529話 呪術開戦
【Raid Battle!】
【荒れ狂う魚尾砲】
【レイドバトルを開始します】
【タウラノ】が呪符から呼び出したのは、俺と縁深いレイドボス……【ジェーライト】だった。
ただ、俺の尻尾と同じサイズのものなので強大な力を持っているわけではないはずなのだが、それでも極太レーザーを防がれてしまった。
「それは俺様が基になった尻尾とスキルだからナァ!
俺様自身に高い耐性があってもおかしい話じゃないだロォ?」
ちっ、そういうことか!
同じ深淵種族である【アルベー】はデバフを使うからか、デバフ耐性を持っていた。
つまり、ジェーライトはレーザー耐性を持っていると言ってもいいのだろう。
俺はそんなことを考えながらも、出現したジェーライトと包丁で鍔迫り合いを繰り広げている。
激しい重擊を尻尾のような身体を連打して俺を畳み掛けてくるが、相手はジェーライトの力の味噌っ滓のようなものだ。
プレイヤーである俺であっても十分に渡り合える。
「そう思っておるでおじゃろう!
甘いでおじゃるよ~」
「ヨォ俺様の共犯者!
イャ~、お前の力を見せてやるんダァ!」
「いくでおじゃる!
それっ、【六根清浄急急如律令】!」
狐耳ロリ陰陽師はジェーライトに向けて呪符を投げつけた。
そして、その呪符がジェーライトの身体に巻き付くようにして定着するのと同時に急に攻撃が鋭くなってきた。
こりゃたまらんぞ!?
「真面目にレイドバトルする気はあるのでおじゃるか?
今発動した呪符に込められたスキルは、五感と少しの身体能力のバフでおじゃる!
他にも効果はあるのじゃが、今は関係ないでおじゃる」
「そういうことだナァ!
こんな末端の身体でもステータスが上がれば使い勝手もいいゾォ!」
ちっ、【タウラノ】からバフをもらったのか……
前衛のジェーライトが牽制しつつ俺を攻撃、後衛の【タウラノ】がその隙にジェーライトのステータスを上げていくってわけか。
だが、これはどうか?
スキル発動!【フィレオ】!
俺は飛翔する斬撃を空中に描き、そのまま【タウラノ】へと飛ばしていく。
デメリットとして俺の左腕が吹き飛んでいったが、手数については俺が生やしている尻尾で補えるので問題なしだ!
このまま直撃すれば嬉しいが……
「それはやらせないゾォッ!」
使役者である【タウラノ】の危険を察知してジェーライトが自ら斬撃の前に現れて、身を呈して【タウラノ】の窮地を救った形となった。
だが、ジェーライトの身体は真っ二つだ。
これはこれでいいのでは?
そう俺は楽観視していたが、そんな甘い考えはすぐに打ち砕かれた。
「おおっ、中々物騒なものを使ってきたでおじゃるな?
じゃが、それしきで勝てると思われるのは心外でおじゃるよ!
ほれっ、【休息万命急急如律令】!」
【タウラノ】は新たな呪符をジェーライトの方へ放ると、その呪符は吸い込まれるようにジェーライトに巻き付いていく。
するとどうだろうか、さっきまで真っ二つだったジェーライトの身体がみるみると繋がっていき、次の瞬間には完全に回復していた。
おいおい、これはズル過ぎないか?
そんな回復をされたら突破できないじゃないか……(困惑)
俺は理不尽な戦況になりつつあるのに毒づいたが、よく考えたらレイドボス戦なんていつもそんなのばっかりだったのでちょっとだけ溜飲が下がった。
身体が回復したジェーライトは再度俺の前に立ち塞がり、その身体を鞭のように使い強打を繰り返してくる。
ジェーライト=ミューンだった時も、巧みに使った攻撃が一番厄介だったが、改めてその伸縮性と弾力性を味わってみると懐かしさすら覚えてくる。
「さて、余興もその辺にしてそろそろ終わらせるでおじゃるよ!
ひれ伏すのでおじゃる、【丑刻参釘】!」
「承知したゼェ!」
【タウラノ】は手に藁人形と釘を出現させた。
そして、藁人形に釘を突き刺している。
すると、俺に強烈な負荷がかかり、動きが目に見えて鈍くなっていった。
この感覚は【アルベー=クシーリア】戦の時以来だな。
あの時はこのデバフを有効活用して倒したのだが、今このデバフを反転させるには時間が足りないだろうな……
「その通りだゾォ!
これで葬り去ってやるゼェ!
俺様の主砲で沈メェ!【魚尾砲撃】!」
デバフによって身体から機敏さが失われた俺に対して、追い討ちをかけるようにジェーライトは極太レーザーを俺に向けて放ってきた。
瞬時に身体を動かす術のない俺はそのまま無抵抗で極太レーザーを全身で受け止めることとなったのだ……
流石に単身でレイドボスを討伐っていうのは虫が良すぎたな……
このようにして聖獣と手を取り合うとはのぅ……
歪な形ではあるがな。
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