520話 骨笛ネクロマンサー
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は【バットシーフ】後輩と新緑都市アネイブルのほのぼの市場を見て回る約束をしていたので回るぞ!
というわけでやってきましたほのぼの市場。
そこで待機していると怪盗のような服装をした野球男児が走って向かってきた。
「先輩、待ったッスか?
すみません、ちょっと遅れちゃったッス……」
約束していた時間から十分くらい遅れてやってきたからな。
ちなみに俺は逆に十分前からスタンバイしていたから、二十分待っていたことになる。
暇潰しに公式サイトとか見てたからそんなに苦ではなかったが、それでも待たされてはいた。
だが、俺はやさしーい先輩なので「俺も今来たところだ」と伝えておいた。
「そのセリフ……なんかデートの待ち合わせみたいで照れるッスね……」
こいつは【検証班長】に似てシャイボーイだから、目を逸らしながらもじもじとしてそんなことを言ってきた。
だが、わざわざ口にだすのはヤメロ!
俺までなんか照れるだろ……
そんなことを言い合いながらほのぼの市場を歩いていると、先日見た骨の装束を来た緑髪の根暗そうな女が俺の方に向かって息を切らせながら走ってきていた。
なんだなんだ、リベンジマッチか?
そういうことなら望むところだぞ?
「えぇ……先輩またプレイヤーキラーやってて恨まれたッスか……
もはや慣れてきて日常みたいなところがあるッスけど、普通おかしいはずなんッスけど……」
俺はプレイヤーキラーだからな、逆恨みされて闇討ちされたり嫌がらせを受けることはよくある。
よくありすぎるから描写してないだけで、本当によくあるんだ。
そんなことを思っていた俺と【バットシーフ】後輩だったが、緑髪の根暗女は困った顔をしながら口を開いて声をかけてきた。
「ふひひっ、実は【包丁戦士】さんにお願いがあるんですぅぅ……」
「先輩にお願い事するなんて変わった人ッスね……」
なんだなんだ、俺にお願いだと?
プレイヤーキラーの俺と戦ったばかりなのにキルしてきた相手である俺に頼むことって何かあるのか?
「ふひひっ、あてぃしを【包丁戦士】さんのクラン【コラテラルダメージ】に入れて欲しいんですぅぅ……」
「えぇっ!?
正気ッスか!?
悪いこと言わないからやめた方がいいッスよ!
他のプレイヤーからの評判最悪のクランッスから!」
おい、【バットシーフ】後輩!
仮にも自分が入っているクランにそんな言いがかりをつけるのは止めろよ!
……まあ、事実なんだけど。
それにしても【コラテラルダメージ】所属希望プレイヤーが現れるとはな……
希望者が現れるのは嬉しいが、動機を聞いてみないと入れていいものなのか判断しかねるし、一度聞いてみるか。
「ふひひっ、【包丁戦士】さんが目的なんですぅぅ……」
俺!?
なんでまた……
まさかボマードちゃんみたいに性的な意味で見られてるとか。
そんなことを危惧していたが……
「ふひひっ、トッププレイヤーキラーとしての【包丁戦士】さんに価値があるんですぅぅ……
あてぃしのability【粉骨再身】は死に戻り瞬間のプレイヤーが出す光の粒子を骨粒として集めることができるんですぅぅ……
abilityとしてはそれだけなんですけど、ふひひっ、骨粒は有用なのでできるだけ集めたいんですぅぅ……
だから、プレイヤーに死を招く存在の【包丁戦士】さんの近くにいるのが効率がいいと思ってぇぇ……」
「abilityが何かをストックするタイプなのは俺っちに似てるッスね。
でも骨粒なんてストックして何をするッスか?
とても有用そうには思えないッスけど……」
普通ならそう思うだろう。
だが、先日の戦闘を見たあとの俺はその使い方をなんとなく把握している。
【想起現像】の発動コストにするんだろ?
あれは本来【検証班】によると砂漠エリアにある砂をコストとして使っているからデメリット無しで使えているようなものらしい。
つまり、砂を召喚しているようなものだ。
だが、そのコストに砂ではなく別のものを使用するという発想は今までなかった。
いや、試したやつはいたんだろうが、コストの代替品として扱うことすら出来なかったというのが正しいだろう。
しかし、この【骨笛ネクロマンサー】は自分のabilityで出した骨粒を利用した。
そして、そこから産み出されたのは……
「ふひひっ、【想起現像】のコストに骨粒を使うとその骨粒に含まれているプレイヤーの肉体を擬似的に復元できるんですよぉぉ……
ただ、操作はあてぃしがマニュアル操作するか、弱めのAIがオート操作するかしかないですけどぉぉ……」
「うわっ、なんて不気味な使い方をしてるッスか!?
本当にネクロマンサーみたいなことしてるッスね……」
【バットシーフ】後輩がその能力に引いているが、俺はこいつの能力は使い道があると感じた。
ある程度骨粒を貯めないといけないが、擬似的な肉壁を作れるのは悪くないからな。
ただの壁じゃなくて自動で攻撃もしてくれるのだからお得だ。
「本人も入りたいって言ってるッスから、あとは先輩の許可次第ッスけどどうするッスか?」
ちなみに俺目当てらしいが、【コラテラルダメージ】は基本的にソロ行動が多いクランだ。
クランに所属したからと言っても俺に同行できるとは限らないぞ?
それでもいいのか?
「ふひひっ、いいですよぉぉ……
元々ソロで活動してましたからぁぁ……」
そういうことなら入れてもいいか。
【コラテラルダメージ】はソロ活動してたメンバーを集めたクランだから、そんなに協調性がない。
ハリネズミメンバーは別枠だけどな。
だから、ソロで活動していた実績のあるプレイヤーにしか加入をおすすめできないんだが、この【骨笛ネクロマンサー】は今もソロだから変わらないだろう。
それなら許可しようか。
ようこそ、【コラテラルダメージ】へ!
「ふひひっ、ありがとうございますぅぅ……」
【パーティーアナウンス】
【【骨笛ネクロマンサー】がクラン【コラテラルダメージ】に加入しました】
俺たちは歓迎も兼ねて、その辺の喫茶店で紅茶とケーキを摘まみながら時間を過ごしたのだった……
また曲者をクランに迎え入れましたね……
似た者同士は惹かれ合うということでしょうか……
【Bottom Down-Online Now loading……】