのオジサンとの戦いはテンションが上がってくるな!
これがパパ活ってやつか……
「人聞きの悪いこと言われると冷や汗が出てくるねぇ……
パパ活か……
……スキル発動!【シューティングスター】!」
【短弓射手】が放ってきたのはスキル【シューティングスター】か。
あれは弓矢を魔法攻撃扱いに変えるという変わり種だ。
ゲームにおける魔法職を兼ねられる後衛物理攻撃アタッカーは優秀だが、ボトムダウンオンラインでそれができるやつは少ないから【短弓射手】と戦うときはこれを特に警戒している。
具体的にいうと、包丁の通りが悪くなる。
ただそれだけのことが厄介なのだ。
「お嬢ちゃん対策にスキルを増やしているからねぇ……
【荒野の自由】様々だねぇ!」
ちっ、あのエセアメリカンガンマンのレイドボスがやっぱり絡んでいたかっ!?
俺は案の定魔法攻撃と化した弓矢を捌ききることができず、魔法矢を身体に受けて死に戻りすることとなった……
【短弓射手】は俺に対して特効のある称号とか付けてるよな、これ……
ダメージ量とか他の奴らと桁が違うし……
ユーはギルティ!
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