524話 四面楚歌
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は渓谷エリアを【骨笛ネクロマンサー】と回るぞ。
俺は新しく仲間になったやつにははじめは構ってやるからな。
【バットシーフ】後輩にも何度か言われたが、「先輩って案外お節介ッスよね……」とのことだ。
「ふひひっ、【包丁戦士】さん、ここであてぃしたちは何を何をするんですかぁぁ……」
まあ、草刈りでもしながら話をしよう。
暇潰しにはちょうどいいだろう。
「わっちのクエストを目の前で暇潰し扱いするとはたいした度胸じゃな……
お主はどういう神経をしておるのじゃ?」
「ふひひっ、あてぃしも気になりますぅぅ……」
こらそこ、俺を差し置いて仲良くしようとするな。
今日はせっかく俺と【骨笛ネクロマンサー】が仲良くするための日なのに、なんかギルドマスターと仲良くなられると釈然としない。
それにしても、引きこもりと言っていたわりには普通に外に出ても問題ないんだな。
ギルドマスターとの会話も問題なく出来ているから、不気味な喋り方を笑いかたを除けばコミュ力も特に心配なさそうだ。
基本的に外での活動に抵抗のあるやつが多いはずなんだが。
俺は疑問に思っていたことを聞いてみた。
逆になんで引きこもっていたのかと。
「ふひひっ、それは骨細工の道具を作るためですぅぅ……
家具や装飾品、防具を骨で作るのが趣味なのでぇぇ……
流石にリアルでは周りに止められて出来なかったので、せめてゲームの中ではやってみたかったんですぅぅ……」
そりゃ俺でも止めるわそんなん……
家に帰ったら知らない間に骨の家具が増え続けたら不気味としか言いようがない。
「わっちは別にいいと思うのじゃが……
ほれ、わっちは食べた家畜の骨をもて余しておったから【骨笛ネクロマンサー】にあげるのじゃ!
……ちなみにこれがクエストの報酬なのじゃ!」
そう言って俺と【骨笛ネクロマンサー】のアイテム獲得ログに様々な種類の骨を獲得した通知が届いていた。
プレイヤーに人権はないからアイテムボックスみたいな自由に出し入れできる便利な収納機能は今のところ実装されていないが、クエストやイベントで手に入れたものだけはウインドウ画面の受け取りボタンを押さない限りはストックしたままで出来るという小技は存在する。
俺がずっと受け取っていなかった【深度の種】を【深淵奈落ー中層 ルルナティック】で取り出したのはその小技だ。
今回のクエスト報酬の骨たちもそんなウインドウ画面にストックされたが、俺が進んで取り出す機会はないだろう。
後で【骨笛ネクロマンサー】にでもあげるか……
別にクエスト報酬が欲しくてこのクエストを受けた訳じゃないから、俺としても損失は特にないと言ってもいい。
むしろ、ギルドポイントがたまったし得をしたのかもな。
「ふひひっ、名前からして楽しめそうな骨がいっぱいありますねぇぇ……
【包丁戦士】さんも今度あてぃしの拠点で骨を満喫しませんかぁぁ……?」
こいつ、根暗女だが自分から他人を誘うレベルには人との関わりを持つ気概があるようだな。
骨を満喫っていうのは正直不気味だし、気は進まないが新しいメンバーの趣味を間近で確認するのはそう悪いはなしじゃないし、今度一回くらいは行ってやろう。
「ふひひっ、そんなこと言ってくれたのは【包丁戦士】さんだけですぅぅ……
流石はトッププレイヤーキラーですねぇぇ……
死によく触れているだけあって、他の方々よりも嫌悪感が少ないんですかぁぁ……?」
……言われてみるとそうかもしれないな。
他のやつらがどうなのかまでは俺も知らないが、死に慣れているから死体関係にはそこまで嫌悪感がない。
ただ、俺が好きなのは死体じゃなくてプレイヤーを殺戮している瞬間の快楽だからこいつとはベクトルが違う。
一括りで同類にされると困るぞ!
「わっちからすれば底辺種族どもの考えの違いなど分からぬのじゃ。
五十歩百歩、どんぐりの背比べみたいなものじゃ!」
「ふひひっ、そうらしいですよぉぉ……」
そりゃ強大な力を持っていたレイドボスからすればそうだろうよ。
根本的に生まれた種族、育ちが違うんだからな。
俺がよく【菜刀天子】にドン退かれるのもそのせいだろう。
「ふひひっ、それはきっと【包丁戦士】さんがおかしいだけだと思いますよぉぉ……
掲示板でもよく噂になっていますからぁぁ…」
「わっちも違うと思うのじゃ!
ギルドに来る他のプレイヤーたちがしないようなことを【包丁戦士】は平然とやっているから、考えは分からぬのじゃが行動がおかしいのは分かるのじゃ!」
どうやらここには俺の味方になってくれるようなやつはいないようだ。
誰とどう比較しても劣化天子はおかしいです。
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