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53話 下山情報戦(挿し絵あり)

 長かった針樹林を抜けて、夜営をして一夜過ごした俺とポリンお嬢様だったが、日が登り始めたので行動を再開することにした。


 移動に時間がかかりそうだと思っていたので、持ってきていた材料を使いサンドイッチを移動前に作った。

 オーソドックスなハムと野菜を挟んだものだ、少し量は少ない気がするのだが朝にはちょうどいいかもしれない。


 「あら、あなた様美味しそうなものを食べていらっしゃるのね?

 喋り方からしてがさつなのかと思っておりましたが、意外とマメですわね!」


 そう言いながら俺が食べているサンドイッチを物欲しそうに見ている。

 まあ、いいか。


 ほれ、半分やるよ。

 欲しいんだろ?


 「お優しいのですわね。

 そのお心遣いお受けいたしますわ、ありがとうですの」


 ウキウキしながら俺が食べていたサンドイッチを半分ちぎってくれてやる。

 ……具は一応俺の方に多いように操作しておいた。

 そこ、ケチとか言うなよ?


 もしゃもしゃと食べながら山道を下っていく俺たち。

 食べ歩きはマナー違反だと言うやつもいるにはいるが、オンラインゲームの中くらいその辺は忘れて楽しませてもらうとしよう。


 「ふー、美味しかったですわ。

 中々食材の目利きができますのね、うちのシェフにも引けをとらないですわよ!」


 こいつのロールプレイ集団のなかにシェフの生産プレイヤーがいるんだな。

 俺も料理系生産プレイヤーとして1度会ってみたいものだ。


 ロールプレイといえば1つ聞きたいことがあった、そのゴスロリとかフリフリしてて可愛いよな。

 鎧とか作っている生産プレイヤーが作るとは思えないし、誰が作ってるんだ?


 「これは新緑都市アネイブルにいる検証班の方々がワタクシのアバターを見て作って下さりましたわ。

 曰く、創作意欲が湧くとかなんとか」


 あー、そういえばボマードちゃんのアイドル衣装を作ったりもしてたなあいつら。

 こういうの作るのが好きな層が一定数いるんだろうな、オタク気質が強い連中の集まりだし尚更な。


 「あら、あなた様が頭につけているそれも見た目には似合ってますわよ?

 ……ただ、雰囲気と口調、態度にはアンマッチですわね」


 いらないお世話だ、それは何となく自覚してるからな。

 ちなみにこれは初期の方に出会った【槌鍛治士】が作ってくれたものだ、ありがたく今でもつけているくらいには気に入っている。


 「そうでしたのね、これからも大切にしてあげるといいですわよ。

 たぶん、あなた様に似合うものを試行錯誤で作ったのだと思われますの」


 そこまで言うなら大切にするか。

 まあ、言われなくても雑に扱ってはいないがな。


 そんな他愛のないことを喋りながら山道をさらに下っていく。

 1人で歩いていたら途中で飽きてしまいそうなそれなりにきつめな道も、会話をしながらならそこまで苦にならない。

 ……これは途中で同行人を見つけられたのは本当に運が良かったな、しかも途中の初見殺しギミックについても知ってたし。


 あ、そういえばなんで渓谷エリアについて詳しいんだっけ?


 「それはワタクシの協力者が渓谷エリアにいるからですわ。

 ワタクシ自身は南の岩山エリアに拠点を置いているのですが、やむを得ずこちらに来る機会が多いものでして」


 南の岩山エリアから東の渓谷エリアに来るには山続きのマップを越えてくるか、草原エリアに一度移動して再度それぞれのエリアに向かう2つのルートがあるらしい、【検証班長】がそう言っていた。

 俺は新緑都市アネイブルからなので草原エリア経由だったが、このツインテドリルお嬢様は山続きのマップを越えてきたんだろうか。


 「あら?

 山ルートのことをご存知とは、中々お詳しいのね。

 あのルートは秘密にされているわけではないですが、一般には知られていないルートですのよ?

 ……あのルートは特殊な場所を経由してしまうので、今回ワタクシはあなた様と同じく草原エリアを経由するルートで来ましたわ!」


 へー、詳しくは聞いていなかったが山ルートも面白そうだな。

 今度一緒に行ってみてもいいか?

 

 「再会のお誘い……ということですわね?

 手が空いたときには是非お願い致しますわ!

 しかし、今は立て込んでいてしばらくは行けそうにないですの」


 そうか、それは残念だが気長に待ってるわ。

 そう急ぐような用件でもないし、俺のほうも結構立て込んでるし。


 「あなた様も……

 そういえば西のトッププレイヤーでしたわね。

 今度は何処かのレイドボスでも倒されるご予定でもありまして?

 もしやこの渓谷エリアのレイドボスということですの?」


 いや、違うな。

 ここに来たのは完全に気まぐれだ、息抜きってやつだ。

 俺が今狙っているのは北のレイドボスの棘亀だ。

 あそこのトッププレイヤーの【釣竿剣士】と組んでな。







 お前もそうだろ、【トランポリン守兵】お嬢様。


 「……バレていたのですわね。

 勘が鋭いお方ですこと。

 それで、いつ気がついていらしたの?」


 こいつは【トランポリン守兵】、南のトッププレイヤーと呼ばれているやつだ。

 おそらく【風船飛行士】と組んでここのレイドボスを倒そうとしているのだろう。


 初見の木々を抜けてきた時の足音でまずただものじゃないとは思ってはいた。

 俺はプレイヤーキラーだから、そういう足音に敏感でな?

 足音で戦闘経験とか大体わかるんだよ。

 そして名乗った名前がポリンだ、正直あんまり正体を隠す気がなかっただろお嬢様。


 さらに背中に背負っている盾のようなもの。

 四隅に脚のようなものがついているから地面に置いて使うのが本来の用途なんだろう、ただ守兵って呼ばれているってことは、こいつは本来の用途じゃなくて普段から盾として使ったりしているのだろう。

 針樹林を抜けるときに何度も背中のトランポリンに手を伸ばしたのは、死に戻りを防ごうとしたからだろうな、ただ、俺にまだ正体をばらしたくなかったから使うのを躊躇した……そんなところだろうか。


 「お見事ですわ!

 あわよくば他のトッププレイヤーであるあなた様の情報をもらおうと思っておりましたのに」


 言葉の端々から俺のことを探るような言動だったので、そんなことだろうと思ってたがな。

 俺が過剰に優しく接したのも、こいつに隙まみれだと思わせるためだったがな。


 「既に情報戦は始まっておりましたのね。

 でもあなた様と敵対する気はなくてよ?

 それどころか、いつか協力するのも悪くないと思っておりますわ!」


 そう、それならこっちとしても特に問題はない。

 ただ、今度山ルートに行く約束は忘れないでくれよな。


 「……あなた様は人たらしなのですわね?

 ここでそのセリフはズルイですの!」


 人聞きが悪いな。

 お嬢様の正体を看破したところで山の終わりが見えてきた。

 

 ようやく渓谷エリアか、テンション上がってくるな!












 ……やはり人たらしでしたか。


 【Bottom Down-Online Now loading……】

【トランポリン守兵】お嬢様描きました!

金髪ツインテドリルでゴスロリという高カロリー作画でした


挿絵(By みてみん)


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